ex 遭遇
アンノウンの出現地点であるビジネスホテル周辺は警察の協力の元迅速な避難が取り行われ、入れ替わる形で現場には北陸第一支部のウィザードが足を踏み入れる。
ホテルを取り囲むように集められたウィザードが配備され、そしてホテル内部には二名の精鋭が突入した。
実働部隊隊長の篠原圭一郎、準一級の風間柚子。
現状動かせない杉浦鉄平を除けば通常戦力の2トップ。
(誰かは知らないが無事だと良いが……)
ホテル内部の階段を小走りで移動しながら篠原は心中でそう呟く。
現場に到着した時点で今回の一件に関しての情報が更新された。
管理局内で既に把握していた通り、アンノウンは自らの反応を消失させている。
故にアンノウンが外に出た目撃情報などは上がってはいないが、本当にホテル内部に留まっているかどうかが不明なままだった。
更新されたのはその情報。
「中に居たっぽい誰かが戦った結果、アンノウンの反応が消滅したって感じだったら良いんすけどね」
「ああ。そうであって欲しいな……あらゆる意味で」
少し後ろを走っている柚子がアンノウンの反応の代わりに、微かに魔術が使用された反応を掴み取った。
戦闘の現場を捜索中、などではなくホテルの外に居る段階でだ。
……そして現在もその反応は残っている。
否、残っているというよりは、現在進行形で放っている。
(……本当に規格外だなこの姉妹は)
現時点でも篠原にはそんな反応は検知できない。
おそらく世界中を探してもそんな芸当ができるウィザードは数える程しかいないだろう。
少なくとも篠原は風間姉妹位しか知らない。
……とにかく、そんな優秀な人材のおかげで事が進めやすくなった。
ありがたい事に現状起きている事が有る程度想定できる。
現状考えられる可能性は三つ。
一つはジェノサイドボックスが出現した際の神崎のように、アンノウンの出現ポイントに偶然魔術を使える誰かが居て迎撃し破壊。そして何らかの理由で現在も魔術を使用中という形。
二つ目は同じく偶然誰かがそこに居た上で、出現したアンノウンが直接的な戦闘を行わないタイプである事に加え、反応を消せるタイプだったが故に現在進行形で対処中という形。
そして三つめは反応を消せるアンノウンに対し現在進行形で戦闘中という線だ。
当然自分が想定できない事が起きているという第四の可能性は否定できないが、それでも何も分からず闇雲に突入するのとは訳が違う。
そしてその答え合わせをする時が来た。
「10階! この階にまだ反応……なんかこっちにゆっくり動いて来てるっす!」
「警戒を怠るなよ! 何があるか分からんぞ!」
「分かってるっすよ!」
そう、何が来るか分からない。
激しく争っている音が聞こえてこない事から、戦闘中という事は無さそうだが。
では一つ目か二つめか。あるいは……
「…………赤坂?」
通路の曲がり角から現れたのは……東京本部から監査に来ている一級ウィザードの赤坂伊月だった。
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