21 侵攻の目的
「「「……ッ!?」」」
突然起き上がったディルバインに対し、警戒し三人共バックステップを踏み距離を取る。
それに対し、ディルバインは立ち上がる事無くその場で胡坐をかいて言う。
「そう警戒するな、っていう方が無理があるか。なら警戒しながら聞いてもらえればいい」
そう言ってディルバインはガントレットを外しながら言う。
「コイツは強力だが少々ピーキーでね。強制的に変身を解かれると半日は再度変身できなくなるんだ。で、僕自身の武器はこれだけ。詰みだね全く。帰還もできない」
そう言ってガントレットを自身の隣に置いてから、両手を前に突き出す。
「何してんだ?」
「いやこの状況で拘束しないのはおかしいだろう。今キミ達はそういう話をしていたんじゃないのかい?」
「い、いやまあしてたっすけど……」
言いながら柚子が再びディルバインの元へ歩み寄り、先程言っていた通り結界で手錠を作る。
「これで良しっす」
「成程、精巧だ。戦っている時も思ったが、若いのに優秀じゃないか。おそらく未成年であるキミのような子供が戦っているという一点に限ればあまり関心はしないが……これはこの世界の当たり前なのかい?」
「いや、私が特別っす。あんまりいないっすよ」
「そうか……それは良かった」
安堵するようにそう言うディルバイン。
そんなディルバインに鉄平は問いかける。
「アンタさっきからほんと、こっちの世界攻めてきてる侵略者らしからぬ反応するよな。なんでこっちの心配してるんだよ」
今のもそうだが、先程の赤坂への問いに至っては交戦対象のウィザードの安否を聞いて誰も死んでいない事に安堵していたように思えた。
正直に言って、色々と滅茶苦茶である。
そしてその事に対しディルバインは答える。
「そりゃ子供が戦わないに越した事は無いし、キミ達のお仲間に関しても生きているに越した事は無いだろう。こちらの作戦が失敗した以上、その上に転がる死体は敵味方問わず少ない方が良いに決まってる。誰の血も流れていないならそれ以上の事は無い」
「……その辺の思考がもうこっちの世界に攻めてきてる人としてはバグりまくってるんすよね」
柚子はため息を吐いてから問いかける。
「つーか、一般人傷付けたら駄目みたいな事言ってたっすけど……じゃあ一体何しに来てんすか。そしてこうして無事表に出現できるって事は、そっちの世界からこっちに何かを飛ばすのは初めてじゃないっすよね。これまで一体何をやって来たんすか?」
「……一つ先に断っておくよ」
ディルバインは落ち着いた声音で諭すように言う。
「知っての通り僕はキミ達の世界にこうして侵攻してきた敵、加害者だ。これまでの言葉もこれからの言葉も、そういう人間が口にしている言葉に過ぎない。今回にせよ、今後別にこういう機会があった時にせよ、あまり鵜呑みにはしない方が良い。全ての言葉をまずは疑え」
本当に年長者が若者に諭すようにそう言ったディルバインは、静かに答える。
「今までも今回も、僕達は調べ事をしていたんだ。悪く言えば技術を盗みに来たわけだね」
「技術を……盗む?」
赤坂の問いにディルバインは答える。
「キミ達の世界、地球は他の世界と親交が無い言わば鎖国状態の世界だ。そして良い意味でそれを可能にして来た技術がキミ達の世界は特別秀でている。その秀でた技術の結晶こそが、キミ達の世界ではダンジョンと呼ばれている立派な迎撃装置。僕達が欲しているのは国土でも無ければ資源でもない……ダンジョンという技術そのものだよ」
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