閉鎖街;残存記録
早山カコ
日記帳 - 前文
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意味などないと思う。
自分の意志で日記をつけようとするのは初めてだ。
どこまで続くものか分からないが、また、続けても意味はないだろうが、続くところまではやってみようと思う。
日記という手段を思い立ったのは、近頃、日付のことを忘れそうになるからだ。
一日一日に変化がなく、昨日と三日前と五日前の区別を明確につけることが難しい。そういった感覚に軽い恐れを感じる。僕は退屈しているのだろうか。だから日々に動きがあったことを忘れないために、記録をつけることにした。単純だが、有効な手段であるだろうと期待している。
後年の自分がこれを見返すこともあるのだろうか。
まだ一日分も書いていないのにそんなことを気にするのは、野暮というものか。しかし、自分の性格を予期して、この前文の最後にこう書き添えておこう。
後年の自分へ。
この記録の存在自体があなたを不利にすると感じた場合は、迷わずこの日記帳を廃棄して欲しい。あなたがこれを読み返している「今」がいつであるのかを知る術はないが、「今」にとってこれが邪魔な物であれば、言うまでもなく入念な焼却処分を頼む。
記録の消却をためらう理由など存在しない。
僕もあなたも知っている通り。意味はどこにもないのだから。
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