特殊科編
第21話
平日のお昼ごろ、俺は定食屋で、
「なんだか、仕事してる感じじゃないですね」
そう言って、俺はカツを箸でつかむ。前に座っている米澤さんは、ちらっとこちらに目線を向けてから、また刺身に目線を下ろす。
「まあ、私たちが存在してるだけで、日本のためになってますから」
「そりゃそうですけど……」
そう答えて、俺は、訓練期間の記憶を振り返る。
*
「実のところ、どうして、人は、神と契約するか分かりますか?」
訓練施設の一室でホワイボードの前に立っている米澤さんが聞いてくる。
「邪神を狩るためじゃないんですか?」
俺が答えると、にっこりと微笑んでから、米澤さんは続きをしゃべった。
「まあ、確かにそうですが、それは副次的なものとも言えます。一番の理由は、何の神であるかは、被らないということです」
「えっと、どういことです?」
「ちょっと、分かりにくかったですかね。例えば、火を司る神を考えた時に、火の神は2柱同時に存在できません。必ず、この世界には、1柱しか、火の神は存在しえないということです」
「それは、分かるんですけど、それがどうしたのかという話で」
腕組みをする俺を見て、ふむふむと米澤さんはうなずく。
「ああ、なるほど。確かにそれが重要ですね。要するに、さっきの例えの続きになりますが、人が火の神と契約したなら、邪神として火の神が現れることはないということです。
それはすなわち、人が多くの神と契約すればするほど、邪神として現れる神が少なくなるということですし、それに付随して、もう一つ、いいことがあります。さて、それは何でしょうか?」
米澤さんは、学校の教師とかと違って、マンツーマンということもあるだろうけれど、かなり説明中に問題を出してくる。机の上の開いている教科書をちらりとみて俺は答えた。
「凶悪なものを司る邪神の出現を阻むことができる」
「その通りです。死の神なんかが、邪神として顕現したら困りますからね。今では、ちゃんと人と契約した神としてこの世にいますから、安心なわけです」
そう言って、時計を見てから、米澤さんは手に持っていた本を閉じる。
「まあ、そういう訳で、私や
そう締めくくって、その日の講義は終わり、米澤さんは部屋から出ていった。
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