第12話 移動
――――銀次の家を後にし、僕と宮前は商店街のアーケードの来た道を戻り、繁華街のある隣の町に足を運んだ。
すでに空は黒くなっており、時刻は七時に近かったが僕と宮前は目的の場所まで歩いた。
これから会う、人物には先に連絡はしておいたがどう反応するのだろうと僕は不安にかられていた。
「で、今度、協力してくれる人はどんな人なの?」
「うーん。なんて説明すればいいんだろう? とにかく会ってみればわかるよ」
「……?」
しかも、宮前もいるから困っていた。いい格好見せようとか、それに近い感じ。
まぁ、この後、本当に困るんだけど。
それから隣町の繁華街の中を歩く。仕事終わりの会社員や買い物を終えた主婦などとすれ違う。
意外と田舎に近い町にも関わらず人が多いんだなと僕はしみじみ考えた。
そのとき天野は僕に話しかけてきた。
「よう、相棒」
「どうした?」
「今、何考えてる?」
「別に何も考えてはいないよ。それよりどうした天野?」
「いや、これからアイツに会うと考えてたら落ち着かねぇんだ」
「まぁ、確かにな。でも珍しいなオマエに余裕が無いなんて」
「わらうんじゃねよ!」
「笑ってないよ。僕も不安だ」
「そうか、オマエも不安か…」
「ああ……」
僕と天野は不安そうな表情をしていたに違いないのだが、宮前はそれを見てどんな顔をしていたのかわからない。
飲食店が立ち並ぶ通りを歩き、いかがわしいというか女の子と歩いているときに見てしまうとものすごく気が引けるお店が軒を連ねる通りに出た。
そこは駅前とは違い、整備はされているもののどこか寂れていて、派手派手しい色のネオンが街灯よりも輝く。そして路地を一歩曲がると街灯の光が届かない闇が大きく口を開けて待っていた。
そして各あるお店の前には黒いスーツを来た人が立っていて、通り過ぎる人に声をかけていた。学生服でいる僕らが場違いと思えるほどの別世界。
あえて宮前が軒を連ねる店に反応しないように僕は早歩きをしていた。ただこのときは彼女に何も質問されたくは無かった。
しかし、年頃の女の子ならまだしも、まして探偵のマネをしている宮前だ。
そんな彼女がこの通りにあるお店が何であるか、また看板の店名が何を意味しているか、どんなものであるかわかっているはずだ。
ただこんなお店が立ち並ぶ通りを歩いているからまた誤解されそうだなと考えつつ、足を速め、顔を上げた。
そのとき学生服の内側の胸ポケットに入っている携帯電話が振動した。
携帯を取り出すと、赤い色のランプが点滅していた。
赤い色のランプはメールを受信したときに点滅するように設定してある。
携帯を開き誰からのメールなのか確認する。
送信者の名前は高坂船穂と書いてあった。
メールを開き、内容を確認する。
『店の裏で待っている』と書かれていた。
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