第5話 確認

「…………?」

僕はゆっくり後ろを振り返りあの男が追いかけてきていないかを確認する。

「追いかけてこない?」

「そうみたいだな。あの変な奴は諦めたんじゃないのか?」

「わかんないよ」

僕は天野の話を流しつつ、宮前に声をかける。

「宮前、大丈夫か?」

掴んでいた腕を放し、彼女の顔を見る。宮前はうつむいていて髪で顔が見えない。

「宮前?」

「あ……」

宮前は小さくつぶやくと肩を震わせていた。

僕はこのとき彼女はさっきのことが怖いのだろうと思った。

しかし、その予想は外れていた。

「どうした?」

「あ、あんたはなんてことしてんのよ!」

突然、顔を上げ、目をこれでもかといわんばかりに開き、僕の首もとを掴んだ。

「うげっ!」

首元を掴み僕をグッイっと自分の顔に引き寄せた。

彼女の息が僕の顔にかかるほどの距離で普通、こんなんだったらどきどきしてしまう。

宮前此方は外見が綺麗な人物、女の子といえばいいのだろうか、今時の女の子みたいに可愛いのか綺麗なのか区別がつかないほどで、クラスでは男子から人気だ。

けど普段の僕だったら女性に対して初なのだがこのときは気恥ずかしさより怖さと首を絞められた息苦しさでそれど頃ではなかった。

こういうときにつくづく思うのは人間って本当の窮地には目の前のことより他のことを考えてしまうってこと。

「アンタ、こんなところまで私を引っ張ってきて何がしたいの!」

「ぐ、ぐるじぃ…!」

僕は彼女にマウントで閉め技を食らってタップする格闘技選手のように必死でタップする。

「このままにさせてたら、オマエ死ぬな」

アハハハと僕の中に住んでいる奴はどうやら他人事と思って笑う。

僕は必死で、タップする。

「苦しいって言ってんだよ! 何をするんだ!」

僕は彼女を引き剥がし、ゼェゼェと肩を上下させ、呼吸を整える。

「それはこっちの台詞よ! アンタはあまり接点のない女の子をストーカーしてそれに飽き足らず連れまわそうなんて!」

「ご、誤解だ! 確かに君の後を追っかけたのは事実だけど連れまわそうなんてやましいことは考えてない!」

「じゃあ、なんでさっき私の質問に答えなかったの?」

「そ、それは…」

「答えられないの?」

「わかった、答えるよ。答えないといけないんだろ」

僕は、宮前にここまでの経緯を正直に、いっぺんの付け加えもなく正直に話した。

いや、本当。

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