PROLOGUE
裏切り
「あー…あー…。こちらヴァレク。迎撃対象を捕捉。これより接近する」
ヴァレクは言い、スカイマシンを加速させた。
―――
罪印所有者連合軍「SoD」。この世界の半分以上の都市を制圧しており、彼らに関係したものは例外なく、洗脳されたように動くという。
今や世界の四分の三を制圧した「SoD」を根本から崩すために作られたのが、ロクス達が所属する反乱軍「B3」である。
遊撃部隊長ロクスは任務を達成したため、仕事仲間のマニュレイ、ヴァレクとともに帰還しようとしていた。しかし道中で指揮官からの司令が入ったため、急遽ルートを変更し、レーダーに示された敵のスカイマシンを追っていた。
「つってもさっきの司令はあいつらしくなかったな…」
ロクスが疑うのも当然である。彼らの指揮官イレイズは、朝令暮改の命令を下したりはせず、帰還せよと言えば、後処理なども考えず、部下は拠点へ一直線にスカイマシンを走らせることができる。しかし、車内の時計を確認しても、帰還命令を出してから追跡命令を出すまで僅か9分。ロクスはそんなことを彼が行うとは到底思えなかったのだ。
一方ヴァレクは、宙に浮く操作パネルを使ってスカイマシンを運転しつつ、カメラとレーダーを見ながら敵のスカイマシンを追跡していた。
「そろそろブーストかけるか」
ヴァレクはそう呟き、操作パネルのボタンの一つを押した。すると瞬く間にスカイマシンが加速し、敵との距離は十数メートルにまで縮んだ。
「じゃ、行くぜ」
ロクスがそう放ち、転送機に乗って外へ行くと、敵も転送を行ったのか、車上に銃を構えた者が現れた。ロクスは発砲されたが、自身の武器である巨大な槍で全て払い除け、スカイマシンから飛び降りた。同時に刻印を起動し、真下から敵のスカイマシンに刻みつけた。
その刻印――《浮遊の刻印》の力により、銃を構えた者を振り落としつつ敵のスカイマシンを自分の足元へ運び、飛び乗った。
「マニュレイ、ハックを頼む」
[ああ。任せろ]
B3支給の高性能トランシーバーにより、ノイズのない完璧な会話が可能となっている彼らの間には、「聞こえるか」などの確認の言葉も不要だった。
マニュレイのハッキングが終わったのか、車外の転送機が青く光りだしたのを確認すると、ロクスは即座にマニュレイとヴァレクを呼び突撃した。
勢いよく入ったはいいものの、中はもぬけの殻であり、かなりの力量を持つロクスたちですら、生物の気配を感じることはできなかった。
「出てこい!」
ロクスが叫ぶが誰も出てこず、人質などもいないようなので、ロクスは爆弾を設置。
「あいつがやることじゃねえし、ここは空っぽ。なんのために俺らはこんなとこに来たんだよ」
ぼやきながらロクスが踵を返し、一歩歩いたその瞬間、後ろで「ぐあ!」という声が聞こえた。
振り向くとそこには、今までのすべてを否定するような冷たい表情をし、ヴァレクに刺したその剣を握って1ミリたりとも動かないマニュレイと、驚きに怒りが混じった目でマニュレイを見るヴァレクがそこにはいた。
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