第13話 A{0,1} ウサはツタエと落ち合う

——TIMES_A{0,1}——

 2024年9月20日(金)

――三人称視点



 ウサが魔法少女になってから、1年半後

 

 ウサはツタエと落ち合った……。

 

——  ウサ一年生、歳。

 

 ウサはその日の放課後に図書室を訪れた。

 ここは中高一貫の女子学校、津田中学校・高等学校中高一貫の図書室である。

 高校生になり、寮で生活するようになってからは読書の頻度も増え、図書室に来る機会も増えていた。

 

 ウサが視界の悪い本棚と本棚の間の通路を歩いていた。

 そこに、本を本棚から取り出し、振り返って歩き出そうとしたツタエがいた。

 ツタエは、ウサにぶつかってしまった。

 

「きゃっ、すいませんですわ。あっ、ウサ先輩。あ、って、あれ? 大丈夫ですの? ウサ先輩? ウサ先輩?」


 ツタエにぶつかられたウサは意識を失い倒れてしまう。

 

「え、どうしてですの……」


 大して強くぶつかっても無いのに、身体能力が高いはずのウサが意識を失ってしまったことにツタエは驚いた。

 ツタエは驚きはしたものの、緊急事態だと思い、周りの人を呼ぶ。

 ツタエは、変身前の能力が、変身中の能力の1/25ほどであり、ウサを一人でどうにかできる状況ではない。

 

 周りの女生徒たちにも、えっ、なになに、キャー大変と、多少の動揺も見られたが、機転を利かした者がおり解決へと導く。

 窓際まどぎわに取替用の新品のカーテンがたまたま置いてあったため、担架を作りウサを保健室へと連れて行く。

 

 大勢で保健室へとウサを運び、ベッドに寝かせる。

 保健室の先生が救急車を呼ぼうと電話を手にした時、ウサは目覚めた。

 

 ウサはよくあることと説明し、皆にお礼を言う。

 そして、ベッドで少し休憩をとることとした。

 ウサは目をつむり、眠りにつく…………。


 ツタエは皆が去っていく中、一人残ってウサの様子を見ることにした。

 

 ツタエは気になったウサの顔を覗き込む。

 (透き通るようなはだですわね……)

 

 ツタエは手をウサの額に当てる。

 (熱があるかどうかを確認する風を装い、感触を……、ちょっとくらいほほに触れても良いですわよね……)

 

 

 そのツタエの、手を顔に当ててくれた行為により、ウサは気分が楽になっていた。

 その後10分ほど休憩を取り、ウサはツタエにお礼を言って、別れた。

 

 ウサは家に帰った。

 家に戻り、ことを整理する。

 

 

魔法少女になってから1年半が経過した。

現在のウサのステータス


□STRの平均 力の強さ

 101 (4)


□AGIの平均 動きの速さ

 40 (3)


□DEXの平均 器用さ

 20 (3)


□VITの平均 打たれ強さ

 98 (4)


INT 状況判断力、反応速度

 15 (8)


MAXHP最大の生命力

 110 (4)


MAXMP最大の魔法使用力

 40 (9)


MAXToughP 最大のタフ力

 99 (4)


MAXSumP 最大召喚力

 35 (2)


※□のついた個所は、さらに体の部分で分割される

()内は変身前のステータス





——TIMES_A{0,0}——記憶

――ウサ視点


 今まで完全に忘れていた部分。

 1年半前に忘れてしまった部分。

 魔法少女になった時に体験したことのうち、完全に頭から抜け落ちていたを思い出す。


 これは、魔法少女になった直後に、サムから説明を聞いていた時の記憶だ…………


 サムの振る舞い——サムが考えるような、頭の中にあることを探すような素振りをしている。

 という状況を見ている記憶。

 そしてサムは説明をし始める。


「さらなる助言の必要がありそうだ。

 魔法少女になったあと、サダーミを再スキャンしたときに発見したことを伝えておくよ。

 サダーミは魔法少女になったことが起因してギフテッドアビリティが発現したようだ。

 我々の力を貸与したのとは別の反応があり、それをサーチしたことにより判明したから報告しておくよ。

 サダーミの想いから選出されたのは、意識を過去に戻すアビリティのようだ。

 使いこなすのは非常に困難と資料には記載されている。

 むしろ使いこなせないだろうとね。

 そんなアビリティのようだ。

 例えるなら、とても値上がりするかもしれないヴァーチャルカーレンシーやヴァーチャルマニーみたいなモノだね。

 もし、パスワードを忘れてしまえば、所有している状態への接続が出来なくなれば、価値が無くなってしまうところも含めてかな」


「ギフテッドアビリティ? 意識を過去に?」


「ギフテッドアビリティは、まぁ、ある変化を元にたまたま発現した特別な能力ようだ。

 ステータス表や、スキルツリーには表示されない能力だね。

 システム元が違うから。

 スキルとアビリティでは成型元せいけいもとのシステムが違うんだよね。

 その話は、まぁいいや。

 それでね、発現したアビリティは分かり易く言えば、タイムリープのことだよ。

 おっと、でもくれぐれも気を付けてくれよ。

 今日というか今よりも過去に飛ばないでくれ。

 魔法少女ではなくなってしまうからね」


「今日より過去には駄目……」


「そう、そして、このアビリティを使いこなすのは困難みたいだね。

 困難な理由として、タイムリープ後の記憶が保てないことがあると読み取れる。

 特に、タイムリープに関することの記憶が。

 一種の、宇宙を守るためのセーフティのようだ。

 保険制御であるブレイク機構きこうが強すぎるみたいだな。

 どうせ、数値的にそんなに使えないのに、慎重すぎる処理設計のようだ。

 まぁ、どの程度記憶が保てないのかは、試してみるしかないようだ。

 どの程度記憶が失われるかは、そこまでは詳しく記載されておらず、読み取れないね。

 だけど、何度も使いこなして行くと、『記憶の失われ方が低減』していく可能性があると記載があるね。

 情報ソースは非常に少ないがね。

 さらに、その少ない情報ソースを読み取り、分析すると、このアビリティもスキルと同じで使えば使うほど、人間の能力と同じように伸びるであろうことが読み取れる。

 まぁ、さきほども言ったけど、魔法少女のスキルは使えば使うほど、人間の能力と同じように伸びる。

 アビリティも同様だということが読み取れる。

 使用者はそのように語っていたとの記述が読み取れる。

 ざっくりと纏めると試行して慣れろという感じのアビリティのようだ。

 そのように類推できる」


 サムが何を言ってるのか、全然分からない……。

 分かったことは、「試行して慣れろ」――試してみるしか無いってこと。


「はぁ、試してみるしかないのね……。それでどうやって使えばいいの?」


 さっきの戦闘で使ったイーグルクロウとかガンファイアーみたいな感じでいいのかな……。


「念じて使用していた者がいたと読み取れる。

 説明を解読すると……スキルと使用感に違いは無く、即自発動と解釈できる。

 他には、使用者の認識している『区切りの良い区分ごと』が扱いやすいとの供述の記述がある」


「え? 区切りの区分??」


「えっと、分かり易く説明するとサダーミさん。 1日は何時間?」


「24時間」


「2日は何時間?」


「48時間」


「6日は何時間?」


「144時間」


「あれ、ぱっと答えれた。珍しい人だね君は。サダーミ。やはり計算が速いな。覚えてるだけかな?」


「速いかな??」


「じゃぁ、一週間は何日?」


「7日」


「そう、今、ぱっと質問されて、パッと答えられる状態がサダーミが良く認識してる区間ということになる。

 答えられなかった問題は出してないから、厳密な区別は自分で導いてね。

 で、えっと、説明を解釈して、ざっくりと、キミでも分かるように答えるとそのようになるな。

 タイムリープ――跳躍ぶ時間の間隔は、区切りの良い時間が、飛ぶのにやさしいということのようだ。

 さらに、短い時間をタイムリープするほうが記憶を失われやすく、逆に、長い時間タイムリープするほうが、記憶が失われにくいとある。

 長い時間を跳躍するほうが、コストが割高な分、熟達してると逆にみなされ、セーフティをわざわざ発動しないってことかもしれない。

 長いということがどれくらいなのかについては、詳しくは書いてない。

 どのみち慣れるまでは、短い間隔でタイムリープすることができないとの情報もある。

 長い距離を飛ぶ方が能率は悪いが、『簡単』なことであると、読み取れる供述の記述がある」


「長い時間をタイムリープする方がいいのね……」


「数値との折り合いの問題なようだ。

 えっと、体に数値が紋様として印字されるとある。

 キミの体に書かれている数値を見てみてよ。

 腕から体にかけて、紋様のように書いてある数値。

 体に蛇のように巻き付いた数値さ。

 家帰ったら確認してみてね」


「え、あっ、うん、体の確認……」


「それで、その数値分の秒数換算で、その2じょうぶん数値が減るようだよ」


「秒数換算で2じょう?? なんかとても大きな数になるような……」


「ほんとサダーミは、数値に強いな、理解が早いね。

 んでね、使用に慣れるまではタイムリープ後の着地で、眩暈、立ちくらみが観測されていると表記されている。

 戦闘中などを想定して仕える代物じゃないようだ。

 まぁ、出来る限りいろいろ試してみて、欲しい。

 このアビリティを開眼した者は、ワシらの部門には今までにいたことが無いから、資料も不足していて情報も少ない。

 そもそも、この魔法少女に変化する、を契機にアビリティを開眼した者自体の絶対数も少ないからね。

 情報提供を期待してるよ」


 情報量が多すぎて、サムの言ってることの情報があまり読み込めてないけど。

 とりあえず、理解したと伝えておこう……。


「分かった……」


「まぁ、サダーミはあまりよく理解してないみたいだね。

 今までの説明をざっくりと纏めると、そうだね……。

 今の時刻……16:00くらいか。

 明日に、その時間を回ったら、1日戻る。

 それが駄目なら明後日に2日戻る。

 それが駄目なら3日後に3日戻る。

 それが駄目なら4日後に4日戻る。

 と、やっていけば最短で今日のこの時間に戻れる日が分かるんじゃないかな」


「なるほど……」


 よし、毎日鳴るように、16:10にスマホのアプリのタイマーを掛けておこう。


「まぁ、とにかく家に帰ったら、体に印字された数値と紋様を確認してよ」





 と、ここまでが最初のサムの説明で失われていた記憶。

 他の部分は覚えている。失われていなかった。


 ただし、このぶんだと、失われていた記憶によって、その後のことも記憶としては解釈が異なっている部分がありそうね。

 漠然とそう感じる。


 紋様だって、魔法少女に変身できることに対するしるしか何かだと思っていた。

 普段の生活で、この紋様には苦労させられていた……。

 意味のある紋様だったとは……。


 そのことを忘れていた……記憶を取り戻すまでは……。


 


 その後私は、言われた通りに次の日に16:10のタイマーが鳴ったらタイムリープを使った。

 1日前に戻るように。

 しかし、それは失敗した。

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