死に戻りする魔法少女と、時をかける魔法少女の殺し合いが行われるまでの日常

人工微能

第1話 A{1031,3067} 夢の中であったようなオール・ニード・イズダイバーシティ1%の向こう側の夜

——TIMES_A{1031,3067}—

 2024年9月22日(日)


 瓦礫と化した日本の首都の、東京都波常見区。


——モエ中学三年生、15歳。

——モエ視点   


 世界は怪物カーニボー、肉食獣に満ちていた。

 かろうじて残っている高い建物から景色を見渡せば、体長10メーター以上の怪物カーニボーが数十匹は視界に入る。

 家族も同級生も、みんな死んでしまった。


 知人も、もしかしたら、2、3人くらいは生きているかもしれないけど、誤差の範囲だと思う。

 兄は生きてるのだろうか……。

 そして、ツタエちゃん、チキちゃん、セツコちゃんはまだ、生きているだろうか……。


 世界は、怪物カーニボーによる殺戮の支配する世となっていた。

 モエの聞けた最後の情報によれば、ヨーロッパではドイツのハンブルクを中心に、その勢力は拡大していき、あわやフランスも陥落寸前のこと。

 それが、何日も、何カ月も前の情報。

 さらには、規模の大小はあれど、怪物カーニボーは世界中で同時多発的に発生しているようであり、日本でもそこらじゅうで湧いている。


 そんな世界の中、運よく生き残っていた私は、ついに怪物カーニボーに捕まった。


 変身時間が切れて、変身できない時のことだった。


 この怪物の正確な名称は、エグゼキューショナーだったかな……。

 世間一般では、怪物カーニボーと呼ばれている。

 体高7メーターはあるであろう、私を捕まえた怪物カーニボー


 トロール型かな……。


 いびつな人型体系から延ばされた大きな手によって、私は捕まえられた。

 握りつぶされて、即死しなかったようだ。

 見た目に反して、力の入れ方のコントロールができるようだ。


 茫然自失している為か今の私には、あまり恐怖が無い。

 ついに私の番であるとすら思えてくる……。


 どちらにせよ、変身できないし、今の私には、こういう純粋なステータスが高い系の敵に対し対抗しうる手段は無い……。


 その大きな怪物カーニボーの手がその巨大な顔の口元に持っていかれ、私の頭を噛みちぎろうとした。

 その時、何かが、私を捕まえた怪物カーニボーにぶつかり、私はその手から離れた。

 吹っ飛ばされた私は、黒いきりのようなモノにめり込み着地した。


 感触としては、半球のとても柔らかいウォーターベッドに着地したような感じだった。

 ゆっくりと、地面に転がった。


 辺り一帯に、個体のような、液体のような、気体のような黒いモノが蔓延はびこっていた。


 辺りを見回すと、私から50歩ほど離れた地点と、100歩ほど離れたところに二人の女性がいた。

 比較的に近くに飛んできたことを気にするでもなく、二人の女性ヒト相争あいあらそっていた。

 一人は髪が漆黒のストレートロング、もう一人は髪を横にツインテールにしていた。

 ツインテールのほうは、大人な女性があえてカッコよく子供のようなツインテールの髪型をしてるような感じだ。

 半年くらい前に、インスタで流行ってたかなぁ。

 髪型も含め、いかにもインスタ映えしそうな二人だった。

 ちなみに、3カ月くらい前から、世界的にネットがあまり繋がらなくなり、インスタも見なくなってたけれど……。


 私には、他人には見えないモノが見え

 怪物カーニボーは他の人でも見えるけど、あの二人は他人からは見えない。

 私は特殊は目を持っている、異能というのだろうか。

 普通の人間からは、あの状態の二人は見えない。それだけは何故か分かる。


 その二人が何者か……。

 朧気おぼろげに見える二人。

 そう……二人は恐らく戦っていた。

 私の認識では、何をどうしているのか、理解が追いつきにくいが、二人が戦っていることだけは分かった。

 何か……思い出せそうだ。


 たしか、正義と正義の戦いだったけ……。


 正義なんて、誰にもでも存在するが……。

 正義がない人なんてツタエちゃんくらいだろうし……。


 二人は、簡易なドレスの上に、バトルスーツのような物を着込み、さらにその外側に黒い靄が目まぐるしく二人の外装を変化させていた。

 黒いもやを互いに操り——、それは、時には体にまとい、時には固形となって中空から光線を放ち、時にはビリヤードの玉のように連鎖的に衝突して、縦となっていた。


 二人の女性……年は私よりも少し上くらい、高校生だろうか。

 二人が通話でもしてるのか、意思の疎通が感じられる。

 微かに見える本人たちの口元が動いていた為、そのように感じる。


 私は、二人のことを知っていたはずだが、それは思いだせないようだ……。

 ツタエちゃんが言うには、私はあの二人に会ったことがあるけど、無かったことになっている。

 するとそうなると言っていた。

 よく分からない。

 私の口調、一人称すら違っていたらしい……。

 よく分からない。


 私は、二人の様子を伺いながら近づいていく。

 そうすべきなはずだ。


 横ツインテールは空中に農薬をまくような大きさ2メールほどの飛行機を10機ほど召喚した。

 それを漆黒のストレートロングに向けて飛ばすが、地面から自動的にミサイルが出現した。

 10本くらいのミサイルらしきものが発生したかと思うと高速で、マッハ5はあるのではという速度で、飛んで行く。

 見えたと思ったら、すごい加速度で小型の飛行機に着弾し、破壊した。


 漆黒のストレートロングは少しくやしそうな顔をし、逆に横ツインテールにはしてやったりみたいな顔となる。


「……ル…………ィ」


 次に、横ツインテールは再び召喚を行う。

 先がカジキのように尖っている黒い潜水艦のような……、なんとも分からない飛行物体を召喚する。

 羽もついていることから、それも空を飛ぶ飛行機の一種だと分かるが。

 その黒い飛行機は、先ほど漆黒のストレートロングが自動的に発射したミサイルの発射台がある辺りに次々と着弾していく。


 まずいっと一瞬顔に出す漆黒のストレートロング。


「ハ……ファ……」


 爆音だらけの周りのせいか何を言ってるのかは聞き取れないが、漆黒のストレートロングは何やら叫ぶ。

 地面から白い四角い箱状のもの——舞台劇に使うようなスポットライト用のプロジェクターのようなモノが地面にいくつも発生する。

 その発生した白い四角い箱から、光線が発生し照射し、黒い飛行機を破壊していく。


 黒い飛行機は破壊されていくが、白い四角い箱を呼び出していた漆黒のストレートロングの隙をつく形で、横ツインテールが接近をしていく。


 漆黒のストレートロングは白い四角い箱からの光線を横ツインテールに向けるが、横ツインテールがいつの間にか手にしている蛍光灯のような棒状の物をブオンブオンと振り回し、光線をほとんど回避しながらさらに接近する。

 横ツインテールは、何発か被弾しながらも、血に染まりながらも、漆黒のストレートロングに迫った。


 すさまじい、戦闘……だ。

 個体と個体の戦いとは、もはや言えないような戦闘だ。


 私の知っている戦闘との、あまりにも差がある為か、二人ともが手加減してるとすら感じ取れるような動きだ。

 能力の差があり、行っている戦闘の内容が高度すぎて理解できないと、こう見えてしまうのだろうか。


 一瞬思考がぶれ、戦闘に意識を戻した――ちょうどそのとき、さきほどまで私を捕まえていた怪物カーニボーが暴れて、あたりの物を吹っ飛ばす。

 その吹っ飛ばされた物が私にぶつかり、弾き飛ばされるように私は二人のすぐそばに飛び出し、地面に仰向けに倒れてしまう。


 

 横ツインテールの攻撃を受けて漆黒のストレートロングが吹っ飛ばされる。

 そして漆黒のストレートロングの人は私の上に追いかぶさった。

 下敷きになっている私を気にもしないで、倒れながらも手を伸ばし何かを言う漆黒のストレートロング。


「マ……ク………………」


 周りの騒音により、ほとんど聞き取れない。


 漆黒のストレートの示した手の先を見ると、空間が揺らめき、人が現れた。

 その手の先には横ツインテールが血まみれになりながら、こちらに向かってくる。


 辺りに血しぶきを振りまき、横ツインテールは一瞬でそばまでやってきた。

 横ツインテールから溢れてる血は、私にも降りかかる。


 横ツインテールが手を漆黒のストレートロングに当てて、何かを言った。


 横ツインテールがで私の上にいる人物を切り裂く。


 こちらも周りの騒音が激しく、あまり聞こえなかった。


 次の瞬間、私の上に追いかぶさっている漆黒のストレートロングの体に穴が開いた。

 口から大量の血を吐く。


 その血が私の顔を目掛けてドバドバ降りかかる。


 私は、横ツインテールの血と、さらに大量の漆黒のストレートロングの血を浴びながら、自分の死を感じつつ意識を手放した。


——TIMES_B{0,0}——

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