第2話 いじめられっ子 タヌキの子くん
タヌキの子は、昼休みになると図書室に行きます。図書室のシンとした静かな空気も好きです。けれどももっと確信をついたことを言うと、教室にいるといじめられるから教室にはいたくはないのです。いじめられて家に引きこもっていた時期もありました。今も教室にはあまりいたくはありません。図書室にはスケッチブックを持って行き、そこで漫画を描いているのです。
いつもの通り、今日も昼休みになり漫画を描こうと図書室へと向かいます。すると、カラスくんに道をふさがれました。
「いつも、いつも、図書室に何しに行っているんだよ!」
「何って・・・・・・」
タヌキの子はスケッチブックを背中にそうっと隠します。カラスくんはすぐさま、
「後ろになにを隠したんだよ!」
タヌキの子は走り出します。しかし、すぐさまカラスくんに捕まってしまいました。
「なにを隠したんだよ。見せろよ!」
そうして例の漫画の描かれたスケッチブックをひったくられました。カラスくんがスケッチブックを開きます。そこには漫画のキャラクターやキャラクターの物語が描かれていました。カラスくんは教室にスケッチブックをもって走って行きます。
「みんな見ろよ。みんな見ろよ」
周りに人が集まってきます。
「へたくそ! へたくそ!」
「へたくそ! へたくそ!」
みんな大笑いです。
「絵なんて描いて気持ち悪い」
「こいつオタクだぜ」
カラスくんたちみんなは大笑いです。
「オタクの絵はこうしてやる」
最後にはそのスケッチブックを破られて花吹雪のように窓から散らされました。
タヌキの子はその場で泣き崩れてしまいました。
「あんまりだよ。スケッチブックを破くなんて」
カラスくんはその場を踊り回ります。
「花吹雪ったら、花吹雪!」
その夜のことです。
カラスくんが大怪獣になって街を壊しまくっていました。大きなビルをパンチでボカンと。電車を足で踏みつけて壊します。タヌキの子はいっぱい漫画のキャラクターを描いては、息を吹きかけます。すると漫画のキャラクターはそれこそ人間や動物のように動き回ります。タヌキの子の描いた漫画のキャラクターたちはカラスくんに向かって突進していきます。
「いけ~。いけ~」
カラスくんはカミナリ雲をよびだすと、カミナリをぴかぴかと落とし始めました。カミナリの一つがタヌキの子にも落ちました
。
そこで、慌ててがばっと起きると、そこはいつもの自宅の布団の中でした。まだあたりは暗いです。タヌキの子の目から、つうっ、と涙がしたたりおちました。
朝お母さんが起こしに来ます。
「朝よ。ご飯食べて学校に行きなさい」
タヌキの子は黙って寝ていました。
「早くしなさい!」
お母さんが布団をはぎ取りました。
タヌキはそこで
ウッ
とゲロを吐きました。次の日にはまた学校にいけるようになっていましたが、絵を描かなくなりました。
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