銀の絡繰
T.KARIN
第一章 銀夢
第一話 機械人形
死臭が鼻を突く。
大半の事が思い出せない。
脳裏に浮かぶのは、しかめっ面の老耄が放つ言の葉ばかり。
不快な目覚め、程良い吐き気。このまま寝れば楽になれる。そんな確信。無意味が意味を、生きる力を、刻一刻と削ぎ落とす。静寂が現状を物語る。音無き声はいつも何かを叫んでいる。
「機械...... 人形........」
粉塵を裂くは機械人形。この死臭を感じていないのだろうか。その顔は情を知らない。情を知らないと、その顔は述べていた。
芯の通った立姿、気の抜けた面、透き通る様な白い肌、浅葱色の瞳。美しく纏め上げられた銀髪。髪飾りとは魔法の道具であったのか。
銀髪の先は、瞳の色に。少しだけ浅葱味掛かっていた。
「問うは一つ。伏するか人間」
地に伏す彼に伏するか、と、可笑しな事を聞く人形。
そうして彼は無視を決め込んだ。すると彼女は、何やら御立腹のご様子。早足で近付いて来るや否や、彼の顔を下から覗き込む。不満の要因は彼の顔にあったのだろうか。
「口呪とは.... 陰湿な.....」
コウジュ。聞き慣れ無い。機械語か、はたまた記憶が悪いのか、いずれにせよ、宜しくないのだろう。何故かそこには確信が持てた。
次の瞬間、何かが唇に触れた。触れた何かが何なのかは、分かるようで、分からなかった。そして数瞬。ほんの数瞬後。口が開いた。どうやらコウジュとか言う呪いが、唇を縫い合わせていたらしい。
無視されたのは呪いの所為。そう思い込んだのだろう。普通に無視しただけなんだがな。
「......」
開いた口の先から、血の池の臭いが、散った臓物の臭気が、我先にと飛び込んできた。しかし、不思議なことに、何故か吐き気は収まっていた。
そうして次の瞬間、吐いてみせた。
美しき造物の香り。造られた香り。ソレらに酷く酔わされた。
「吐く程私は不細工か」
一本取られた。
そんな感情。
そうして気絶してみせた。
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