記録1
「今日は雨か」
そう父さんが言った。「何を言ってんだ」と思った。なぜかって? それは勿論、今日は比較的晴れている方だったから。
空には、雲が少し多いものの、梅雨の時期にしては太陽の光がサンサンと差し込んでいて、雨が降るようには到底思えなかった。
だから、父さんの言葉は完全にスルーした。
それから五分ほど経って、僕は投稿の準備を始める。学校指定の通学用リュック。ダッサいし重い。でも割と何でも入る有能なカバンだ。その中に、教科書や水筒、筆箱、そして最近学校から配られた勉強用のタブレット(これが本当に邪魔で仕方が無い)などを丁寧に詰め込んでいると、
「今日は雨降るらしいから傘持って行くんだよー!」
と母さんの声が遠くから聞こえた。
「めんどい……」
小さくそう呟いて、僕は準備を進めた。
家を出るギリギリまで必死に拒んだが、結局黒いなんの特徴も無い傘を押し付けられ、そのままドアを閉められ、渋々傘を持っていくことになった。
三人の集合場所にしている公園に行くと、斗真がつまらなさそうに、一人寂しく立っているのが見に止まった。だから、小走りで公園の前の横断歩道を渡り、斗真のリュックを軽く叩く。振り向いた斗真の手には紺色の傘が握られていた。聞くと、斗真も渋々といった感じだった。
「ごめーん遅れたー」
ごめんと思っていない声を出しながら走って来る環は、折り畳み傘を持っていた。
「あーそっちにすれば良かったー」
「それな」
と僕と斗真が言うと、
「いや今日結構降るらしいよ」
と環がサラッと答える。
「まじかー」
と斗真が言った。……いやちょっと待て、なんでそれを知ってて小さいので来た? そう思い
「じゃなんで折り畳み傘なんだよ」
と聞くと、
「いやこの空で雨降らねーだろ」
とあっさり答えられた。
「それはマジでそう」
「まあ、折り畳み傘一本学校に置いてあるから雨降ったら貸してやるよ」
と僕が言うと、
「じゃ二本差しで行きたいと思いまーす」
と言いながら、両手で拳を握り、それを顔の横へ。二本の傘を差しているジェスチャーをした。
その後僕らは、近付く期末テスト愚痴を言いながら、学校へ向かった。
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