普通の村娘でしたが、錬金術師に捕まった結果化け物になってしまったので正体を隠して生きようと思います〜自称“自重”少女の異世界冒険譚〜

黴男

序章

第1話

私の名前はケイト。

ケイトで苗字はない。

ソルマ孤児院所属の、化け物だ。

もちろん、周囲はそのことを知らないが。

私はもともと、孤児では無かった。

温かい家庭に生まれて、親の愛をたっぷりと受けた。

でも、それは5歳の時に全て奪われた。

街は流れるような金属の化け物に襲われ、一時間もしないうちに全員殺された。

私が生きているから全員では無いって?

違う。

あの時私も死んだのだ。


『ん? そこの娘は素晴らしい素体ではないか! アルケミックゴーレムども、あの娘を捕まえろ!』


そして私は捕らえられた。

最後まで私を逃がしてくれた父と母は、流れる金属の化け物に首をもがれ轢き潰されて死んだ。

それからは地獄の日々だった。

狂った化け物の主…彼は自分を〈錬金術師〉と名乗り、私を様々な実験の材料にした。

毎日の様に襲い来る激痛と苦しみの前に、私という存在は徐々に薄れて消えていった。


『うむむ…ザグナの魔石の適合率が低いな、もしやあの場所出身で無ければ効果が薄いのか?』


ある日、錬金術師がそう話しているのを私は聞いた。

私の体はその時もう既に、複数の金属が混じった表皮に、膝から下が溶けて、両手は錬金機械に繋がれているという姿になっていた。

だが頭だけは、異形になりつつも何とか無事であったため、その言葉を聞くことができた。

その言葉を聞いて抱いた感想は、何も無かった。

ただ、音が聞こえて言葉に変換されて、強化脳に届いただけだった。


『そうか! あの娘で試してみようぞ』


そう言って、錬金術師は準備を始めた。

何十もの魔物の死体、魔石、そして何かは分からないが医師の様なものや内臓の様なもの。

謎の液体や骨、そして………脈打つ様に見る者に威圧を与える赤い宝石。

その大きさは頭ほどもあり、私はそれを以前どこかで見たことがあった。

それは———

村の祭壇である。

錬金術師が村を襲ったのも、このちっぽけな石のためだった。

そう気付いた私は、数年振りに理性を取り戻し暴れた。

が、体は言うことを聞かず口から人のものとは思えない声が出ただけであった。


『おお、我が生涯をかけた実験に付き合える事を喜んでいるのか! そうだろう、そうだろう』


錬金術師は何を勘違いしたのかそう言い、素早く準備を整えた。

自身の生涯を終わらせ、私の人生の転機となる儀式の準備を。


〈融合錬金〉ハウジャストレア・クムズ・ヴィオラ!』


その言葉と共に、私の意識は消えた。

次に気が付いた時には、私の足元に四肢をもがれ、心臓を貫かれて死んだ錬金術師の死体が転がっていた。

何が起こったかさっぱり分からなかったが、自分の姿が想像もつかない異形へと変じていたのは理解出来た。

そこから数ヶ月錬金術師の住処で過ごして、大体何が起こったかは理解した。

無数の魔石や魔物の素材を取り込み、異形と化した私の体だが、他にも錬金術師の魔力の宿ったものを片っ端から吸収した結果こうなったらしい。

異形の体も、引っ込んで欲しいと思った途端にかつての自分の体そっくりに戻った。

寝ている時に戻ってしまうなどのトラブルもあったが、何とか人間の体を維持できる様になった。

外に出るための知識は無かったが、戦うための知識は身に付けていた。

無数の魔物の知識と経験が私に混ざり合い、私のために貢献してくれているのだ。




そしてある日、私は外の世界に出る決意を固めて………外に出た。

数時間後に隊商に見つかり保護されて、孤児院行きになったが。

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