第28話 エルフちゃんと課外学習
十月某日。今日も天気は晴れ模様。いい秋が続いている。
今日は課外学習がある。幼稚園児と一緒に山へ行き、ドングリやモミジを拾ってくるらしい。
幼稚園に到着した高校生たちは挨拶も早々に、園児と一緒にバスに乗り込んで出発した。
「お姉ちゃん、おっぱい大きい!!」
突然一人の園児がそう言いだした。
「僕のお母さんよりも大きいよ」
「そう言われれば」
「もう赤ちゃんいるのかな」
無邪気なものだ。ララちゃんは微笑ましそうにそれらの会話を聞いて、適当に返事をしていた。
ララちゃんもなかなか幼児耐性があるらしい。
「あのお姉さん、おっぱい触ってもいいですか?」
「いいですぅ」
これには俺たち高校生男子たちも一瞬色めき立った。
男児がララちゃんのおっぱいを優しく触る。
「柔らかいっ、すごーーーーい」
そうして顔をうずめる。ぐりぐりする。もうべったりだった。
「ママ……」
その子は父子家庭でお母さんがいないとさっき幼稚園の先生が言っていたのだ。
「ママだったら。お姉ちゃんがママだったらよかった」
その言葉が俺たちにのしかかる。
男児も寂しい思いをしてきたことが窺える。
おっぱいを堪能したらしい男児は笑顔を浮かべていた。
「ありがとう、お姉ちゃん」
「ううん、じゃあね」
「うんっ」
男児が名残惜しそうにしていたが場所を変わる。
そうそうララちゃんの隣はお兄さん、つまり俺の席だからね。
バスが
ここ、俺たちが春に遠足で来た山で反対側の斜面だった。
「お兄さんお姉さんたちから離れないように、いいね」
「「「はーい」」」
ララちゃんもハルカも両手を女の子と手をつないでいる。
バスの中からすでに仲良くなっていた。
俺たちも残った男児たちを両手に連れて山を登る。
登ると言っても幼稚園児がいける程度の距離だ。
そうして国有林なのか森のような場所に到着した。
一面ナラやブナのような広葉樹が植えられている。もしくは自生していた。
「ドングリを探すぞ!」
「「「おおぉおお」」」
みんなドングリは大好きみたいで、地面に落ちているドングリを必死に集めている。
大きくて丸いの、小さくて細長いのなど、いろいろな種類がある。
「これ虫の穴あいてる」
「どれどれ」
「これって中に芋虫みたいのが入ってるんだよね」
「きゃああ」
ララちゃんがちょっと顔を青ざめて逃げていく。
青虫は嫌いなのか。ふむ。
女の子たちは落ち葉を集めて、おままごとを始めた。
赤やオレンジの葉っぱはとても綺麗だ。
「こちらの葉っぱのほうが赤くて価値が高いのかしら」
「そうね、こちらの葉っぱは綺麗な形をしていて高そうよ」
なんでかお嬢様言葉だ。よく覚えてくるものだ。
テレビとか見ているとこういうのも覚えるんだな。
そうして落ち葉品評会でどれが値段が高いかという話をしている。
なるほど。現金なものというか、最近の子供は面白い。
「見てこれ、デカい」
「ほんとだ」
「すげーぞ」
「おい、これ見てみーー」
男児たちが集まっていた。
どうもすごく大きいドングリを見つけたらしい。
見つけた子はヒーローのようだった。
「見てみて僕も大きいドングリ見つけた!」
そういってララちゃんのおっぱいを指さす。
「そりゃ敵わないな、あはは」
「ずりーぞ。ララちゃんママのおっぱいはみんなのものだぞ」
「そーだそーだ」
だそうですララちゃん。
ララちゃんのおっぱいは共有物とされ大切にされているらしい。
俺でさえ知らなかった。
騒がしいドングリ探しは一時間くらいだろうか。
それでもみんなだいぶお疲れのようで帰りのバスでは舟を漕いでいた。
◇
俺たち高校生組はというと、帰りにカラオケで打ち上げをしていた。
「はい次、ララちゃん」
「ララ、『あの青い空の果て』歌いますぅ」
「「おぉおお」」
打ち上げと言っても、この部屋は俺とアキラとララちゃんとハルカ、いつものメンバーだけだ。
もちろん禁煙室で酒はタブーとなっている。
ララちゃんが一曲歌う。人気アニメのオープニング曲だ。
俺たちはなんとなく聞いたことがある。
ネットで日本文化を見聞きしたララちゃんはこういうモノに詳しい。
「ジュース持ってきますぅ」
「わたしも」
ララちゃんとハルカが部屋を出ていく。
ドリンクは飲み放題だけどドリンクバーなのでセルフサービスとなっていた。
「これ、シュワシュワしますぅ、面白いですぅ」
「炭酸飲料だね」
「はじめて飲みますぅ。家ではお茶かコーヒーなのですぅ」
そうそう。うちでは主にコーヒーか紅茶、あとララちゃん特選ハーブティーが多い。
今までそういえば意識していなかったけどペットボトルの炭酸飲料は買ってきたことがない。
ララちゃん、炭酸飲料、初体験。
ララちゃんがソーダを一口飲む。
「わわ、パチパチしますぅ、なんだこれぇ」
驚いてくれてうれしい。そっかエルフの里にはなかったか。
ハルカとララちゃんがロボットアニメのダブルヒロインのデュエット曲を歌っている。
「愛してる~」
「愛してる~」
「天の彼方まで~」
「ずっとずっと~」
「「永遠に~~」」
こういうのは俺たち男同士よりかわいらしいので、かなり盛り上がった。
もちろん俺たちも歌うことはあるが男は男なので、こんなにうまくはない。
ララちゃん、アイドル活動とかしたらめちゃくちゃヒットしそう。
俺はそれを想像してちょっと怖くなった。自分たちだけのララちゃんにしたいなと独占欲を感じたからだ。
日本語の歌もうまいララちゃん。今後の活躍にも期待したい。
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