第2話
「種類が多くて迷うけど……これにしようかな」
数多くある色の中から目を引いたレジンを選び、中島に見せる。
「クリアイエローだね。あとは型とパーツも選ばないとだ」
「色だけであんなに種類があって迷ったのに、パーツも種類が多いですね」
色を選んだ私に中島は新しい箱を見せてくれた。いろんなパーツが、小分けに仕切られたケースの中に入っている。
「ハートに王冠、これはドライフラワーみたいですね」
「好きなパーツを選んでいいよ。パーツは小さいから、このピンセットも使ってね」
そう言って中島にピンセットを渡された。細かい作業をするときに役立ちそうだ。
「あと、こっちにはレジンの型があるんだ。型から先に選んだ方がいいかもね。これも好きなのを選んでいいから」
中島が持つ箱には様々な形をした型が入っている。これまた数が多い。
「猫ちゃんの形に雫、星形もありますね」
「うん。これはシリコンでできていてシリコンモールドっていうらしいよ。僕は今、細長い棒みたいな型を使ってるんだ」
レジン液やパーツに型。これだけ種類があれば世界で一つだけのキーホルダーが作れそうでわくわくしてきた。
「ほら、これが僕が今、作ってる途中のやつだよ」
そう言って中島が見せてくれたのは縦長の型に透明のレジンが入れられ、中にドライフラワーが入っていてハーバリウムみたいで綺麗なキーホルダーだ。
「初心者はモールドを使うよりミール皿タイプの方がおすすめらしいけど、僕はこっちの方が気に入っちゃったんだー。まだ始めたてだけど、結構楽しいよ」
それは見ればわかる。中島は子供にように無邪気に笑っているのだから。
「私、さっき中島さんが見せてくれた丸いやつを作ってみたいです」
「じゃあ、このモールドだね。パーツも選んでみよう」
「どんなものにするかなんとなくだけど、もう決まってるんです」
そう言ってクマのパーツを選んだ。初心者ということもあって、選ぶパーツは一つにしてシンプルなものに仕上げるつもりだ。
「じゃあ、レジン液を入れてみようか。一度にたくさん入れすぎると硬化するのが大変だから少しずつ入れていこう」
「はい! えっ、そういえばこれってどうやって固めるんですか?」
「これはUVレジンだからUV、つまり紫外線で固まるよ。日光に当てても固まりはするけど時間がかかるから、今回はこのUVライトを使って固めます」
そう言って中島は白いUVライトを取り出した。
中島のレクチャーを受けながらレジン液を流し込み、UVライトを使って固める。何度かそれを繰り返し、途中でクマのパーツを入れてまたレジン液を流し込む。
中島に教わりながら作り上げたキーホルダーは、天に掲げるとアンバーが透けて中に閉じ込められたクマがかわいらしい。我ながらうまくできたのではないかと思う。
「上手にできたね」
「はい! 途中でレジン液をこぼしそうになったときは焦りましたけど、なんとか綺麗に完成させれてよかったです」
完成したキーホルダーを中島に褒められ、素直に喜ぶ。自分が作ったから贔屓目で見てしまっているかもしれないが、なかなかの出来栄えだと自画自賛してしまう。
「今回はキーホルダーを作ったけど、アクセサリーも作れるんだよ」
「色やパーツ、型もたくさん種類があって奥が深いですね」
「そうだよね。楽しくてハマっちゃう」
そう言って中島は先程まで使っていた形とは違う型をとって新しいものを作り始めた。
私もべつの型にチャレンジしてみよう。こんなに簡単に、世界で一つしかない自分だけのキーホルダーが作れるなんて楽しい。
中島にクッキーを届けにきただけのつもりが、気がつけばこの日はずっとレジンでキーホルダーを作っていた。
最初に作ったクマの入ったキーホルダーは家に帰ると早速鞄に取り付けた。
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