第6話 もっとやったれ!
フリードリヒの有責で婚約破棄。我が家にはなんの落ち度もなし。
そのうえ事前の契約にのっとって、サクセン侯爵家からは我が家に巨額の賠償金が払われます。
サクセン侯爵家には払う金なんかありませんから、城も館も領地も全部うちのものです。
領地再建して金のなる木にする計画は既に出来てますが、私が先方の家に入って操るより、直接経営したほうがぜんぜん効率的です。これで領地再建も早く進むでしょう。
表面上は何もかもうまくいきました。
これでまたもウチは資産倍増です。
私個人としても、こんな粗末な男と結婚せずに済みました。
うっはうは結果なはずです。
本来なら笑いがこみあげてくるところなんですけど……この子がこのバカに穢されたと思うと……くぅぅぅぅ!
ああ、まったく嬉しくないです!
この子の純潔に比べれば、侯爵家の資産なんてゴミクズも同じですもの。
「はっはっは! 悔しそうだなッ! 哀しそうだなッ!
いつもオレ様を見下げているお前が、絶望にのたうつのは愉快痛快ッ!
思い知ったか! 卑しいあぶく銭のカタマリに対する高貴なる精神の優越性をッ!
真実の愛の前には金など無力なのダァァッ!」
こんなことなら、諦めないであの子とずっと一緒にいられるように方策をめぐらすべきでした。
でも、後悔先立たずです。
私はこれからずっと、この悔いを背負って生きるのでしょう。
決めました。
このアホは絶対にギッタンギッタンにしてやります。
鉱山送りくらいじゃすみません。
生かしたまんま、地獄の苦しみを味あわせてやります。
理性とか合理とかくそくらえです。
私の身を焦がす怒りに気づきもせず、アホは隣の女の、あの子の腰を抱きよせ。
「我が愛しのエリザベータァァァァッ! 悪は滅びたヨッ!
オレ様達のバラ色の輝かしい高貴な未来を邪魔するものはもういない!
さぁオレ様と正式に婚約してめくるめく夜のパラダイスへ――ぎゃぁぁぁぁはぶぅっっ」
エリザベータと自称する女のヒールがバカ男の足を床に縫い付けてロックオンしたと思うと。
体重が乗った平手打ちがバカの頬に炸裂!
「うぎゃぁぁぁ。ぶぎひぃぃぃぃぃ」
「おとといきやがれこのロリコン伯爵!
お前を本当に好きになるヤツがいるわけねーだろ! このコンコンチキが!」
平手打ちの衝撃に鍛えてないヤワな体が倒れそうになったところへ、もう一発!
「ぎひぃぃぃぃ、どぼじてぇぇぇ」
倒れることさえ許されず、倒れていく方の頬へ、バチーン!
「ぎひぃぃ。舌かんだぁいたひいたひぃぃぃぃぃぃ」
アホの口から血がごふごふ溢れますが、構わず連続ビンタ!
バチーン! バチーン! バチーン! と平手打ちが炸裂しまくりです。
顔だけがいいバカ男が、メトロノームの針みたいに、ぐらんグラン。
もっとやったれ。
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