第1章 夢断たれて
────梅雨の合間を縫う昼下がり、燃えたぎる太陽がさえぎる雲を遥か彼方に押しのけ、うだるような暑さを感じてくる。いま、京都わかさスタジアムでは夏の甲子園を目指す
俺の名前は、
高校生活の三年間は野球一筋に打ち込んできたと自信を持って言いきれる。府立の進学高校として、決勝戦まで勝ち進むのは三十年ぶりの快挙と注目されていた。
スコアボードには2対0と数字が並ぶ。
いよいよ、なんとか力みなぎり、最終回のツーアウトまでたどりつく。
ところが、ランナーは一塁と二塁、相手は手ごわい四番バッターだ。絶体絶命のピンチを迎える。リードを守りきりたいと天を仰ぎ肩に力が入る。
これまで何度もピンチを迎えてきたはず。「大丈夫だ」と自分に言い聞かせる。
勝利までもう少しや。けっして油断した訳ではなかったが、一点だけは与えても許されるはず……。あらぬ妄想が脳裏に浮ぶ。
ボールに汗がしたたり落ちてゆく。滑り止めの入るロージンバックを手にする。連投につぐ連投で大切な右肩を壊し、もう速いボールは投げられない。
あとひとり、おさえれば……。
上手くかわそうと投じた瞬間。
キーン!
高らかな金属音を残して、白球はバックスクリーンへと飛び込んでいった。逆転ホームランだ。
ウゥゥ─────ン。九回ゲームセット。2対3の試合終了を告げるサイレンが鳴り響く。とても長い無情な警笛に聞こえてくる。
初めて味わう挫折だ。
砂けむり上がるグラウンドにガックリと膝をつく。敗戦と共に甲子園への一縷の望みも断たれて、アオハルの夢は砕け散ってゆく。
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