第213話・のんびりと空の旅
ミリーをダンジョンに連れて行ったりして、予定より五日ほど遅れてオレ達は帝都を出発した。
目的地は帝国東方領の拠点の調査になる。
「大気中の成分からは病原菌と思われる物は確認されませんでした」
この一週間余りの間に目的地の調査は当然していた。と言っても無人偵察機による大気の採取を連日行い、空気感染の可能性を調査している。
「なお病気の蔓延地域は東方領拠点となるエクシア及び、その近隣に限定されてます。過去を遡っても同類の病気が流行した形跡はありません」
普通に考えるなら新種の病気なんだろうけどね。人為的な生物兵器の類いも考慮しなくてはならないだろう。
もしかしたら他人のステータスが見られるミリーにより原因が分かるかもしれないし、本人も絶対一緒に行くと言うので同行している。
「ほれほれ、ここがいいのか?」
「くーん……」
肝心のミリーはロボとブランカとスキンシップの最中だ。会話できるのは羨ましいなぁ。ロボとブランカと会話できる翻訳機でも開発してもらおうかな?
「ご飯の用意が出来た」
移動中の空中艦で食べる今日のお昼は焼き肉だ。
今日はケティが準備したらしい。
「うむ。美味いのう」
「焼き肉のタレが最高ね! これも売れるわ!」
焼き肉というか肉を焼く料理はこの世界にも数多ある。しかし焼き肉のタレは不思議と売ってないらしい。
近未来的なSFの空中艦の食堂にて、ホットプレートで慣れた様子で焼き肉を焼くファンタジーの住人達と、テーブルの上に行儀よくお座りして肉が焼けるのを待つ子狼。
非常にシュールな光景だ。
「はい、熱いから気を付けるのよ」
最初はタン塩から。ちょっとレモンを絞ってロボとブランカのお皿に乗せてあげると二匹は嬉しそうに食べる。
うーん。完全に言葉を理解してるね。最近だとケティとクリスは算数とか文字を教え始めてるし。
「そう言えばロボとブランカの防護服は?」
「間に合いました。尤も空気感染の可能性は薄いので必要ないかもしれませんが」
ちなみにロボとブランカにも防護服を用意した。
いや、常時バリアを張って歩くのも大変だしね。ギャラクシー・オブ・プラネットにも当然無かったからオーダーメイドらしい。
いずれ宇宙遊泳をする日が来るかもしれないね。
「旅は危険だって言われてるのにねぇ」
「馬車の旅も楽しかったわ。時間があるなら、また馬車の旅もしたいわね」
窓から見えるのは気持ちのいい青空と真下にある雲海だ。
雲の下は雨になってるのかもしれない。
旅で大変なのは雨だ。雨は視界を狭め雨音は敵の足音や気配を消してしまう。
しかも雨に濡れると体力を奪われる。
あまりに楽な旅にクリスは少しつまらなそうにしていて、ジュリアもそれは同意見らしい。
ただ彼女達も本当の厳しい旅をしたい訳じゃないんだろうけどね。特に普通に旅をするとトイレもお風呂もない旅になるから。
「デザートはプリン」
「おお! プリンはいいのじゃ!」
「甘くてトロッとして美味しい」
焼き肉でお腹を満たしたらデザートは別腹だとばかりにプリンを頬張り、うっとりとする子供達。……とロボとブランカ。
もう野生に帰れないね。
うーん。午後は何するかな。昼寝でもしようか。
目的地までゆっくり進んでるから数日掛かるんだよね。あんまり早く移動すると帝国に移動速度バレるし。
便利屋扱いされたくないからさ。
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