第205話・旅は道づれ、初心者には優しく
「でかい口を叩くなら、仲間くらい守れるようになってからにしな」
ジュリアは厳しい表情で正論を口にしてるけど。
オレ達って、そんなに人にお説教出来るほど立派じゃないよね。ゲームの能力で生きてるんだし。
そもそもオレ達もダンジョン探索初めてなんだよ?
「ジュリア。そのくらいにしとけって。お前ら今日は一緒に探索しないか? オレ達も様子見に来ただけだし」
そろそろ剣士君の心が折れそうだし、ジュリアを止めて少年少女達を一緒にダンジョン探索に誘う。
初めてだろう探検が怒られただけじゃ可哀想過ぎる。
「本当ですか!?」
「お願いします!」
少女達はオレの提案にあっさりと乗ってきた。女の子は年のわりにしっかりしてるしね。現実を見て自分達だけでダンジョン探索が難しいのは理解したんだろう。
剣士君の名前はジム君。シーフ君はダット君。魔法使いちゃんはマルムちゃん。僧侶ちゃんはケイトちゃんだ。
みんな帝都に在住で、今日は親に内緒でダンジョン探索に来たんだとか。年齢制限はギリギリ引っ掛からないらしい。
「へぇ。ネズミにも魔石があるのか」
剣士のジム君は仲直りの切っ掛けを逃した子供みたいに無言のままだけど、空気スキルの光るシーフ君は倒したネズミから魔石を取り出していた。
この世界のダンジョンは魔物は倒しても消えないらしいが、アイテムボックスのスキルとか魔法の道具袋は希少過ぎて一般には出回ってないみたい。
なのでダンジョンでは高値で売れる魔石や部位に限定して持ち帰るんだとか。
生憎とアイテムボックスのスキルはないが、魔法の道具袋はオレ達は持ってるけど。ジョニーさんとウチのアンドロイドが未発見のダンジョンで見つけた物だ。
今日はそれに食料とか武器を入れて来てるが、他人に見せると騒ぎになるから気を付けるようにマルク君には言われた。
「……凄い」
「マジックアイテムだわ」
次に現れたのはまたネズミだ。今度は四匹。ジム君達に一匹担当させて残りの三匹はオレ達が担当したけど。
ロボとブランカは一撃で倒しちゃったし。楽しみにしていたクリスもレーザーガンで二匹を倒した。
ジム君達の方はさっきより動きがいいね。冷静になれば一匹の攻撃力は低いから倒せるレベルらしい。
某ゲームのス〇イムみたいなもんか。
「一階はネズミしか出ないの?」
「そのようです。ただ群れで出てくるので、意外に初心者には危険なようです」
ロボとブランカが口元を血で汚しながら褒めて褒めてと尻尾を振っているから、綺麗に拭いてやり褒めてやる。
二匹は自分達の力で狩りが出来て喜んでるね。
ジュリアはちょっと物足りなそうだけど、そんなジュリアが満足するような敵は一階には出ないって。
「あの、もしかして貴族様でしょうか?」
「ん? 違うよ。帝都の立太子式のお祭りを見に来た、ただの田舎者だよ」
それはいいんだが、少年少女達がやけによそよそしくなった。なんで貴族と間違えるんだ?
「でも。メイドまでダンジョンに連れて来るなんて……」
「違うわ! 私のお祖父様が商人なのよ!」
原因はメイドか。メアリーさんはクリス付きの本物のメイドだけど、エルは趣味でメイドの服着てるだけなんだが。
どう説明しようか少し悩んだら、クリスが半分忘れてた設定を話し始めた。
そういえば最初は商人という設定にしたんだった。
少し前の騒動の時に帝都でジョニーさんと一緒だったから、勇者の仲間ってことで結構知られちゃってるし、半分隠す必要無くなってたからなぁ。
噂って広まるの早いんだよね。特にオレ達目立つみたいだからさ。
今更だけどね。
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