第159話・初めての戦闘
翌日は帝都の街を出て近くの森に来ていた。
「いい。森の中は危険だから、周囲を観察して警戒をしなきゃだめだよ?」
メンバーはオレとエルとジュリアとケティに、すっかり姉妹のように仲良くなったお嬢様達と二人とロボとブランカだ。
オレ達と一緒に居るせいか、すっかり室内狼になりつつある二匹を、たまには外で思いっきり遊ばせてやろうと帝都の外に来たんだ。
ジュリアは二匹に森の中での歩き方や警戒の仕方を教えていて、二匹はジュリアの言葉を本能的な直感もあり、それなりに理解しているみたい。
「本当は森の中で生きるはずなんだけど、こいつらは家の中の方が慣れてるからな」
ロボとブランカは結構賢いので、トイレもきちんと指定した場所でするし、生まれて間もなくから馬車で旅をしていたせいか人にも慣れてる。
島にいた頃には島の森には連れて行ってたけど、島では魔物は時々動物が魔物化する以外は居ないから別物なんだよね。
暇さえあれば誰かが構ってるから、少し甘えん坊になってる二匹だけど、知らない気配がする森では日頃と違い精悍な顔立ちで辺りを警戒している。
「これは薬草。怪我をしたら食べる物」
ケティの方はロボとブランカに薬草や毒消し草などの野草や、食べられる木の実や茸などを一つ一つ教えていた。
別に自然に返す気はないけど、知らないと困るかもしれないからね。
「ゴブリンだね。いいかい、ロボは男の子だから正面からゴブリンの前に出て、隙を伺うんだよ。ブランカは背後から回ってゴブリンがロボに気を取られてる隙に倒すんだ。分かったかい?」
「大丈夫じゃと言っておるぞ」
「じゃあ行くよ。アタシが一体倒すから、あんた達は協力して一匹を倒すんだ。無理しちゃダメだよ」
そのまま森の中を薬草など採りながら歩いてると、二匹のゴブリンを発見した。
ロボとブランカは戦う気らしくジュリアを見て指示を待つ。
本当はお母さんから教わるんだろうけど、二匹にはお母さんの記憶はないんだろうな。
途中ミリーお嬢様が通訳しながら、ジュリアと一緒にロボとブランカは初めての戦いを始める。
まだ身体が成長途中の二匹にとってゴブリンは強敵だ。
でもゴブリンより先に海竜を見せちゃったからなぁ。
ジュリアは自らゴブリン一体倒すと、ロボとブランカの為にゴブリンを睨んで牽制してる。
オレ達の方でもレーザーガンで、万が一に備えてゴブリンを狙ってるけど。
まずはロボがゴブリンを前に、唸り声をあげてゴブリンの隙を伺う。
ああ、ブランカのやつ走ったらダメだって。ゴブリンに気付かれる。
そしてブランカが急いでゴブリンの背後に回ろうとしたせいで、ガサガサと草むらが揺れてゴブリンの注意がそちらに逸れた瞬間のこと。
ロボが動いた。
一目散に走ると、ゴブリンの首もとに噛みついた。
ただやはりまだ子供の力では致命傷を与えられずにゴブリンが暴れる中、今度はブランカがロボを攻撃しようとしたゴブリンの腕に噛みつく。
危ないと感じレーザーガンで助けようと何度も思ったが、エル達は二匹の戦いを見守り手を出さない。
クリスとミリーの二人も、今度ばかりはハラハラしながら見守っていたけど。
結果は数分の格闘の末に、二匹はゴブリンを倒すことに成功した。
並んで嬉しそうに勝利の雄叫びをあげる二匹に、オレ達は駆け寄り、ブンブンと尻尾が揺れるのを見ながらみんなで褒めてやった。
将来はきっと強い狼になると思うのは、親馬鹿なんだろうか?
先程の精悍な顔立ちが一気に子犬のような顔立ちになった二匹を見ながら、オレ達は無事で良かったと心から安堵していた。
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