第127話・逃走喜劇
「司令。ありました。微弱ですが特殊な魔力を発してます。恐らく発信器のような、マジックアイテムだと思われます」
「もしかしてわざと逃げるように、仕向けたんじゃないの?」
「そうかもしれません」
やっぱり皇女様には発信器が仕掛けられていたか。
もしかして逃げ出した皇女様が賊にやられるって筋書きを、ジョニーさんが邪魔したんじゃないの?
「ところで追っ手は撒いたのかの?」
「ウフフ。真下にいるわよん」
メイドさんは発信器に気付かなかったと落ち込んでるけど、皇女様は追っ手の方が気になるらしく、輸送機の窓から周囲を見ている。
どうやら逃げ出したと思ってるみたいだけど、実は追っ手はまだ真下にいるんだよね。
向こうが何を目印にしてどの程度の探知能力があるか調べていたけど、どうやらあまり正確な精度はないらしい。
周囲数百メートルの範囲で、竜騎士が真下の広野の草むらや岩陰を入念に探してる。
「おお! 凄いのじゃ!」
「さて、発信器どうしようか」
「壊しちまえよ」
「いや、攪乱出来ないかなって」
まさか真上に居るとは思わないらしいね。
出来れば何とかして攪乱してやりたい。
「ではこのまましばらく馬車程度のスピードで、国境方面へ移動してみますか? 何処まで引っ張れるか分かりませんが」
「そうしようか。ゆっくり話も出来るし」
結局オレ達はこのまま追っ手の真上から、国境方面へと移動してるようにみせることにした。
姿が見えないしすぐに故障だとでも思うだろうけど、時間稼ぎにはなる。
「なんか昔のコントみてえだな」
「わらわの命を狙う追っ手のはずが、兵達があわれに見えるのう」
必死に捜索する兵達の様子を放置して今後のことを話すことにしたけど、みんな下が気になるみたい。
苛立ったのか竜に火を吐かせながら、捜索してる馬鹿も居るよ。
これで助けに来た訳でないのも確かか。
「エル。どうしようか」
「殿下のお母さんと皇帝陛下に会うべきかもしれません」
「会うって殿下が?」
「いえ、ジョニーさんか私達の誰かがです。一度お会いして話を聞かないことには、どうしようもないかと。殿下のお母さんの故郷を守るために、帝国と戦争する訳にもいきませんから」
必死の逃走劇が何故か喜劇に変わったけど、状況はそこまで楽観できない。
悪いけど皇女様は子供で話にならないし、メイドさんはそこまで詳しく事情を知る様子もない。
結局オレ達で考えるしかないけど、エルは皇女様のお母さんと皇帝に会うべきだと考えたみたい。
それしかないよね。
でなくばお母さんを助け出して二人の死を偽装するか。
そっちの準備もしとく必要があるだろう。
皇女様の容姿をした身代わり人形でも作っておくべきだね。
「うむ。お主はロボでお主はブランカか。わらわはミレーユじゃ」
「うん? わらわはアレックスの嫁ではないのじゃ。アレックスはそんなに嫁が多いのか?」
「なんと凄いのう!」
「あの……殿下?」
「アレックス。お主も嫁がたくさんおるそうじゃな。やはり城の主よのう」
「実は、姫様の覇王スキルはいかなる種族とも会話が出来るのです」
「つまり、ロボとブランカと話が出来ると?」
「そうなのじゃ! 二人は温かいお湯に入りたいと言うておる」
オレ達がこの後のことを相談している最中、皇女様はロボとブランカと戯れていたと思ったら、普通に会話をしていたとは。
覇王スキルってちょっと羨ましい。
それはそうとロボとブランカに、オレには嫁は居ないと後で教えないと。
なんかつがいがたくさんいるとか、言ってそうでちょっと気になるよ。
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