第117話・大豆とくれば?

「豆を炒めるの?」


「ええ。炒めて粉にします。美味しいんですよ」


 クリスティーナ様が手伝ってくれるならばと、豆腐作りの為に大豆を水に浸した物の他にもフライパンで炒っていく。


 せっかくだからきな粉でも作ろうかと思ってさ。


 きな粉の作り方は簡単だ。


 大豆をフライパンで炒って砕いて粉にするだけ。


 どうせなら餅も一から作りたいけど、すぐには無理だし宇宙で製造した切り餅を使おう。


「それも凄いわよね。石臼要らないんだもの」


 表面が香ばしくなる程度に炒めたら、ミキサーで粉にするだけだ。


 クリスティーナ様は一緒に馬車で旅をしていた頃から電化製品を見てるから、ミキサーも知ってるけど何度見ても凄いって言うんだよね。


 この世界でもパンがあるし、製粉する場所や石臼なんかもある。


 ただ家庭だとやはり一苦労だからね。


「これは何?」


「餅と言って専用のもち米で作った物ですよ」


 ミキサーにかけた大豆を一回ふるいにかけたら、レンジで餅を柔らかくして砂糖と混ぜたきな粉と絡めるだけだ。


「私も食べる」


「わん?」


「クーン?」


 さあ食べてみようとしたその時、キッチンにはロボとブランカとケティが入ってくる。


 きな粉の匂いを嗅ぎ付けたらしい。


 ロボとブランカは新しい匂いに若干不思議そうにしていて、何々と興味津々だけど、まだミルク以外は早いんだよね。


 というか狼って餅とかきな粉食べるんだろうか?


「何これ!?」


 せっかくだからロボとブランカにはミルクをあげて、三人できな粉もちを食べる。


 ああ、懐かしの日本の味だ。


 今朝も普通に味噌汁と納豆食べたけど。


「美味しい! この大豆の粉が甘くていい感じね!」


「これがきな粉もち。小豆で食べても美味しい」


 クリスティーナ様も気に入ったみたいだけど、縦ロールのお嬢様が口元にきな粉を付けがら、餅を頬張るように食べる姿は少し違和感が。


 それからケティさんや。小豆が欲しいんだね。


 そんな期待した目で見なくても用意してあげるよ。


 補給物資用の缶詰の小豆もあるしね。


「司令。餅の追加が必要」


「お代わりか?」


「うん。それもあるけどみんな食べたそう」


 気が付くと村の子供たちが、窓からクリスティーナ様とケティが食べてる姿を羨ましそうに見ていた。


 ここでちょうだいと素直に入ってこないのは、この惑星ではそんなに食料事情が良くないからかな。


「よし。みんな入って来い。新しいおやつご馳走しよう」


「……本当に?」


「お金ないよ」


「体で払うのでもいい?」


「お代は食べ終わったら、みんなで畑の草でも取ってもらおうかな」


 甘いと言われるかもしれないが、子供にあんな顔をして見られて知らん顔は出来ない。


 子供たちにも餅をご馳走しようとするけど、遠慮したり妙なことを口走ったりする推定小学一年生くらいの女の子に苦笑いが出ちゃうよ。


 別にタダでもいいんだけど、あまり甘やかすのもいけないっていわれてるんだよね。


 それがこっちの人達の教育方針みたいだから、適当なお手伝いをさせることにしよう。


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