第116話・島での生活・その四
「へ~。結構いい麦だな」
「はい。ボルトンさんが気を利かせてくれたようです」
セレスに任せている、ヴェネーゼと往復している船が帰って来た。
村のみんなは船の帰りを喜び、運んで来た荷をみんなで降ろしてる。
荷の中身は麦と大豆などの食料にガラス瓶もある。
交易をしてる以上はこちらも物を買わないと長い目で見ると続かないし、村の主食用の麦と馬などの家畜の餌や比較的貧しい人が食べるという大豆を大量に買って来てもらった。
ガラス瓶は瓶詰め用で初回は宇宙で生産したガラス瓶にしたけど、次回からはヴェネーゼから取り寄せることにした。
海の魔物が思ったより高値で売れていて、お金が貯まってるからさ。
物は港の倉庫に入れておいて、必要に応じて村のみんなに分けている。
いずれ村のみんなの仕事と収入が安定したら、普通に売ることになるだろうけどね。
「お疲れさま。後はみんなで運ぶからゆっくり休んでよ」
「はい。ありがとうございます」
長旅を終えたセレスを一足先に休ませたオレと村のみんなは擬装ロボット兵と共に荷降ろしを続ける。
「来ましたね。さっそく始めましょう」
それと港の倉庫の一つを瓶詰めの加工場に改築したんだ。
元伯爵様のメイド長だった中年女性が中心となり、女性陣で魚の瓶詰めを作ってるからガラス瓶はそっちに運ぶ。
高級品だし手間もかかるからそう売れないかなと思ったんだけど、帝国の内陸部向けに需要が結構あるみたい。
うちの瓶詰めは油とか塩やハーブとかが、他より質がいいから評判は上々だ。
それと品質管理についてエルが教えてたから、味や品質が一定なのもポイントが高い。
品質管理とか大量生産とか近代的な生産システムが無いか、あっても広まってない惑星なので、ちょっとしたアイデアや手間がお金になる。
瓶詰めに関してはピンからキリまであるらしく、高い品質で評判がいい物から、とりあえず食べられればいいものまで様々あるらしい。
そもそも調味料の基本の塩ですら、品質が安定してないんだよね。
ワイマール王国では塩は戦略物資として商業ギルドが国から委託を受けて管理してるけど、海で作った塩や岩塩など物も様々だしタチの悪い商人だと砂なんかを混ぜることもあるみたい。
「ねえ、これどうするの?」
「ああ、豆腐でも作ろうかなって。前に食べましたよね?」
「ああ! あの白くてなめらかな食べ物ね!」
瓶詰めの方は女性陣に任せていいとして、オレは家に大豆の袋を二つほど持ってきている。
ロボとブランカと遊んでいたクリスティーナ様が、家に大豆を二袋も持ってきたオレを不思議そうに見てるよ。
基本的にこの辺りの人って、大豆をスープの具に使うくらいしかしないんだよね。
もう島での生活も一月になるので、クリスティーナ様とか村のみんなにも豆腐とか油揚げを何度か食べてもらったことがある。
そんなに美味しいっていう程でもないらしいけど、癖がないのでスープの具にはちょうどいいというのが、村のみんなの評価だ。
ただ何人かは醤油をかけて食べる冷奴が気に入ってくれた人もいる。
大豆があるなら豆乳とかもいいしね。
豆乳のスープとかならこっちの人達も喜んでくれそうだ。
今から大豆を水に浸しておけば、明日の夕食には豆乳と豆腐が間に合うかな?
「そのまま食べるよりは美味しいわよね」
「大豆は安いんですよね。こっちだと。もっといろんな料理に使えますよ」
「私も手伝うわ!」
最近クリスティーナ様って、本当に子供らしく笑うようになった。
余計なプレッシャーとか気負いが、無くなったからだろうけど。
やっぱり子供はこうでないとね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます