第73話・昼食と町ぶら
やはりオスカラの町は鍛冶をしている金属を叩く音と、石炭かコークスを燃やす煙があちこちから見られる中世というには少しだけ文明が進んだ印象のある町だった。
身長が一回り小さいのにがっしりとした体格のドワーフ達が店番をする姿が見える。
「お昼は何にしましょうかね」
「ここにはもう一つ名物があるのよ!」
クリスティーナ様はどうもお目当ての店があるらしく町の職人達が集まる地区に来たようだが、そこはごく普通の町の大衆食堂みたいだった。
「へ~。これはまた」
店内は大半がドワーフだが他の種族も居てお昼時ということもあり賑わっているが、目を引くのはズルズルと音を立てて麺を啜る人達だ。
「ここはね! タクヤ様が自ら料理を手解きした店なの」
何故か自分の事のように自信満々で語るクリスティーナ様が案内してきたのはうどんの食堂のようだ。
「確かに美味いですね」
「うん。美味しい」
少し細めの麺だけどコシもあるちゃんとしたうどんだよ。
魚介系の出汁と野菜の出汁のスープを塩で味つけしていて、うどんにスープの味が少し染みてるのもいい。
具は少し多めの野菜と少し甘辛い肉があって食べごたえがあるのは周りで働くドワーフ達の好みかな。
失礼ながらうどんモドキかと疑ったんだよね。
きっと醤油があれば本当に日本と変わらぬうどんになる。
教わってから代替わりしてるだろうに、日本食に慣れたオレ達でも納得の味を出すなんて凄い。
熱々のうどんをフーフーとしながらズルズルと一気に啜った時の美味さは格別だ。
日本だと気軽に食べられるうどんだけど、この惑星でもあるんだね。
野菜と肉も頬張るとスープの味が染みてて、そこに更にスープを飲むと本当日本的な味が口の中に広がる。
白い小麦粉もあるんだね。
これに七味があれば完璧だったんだけど。
食後は町の鍛冶屋を少し回ってみることにした。
武器は要らないんだけど技術レベルとかどんな物作ってるのかとか、ここまで来たら見物したいからね。
「あら、可愛いですね」
「本当だわ! しかも安い!」
何件かの鍛冶屋を見て回り刃物や日用品なんかを見たあとに、女性陣が興味を示したのはアクセサリー屋さんだった。
「お嬢ちゃん貴族様か? 王都に比べればかなり安いぜ」
宝石の付いた物から銀製品や高いのだとミスリル合金なんてのもある。
指輪にネックレスに髪飾りといろいろあるようで、クリスティーナ様とメアリーさんを含めてあれこれと着けてみて騒いでる。
エル達もこういうの興味あるんだな。
ゲームだとアクセサリーを気にするとかあんまりなかった気がするな。
「買っていこうか?」
「そんな私達はこう言うのは……」
「いつも世話になってるしお金はあるんだしさ」
ジュリアは日頃から喜怒哀楽が激しくお酒なんかを欲しがるからあれだけど、エルがミスリル合金で出来たペンダントを何故かじっと見てる。
まん中に小さな赤い宝石が付いていてセンスが良さげなやつだ。
確か宝石も宇宙要塞には原石や人工製造した奴が大量にあるけど換金用でアクセサリーじゃないんだよね。
「私も欲しい」
「えーと、なら一人一つね」
アクセサリー屋のドワーフが少しニヤニヤしながら見るもんだからいつの間にか注目を集めてるし、ケティやクリスティーナ様までもが、まさかエルだけじゃないよねと見つめてくるし。
「あの、私は本当に……」
「受け取ってよ。今更止めたじゃ格好つかないよ」
「……はい。ありがとうございます。大切にしますね」
赤い小さな宝石のペンダントはエルの乳神様の谷間をより一層引き立てていて、しかも嬉しそうにニッコリと微笑まれると言葉もでなくなる。
「兄ちゃん若けえのにやるな! 全員嫁さんか?」
「いや、そういう訳じゃ」
もしかしてこの国は一夫多妻か?
近くにいたドワーフのオッサンったら何故か背中をバンバンと強い力で叩いて来て、褒められるように声をかけてくるけどなんでだ?
「ドワーフ族は妻を多く持つ者は尊敬するんですよ。養うには力や財力がなければできませんから」
オレの疑問を感じたらしいメアリーさんがドワーフのオッサンの行動を説明してくれるが、妻じゃないんだってば。
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