第62話・防衛戦の終わり
「流石は将軍閣下。僅か五人でこれだけの魔物とオーガを倒すとは」
「後始末をさせてすまんの。後は任せてよいか?」
「もちろんです。父に代わり礼を言います」
討伐隊が到着するとオレ達と伯爵様達は村に帰還した。
討伐隊を率いてきたのは領主の三男という男だったが、彼は下半身が立ち尽くしたままのオーガに驚きの表情を浮かべて伯爵様に世辞を言うが伯爵様はあまり詳しく語ることなく後始末と残党の始末を討伐隊に任せていた。
「さて。ジュリア殿。そなたがオーガと魔物の群れをほとんど一人で倒したこと言う方がよいか。それとも言わぬ方がよいか?」
「出来れば黙っててくれると嬉しいね。アタシ達は地位も名誉も欲しくない」
「やはりな。ならばあの場のことはワシらの胸に収めておこう。村からは細かくはみえんじゃろうしの。あとは連中が勝手に誤解するじゃろう」
ただ伯爵様が村に入る前にジュリアに事の真相をどうするかと尋ねたのは流石としか言いようがない。
伯爵という地位で将軍職にまで登り詰めた理由が分かった気がした。
権謀術数渦巻く貴族社会を生き抜いて来た眼力とも言えるのかもしれないが。
討伐隊の半数近くは冒険者でありすでにオーガが三体も倒されてると知ると驚く者や悔しがる者も居たが、伯爵様が居たと知るとみんな納得した。
将軍職は引退したし全盛期の実力はないとはいえ英雄と言われる伯爵様一人が居たと言うだけで納得するのだから凄いとしか言いようがない。
「いや、全力を出すとスッキリするね」
村の防衛と残党の掃討に周辺の調査などまだまだやるべきことは多いが全ては討伐隊に任され、オレ達は伯爵様達と一緒にゆっくり休むことが出来るようになった。
伯爵様とオレ達には女子供が家に戻った為に村長さんの家に移ることになり伯爵様や騎士も流石に疲れたようで部屋で休むことにしたようだが、一人だけ元気なのは久々に全力で暴れてすっきりした表情のジュリアである。
ギャラクシー・オブ・プラネット時代には戦闘民族とかバーサククイーンとか物騒な二つ名があったのを思い出すね。
エル達は馬車のシャワーで汗と血の匂いを落とすとようやく一息ついたようでロボとブランカと戯れてるけど、本当この時間が幸せを感じるよ。
その後討伐隊は夕暮れになるとこの日の調査や掃討は終えて村に戻っていたが、元々大きくもない村に伯爵様やオレ達に百人近い討伐隊の人数は多すぎるようで宿屋は雑魚寝状態であり酒場の床から馬小屋まで提供してなんとか討伐隊の人達が雨露を凌げるようになっていた。
オレ達は馬車があるから部屋を開けようとしたけど村長さんに押しきられる形で一部屋使わせてもらうことになった。
伯爵様の連れを追い出す真似は出来ないし村を守ってくれたオレ達を追い出すなら自分達が外で寝ますと言われると要らないとは言えるわけがない。
「宴ですか?」
「はい。何もお構いできませんが肉だけは腐るほどあるので」
まだオーガが居る可能性はゼロではないが討伐隊の調査でも少なくとも近くには居ないということが判明したらしく、この日の夜に村の人達が宴を開くので来てほしいと言われて正直驚いた。
昨日の今日で宴を開くタフさは驚くがこの惑星では魔物の襲来は日本でいう台風や地震のような感覚なのかもしれない。
「行く」
「いいわね。お金出すからお酒も頼めないかしら?」
「もちろんお酒も出しますよ。お代なんて結構です。村にあるお酒は全部飲んで頂いて構いません」
宴と聞きケティとジュリアは即答で行くと答えてる。
正直大変だったし飲んで食って騒ぎたいのだろう。
「皆さんのおかげで村も犠牲者が出ませんでした。本当に本当にありがとうございました」
最後に村長さんは少し涙ぐみながら何度も頭を下げて礼を言っていて、オレ達は自分達が守ったモノの大きさを改めて感じていた。
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