第53話・お嬢様と侍女さん馬車に驚く
伯爵様と共に行くことになり旅路はますます安全になった。
伯爵様とクリスティーナ様の乗る馬車にオレ達の馬車が続き最後尾に荷馬車が続くので結果的にオレ達の馬車も伯爵様の兵達に守られる形となったからだ。
「まあ。この馬車も素敵ですわ」
「本当ですね。凄いです」
そしてクリスティーナ様がロボとブランカと一緒に居たいからと侍女さんと共にオレ達の馬車に乗ることになったが、二人が驚いたのは見た目と違い快適な空間になってるオレ達の馬車だった。
一応レーダーは切りモニターは収納して隠したが後は特に隠しようもなくそのままだ。
ただマジックアイテムは高価だがボルトンさんの屋敷にもいろいろあったし、一部は富裕層以外にも普及してるのでキッチンやシャワートイレはマジックアイテムで誤魔化せそうなので心配はしてない。
実際のところ貴族以外が馬車に快適性を求めるのは余程の大商人とかじゃないといないのかもしれないが。
馬車の御者は交代ですることにしてまずはジュリアが御者台に座っているなかでの出発だ。
「可愛いですわね」
出発するとクリスティーナ様は相変わらずロボとブランカが静かに眠る姿や時おりピクッと動いたりするのを楽しそうに眺めている。
生存競争が激しい世界だし馬や家畜はともかく、いくら貴族とはいえ犬や狼をペットのように飼うことはないのだろう。
侍女さん共々馬車に驚いてはいたが、クリスティーナ様の方は育ちがいいからか馬車の内装を気に入った程度で驚きが大きいのは侍女さんの方だろう。
尤も裕福な家の人間だくらいに驚いていて不自然には感じてないようだが。
「なるほど王都では社交界デビューなのですね」
「ええ。今から楽しみなんですの」
馬車の中ではクリスティーナ様の王都訪問の理由など話をしていたが、この国の貴族はある程度の年齢になると国王陛下主催のパーティで社交界デビューするのが慣例らしくその為の旅だという。
女の子は誰でも一度はお姫様に憧れるというしクリスティーナ様はちょうどそんな年頃なのかもしれない。
「この馬車は揺れませんね。何故でしょう?」
「私達の故郷の人が作ってくれたんですが、揺れを吸収するようにしたと言ってました。私達にもあまり詳しいことは分かりませんが」
一方侍女さんの方は似たようなメイド服を着たエルに親近感でもあるのか話をしていたけど、馬車の乗り心地の違いにすぐに気付いたみたい。
まさかSFの技術だと言えないしね。
ただ、ゴムタイヤとかサスペンションとまでは行かなくても既存の技術範囲で揺れを抑えられる物を広めるのもいいかもしれない。
「クッキーでも作りましょうか。お昼をご馳走になったお返しに」
「凄い魔導コンロですか!?」
エルと侍女さんは気が合うのかそのまま小さなキッチンで二人でクッキーを作り始めた。
侍女さんが勘違いした魔導コンロとはマジックアイテムのコンロらしくボルトンさんの屋敷にもあった。
利点は薪や炭などなくても調理できることで、欠点はエネルギー源として敵性生命体のエネルギー結晶体である魔石が必要なことか。
単純な単価は土地により様々で森や木がない地域では、多少本体が高価でも村にでさえ一台はある程らしい。
要は薪や炭より魔石が安い地域にはそれなりに普及してるし、逆にこの辺りのような森があちこちにある場所ではあまり普及してないとヴェネーゼで聞いた記憶がある。
まあ家畜の糞やら敵性生命体の糞やらで燃料にする地域もあるらしく、貧しい庶民が持ってる物ではないらしいが。
「こんな馬車初めて見ました。盗まれませんか?」
「一応盗難防止の仕掛けはあるんですよ。ただそこまで馬車を離れたことは今まではまだ無いので」
「村よりは町の方が気を付けた方がいいですよ。町だと手癖の悪い人も多いですから」
「やはりそうなんですね。ヴェネーゼでは海賊退治の件でしっかりしたお屋敷に泊まってましたから」
侍女さんはクリスティーナ様のお付きらしく礼儀作法から世情にも詳しいようで、クッキーを作りながらエルにいろいろアドバイスをしてくれていた。
ちょっとした田舎者の小金持ちとでも思ったんだろう。
実際オレ達は世情には未だに疎いし。
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