第50話・伯爵令嬢とロボとブランカ
「将軍閣下にまでなったって聞いたけど、そんな伯爵様が自ら盗賊退治をするのかい?」
「ワシは今まで多くの部下や兵を死なせた。ワシより若い連中ばかりを。それ故にワシはその者達に恥じぬ生き方をせねばならんのじゃ」
そんな貴族が自ら少数の兵を率いて盗賊退治をしにいくという話に興味を持ち少し無礼にも感じる口調で突然口を挟んだのはジュリアだった。
少し無礼にも感じる口調にも伯爵様はやはり気にした様子はなくジュリアの疑問に率直に答えると、その答えにジュリアが気に入ったとでも言いたげな満面の笑みを見せた。
「いいね。アタシも付き合うよ」
「私も行く」
「剣士殿と魔法使い殿もか? 見たところかなりの使い手のようだしワシは助かるがいいのか? 相手は小悪党ゆえ腕前に見合う報酬は出せぬが」
「昼飯前の軽い運動に報酬は要らないよ」
ファンタジー好きなジュリアは伯爵様が関わっても問題ない立派な人だと理解したからか、率先して盗賊退治に参加すると言い出すとあまり荒事を好まぬケティまで何故かやる気になってるし。
「では行くか。 隠れ家は森のなか故、馬車は使えん。お前達はここで待っておれ」
伯爵様は部下二人にジュリアとケティを引き連れてさっそく盗賊のアジトへと向かっていくが、孫を乗せた馬車に兵の大半はこの場に置いていくらしくオレとエルもジュリアとケティの帰りをここで待つことにする。
「うわ~。可愛い!」
天気もいいのでちょうど起きていたロボとブランカを抱き抱えながらたまには自然の風を感じさせようと連れ出すと、お付きの侍女を従えたブロンドヘアに縦髪ロールの十才くらいの可愛らしい女の子が寄ってくる。
昨日ケティが治療した伯爵様の孫のようだ。
「触っていいかしら?」
「ええ。優しく撫でる程度でしたら」
好奇心旺盛な年頃なんだろうし服も一般の人達とは違いかなり上質な物なようだし、狼の子など見たことがないのだろう。
「温かい。これは狼なの?」
「はい。森で母親が亡くなったのに出くわしましてね」
まだ目もほとんど開いてない狼の子に興味津々なお嬢様に侍女さんはハラハラしながら見守るが、流石に止めるほどではないらしい。
恐る恐るオレが抱くロボに触れたお嬢様はロボの温もりと可愛らしさに瞳を輝かせた。
「あら何かしら?」
「あー、そろそろミルクの時間ですね」
しばらくお嬢様はオレが抱き抱えるロボとエルが抱き抱えるブランカを眺めていたが、クーンクーンと鼻を鳴らすように鳴き始めたのでオレ達はミルクを与えるがお嬢様はその様子をも楽しげに見続けてる。
「寝ちゃいましたわね」
「寝るのも大きくなる為の仕事なのですよ」
青空の下でお腹いっぱいになったロボとブランカは寝てしまったので籠に戻して馬車に乗せるとお嬢様は少し名残惜しそうだった。
「ねえ、何か旅のお話をしてくださいませんか?」
「まだ始めたばかりの旅なのであまり面白い話はありませんが、それで良ければ……」
しかしその時ちょうど侍女さんがお茶を入れたようで、オレ達はお嬢様に誘われるままに旅のお話をしつつ紅茶を飲みながらジュリアとケティを待つことになる。
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