第23話・海賊のアジトでの戦い
ジュリアとセレスとロボット兵は近くの陸地に降ろした。
オレはエルとケティと共に船の操舵室にあるモニターにて、海賊達のアジトを無人偵察機と虫型偵察機で監視しながら、ロボット兵の内蔵カメラの映像で彼女達の進軍の様子を見守っていた。
これらの映像の他に大気圏外には支援艦隊も常時待機していて、万が一の際には命令ひとつで大気圏外からの攻撃も可能だし、大気圏内に援軍の艦を送ることも可能だ。
最終的な命令権はオレにあるが、本格的な軍事作戦に近い本作戦は判断ミスが許されない。
従って現段階ですでに要塞シルバーンの中央司令室に、命令権は委任していてオレ達は見守るだけになっている。
最優先は友軍の安全確保であり、次点で人質となっている人達の救出になり敵の海賊と傭兵は生死を問わずとしていた。
「司令は人情家?」
「そんなつもりはないけどね。昔助けてくれた恩人に言われたんだよ。いつか余裕が出来たら、出来る範囲で誰かを助けてやれってね」
日が傾き西の空がオレンジ色に染まる頃になると、上陸部隊は海賊達のアジトをいつでも急襲出来る場所に到着して、レーションにより少し早いがささやかな夕食にしている。
ケティはそんなジュリア達を見守るオレに、久しぶりに口を開き一つの疑問を投げ掛けてきた。
ギャラクシー・オブ・プラネットでは基本的に作戦指揮から戦闘までアンドロイドに任せていたし、アンドロイド以外のプレイヤーやNPCとは関わらないようにしてたからな。
ケティからすると少し意外だったのかもしれない。
ただこれがリアルなんだと思うと、どうしても昔を思い出してしまう。
両親が亡くなりクズみたいな親戚に、全てを盗られかけた時のことや助けてくれた恩人のこと。
自分やアンドロイド達の命まで賭けて誰かを助ける気などないが、ジュリアやセレスはギャラクシー・オブ・プラネットでも最高ランクの戦闘型アンドロイドなんだ。
魔法だか何だか知らないが、こんな辺鄙な場所で人を騙し討ちする程度の連中など、本来は人質救出を考慮しても一人で十分な程だ。
ならば少しだけ手を伸ばして、理不尽な運命にも負けじと戦う者を助けるくらいはしたいと思ってしまった。
そして作戦時刻となる翌日の午前二時。
ボルドンさん達が乗り込んだ海賊船が本拠地から見える位置に現れると、海賊達のアジトの見張りが騒然とし始め、寝ている海賊や傭兵達を起こし始める。
「対応が早いですね。何か帰還の際には合図でもあったのでしょう」
アジトからは深夜なので海賊船の乗組員まで見えないのだが、慌ただしく仲間を起こし傭兵を含めて船を繋ぐ桟橋から見えない位置に隠れて息を潜める。
「本来ならボルドンさん達が先手のはずなんだけど」
「ダメですね」
ボルドンさんとの作戦では先にボルドンさん達が海賊達のアジトに雪崩れ込み、混乱したところでジュリア達が突入するはずなんだけど。
それではボルドンさん達が殺されてしまうだろう。
突入のタイミングは早くても遅くてもダメだ。
要塞シルバーンの中央司令室からの作戦開始の合図は、海賊船が桟橋に着く直前だった。
まずはセレスがロボット兵の半数を率いて、奴隷にされてる人達が押し込められてる元漁師の家と周囲を警戒していた海賊達を始末し人質の奪還をする。
そして海賊と傭兵達が異変に気付く前に、ジュリアとロボット兵は手榴弾をあちこちに投げて派手に動き始めた。
「ボルドン! 罠だ! 砲を使え!!」
次々と爆発する手榴弾に海賊と傭兵達は隠れてることが出来ずに混乱し、海賊船のボルドン達も戸惑った様子を見せてる。
しかしジュリアが大声でボルドンさんに罠であることを告げて大砲を使うように叫ぶと、海賊達は早くも逃げ出し始めてしまい、傭兵達ですら海賊船を狙う者とジュリア達襲撃者を狙う者と逃げ出す者に分かれて統制が取れなくなる。
手榴弾はギャラクシー・オブ・プラネットでは初期から買えるごく普通のTNT爆薬を使った代物で、生体強化されたプレイヤーには無傷となるレベルの初期武器だ。
でも破壊工作に使ったり出来たし、生体強化もされてなくバリアもない今回のような相手には効果が抜群だったな。
ボルドンさんもジュリアの意図を理解したようで、海賊船に迫る傭兵達を大砲で粉砕した後に、乗組員達と共に海賊船を降りてジュリア達の援護に回る。
一方のセレスは人質の守りをロボット兵に任せつつ、自身は逃げ出した海賊達や傭兵を無力化しており、奇襲により連係出来なくした海賊や傭兵など物の数ではなかった。
最終的にボルドンさんの乗組員が軽い怪我をしたが、友軍にも人質にも犠牲者はなく、作戦はほぼ完全勝利と言って間違いない結果となった。
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