第二部 「資金調達と返済方法」

さあ、ここからは、お笑いネタ初の三部構成の二部やねん。ここまではお前が知らない間に携帯電話料金の支払いが『超えたらリボ』に設定されとって借金が113万に膨れ上がって金利が15%もあるって話やったな。

お前、その113万円どうするん?

分割で払ういうても元金も減らしていこう思たら月々の支払いが太うなってしもうて、生活苦しゅうなってまうんとちゃうか?

中途半端に払うていっても元金は、一向に減らん上に利子は、毎月ついてくるからな。


よう分かってきたな、お前。


まるで、リボの蟻地獄やな。登っても、登っても上まで辿りつかへんのや。


じや、どうすんのや?


払う。


払うて、お前、113万円やで。お前が扱える金額とちゃうで。サラ金から借りとったらもっと酷い目にあうで。


払う。払わな俺のボーナスの3.75倍を取られるんやで。もう証券会社電話した。


証券会社? なんかお前に似合わん言葉やな。


『どこ』て言われへんのやけどな。ここにはな、一発で電話繋がったわ。しかもここは、指名も出来るんや。もし、その子がおらへんでもな、『なんやったら、私が話聞きましょうか? どんなご用件でしようか?』って言うてくれるん。若くて可愛い子がな。ようけおるねん。


ちょっと待て、以前、どっかで騙された時と状況似てへんか?


大丈夫やて、可愛い子ばかりやけどな、声しか分からん。顔は、見た事あらへん。


見たことないんかいな。


いや〜、でも可愛いと分かる。『どこ』て言われへん通信大手みたいに自動音声の連発なんてしいへん。生身の人間が喋ってる。なんやったら俺の冗談も聞いてくれる。この前のお姉さんなんて、俺の『だって117が可愛い過ぎる』読んでくれとったわ。なぁ、あったかいやろ、この子。あれ、ダッチワイフの話やで。


ダッチワイフの話やったんかい? しまった。俺、見逃しとったわ。面白そうやんけ、今度見とくわ。


おおきに。

そんでな、その証券会社のお姉さんな、聞いてきおるねん。


『それで、いくら必要なんですか?』ってな。

カッコいいやろ。なんか俺に貢いでくれる恋人みたいやろ? それでいて可愛いんやで。声で想像してな。

俺、言うたがな。『120万や』ってな。俺もカッコいいやろ? 


カッコいいやろって、なんかお前、夢の中の話しとらんか? お前が証券会社にお金もっとるわけないやろ。


それがな、もう、何年も前の話なんやけどな、この証券会社の女の子からな、突然電話かかって来てな、舞さん、言うんやけどな、芸能人みたいな名前の子やねん。


なんかお前、証券会社やのうて、どっかの飲み屋のクラブの話してへんか?


その子がな、言うねん。

『これからは、ロボットの時代でっせ、ロボット関連の株、集めた投資ファンド買いまへんか?』ってな。

ちょっと声がかすれててな、少しは、お酒付き合えまっせぐらいの絶対、美人やねん。もう、ツボやったわ。それが判断基準やったわ。即答やった。

『買います』言うたわ。たまたま入っとった保険金50万円分な。今は、それが3倍になっとったんや。

美人に従ごうとって良かったわ。


凄いな、お前。判断基準が見えてもいない電話の相手が美人かどうかなんか?


いや、美人かどうかというよりも、可愛いかどうかやな。


何、言ってるんや。とにかくお前は、見た目美人の女に従って損した100万を見えてもいない美人に従って儲けた100万で埋めようとしてるんやな。

なんか世の中分からんな。『捨てる神あれば拾う神あり』ってことか? なんか違う気がするな?


まあ、ええ。とにかくお金の準備は、これで出来たんや。入金される日も決まったがな。あとは、支払いの方法やねん。

これは、ショップで払えへん決まりみたいなんや。また、カードセンターへ電話して払い込み方を聞かなあかん。


また、電話かいな。あの自動音声がぎょうさん出て来て、カード番号打って、暗唱番号打って、それで、電話が混み合ってます。って切られるところな。この前8ヶ月かかってやっと繋がったわ言うとったところな。大丈夫かいな?


そうやろ、利子どんどん取られとるしな、早く払ってしまいたいわな。しかも113万やわ。上手く電話繋がって振り込み方教えてもろうたとしても俺の扱える金額と違うがな。ATMで、あっ、しもうた。違うところへ送ってもうたという訳にはいかんしな。電話で振り込み先の口座番号教えてもらうだけでは、俺、耳遠いから間違ごうてメモするかもしれしな。不安やわ。


そうやな、そら、危ないな。違うところへ振り込み間違いあり得るな。ショップとかで現金持って行って払えんのかいな?


俺もそう思うてな、ショップへ行ったがな。苦情言いに来たと思われんよう怒りの気持ち目一杯抑えてな。電話料金の相談をしたいとだけ言うてな、『超えたらリボ』の件とは一言も言わずな、苦情や思われて予約もできんかもしれんからな。


予約出来たんかいな?


出来たがな。日曜日の夕方の人の少ない時間帯を狙って行ったがな。最悪、喧嘩するかもしれへんしな。元はと言えば、そのショップのお姉さんが『超えたらリボ』2万円というアンバランスな設定して、知らん顔しとったんやからな。


おお、遂に喧嘩かいな。ショップのお姉さんに手を出して逮捕かいな? 難儀なや。いや、お前負けるな。弱そうやわ。お姉さんにも負けるわ、諦めい。


分かっとるて、お姉さんにも勝てへんわ、口喧嘩でもな。相手してくれたんは男や、副店長って言うとった。こっちの殺気が伝わってしもうとったんやろな。こちらがなんて言うても怒らんような腰の低い人やったわ。


お前、なんか文句言うたんか?


言うたで、怒鳴ったり、大きな声出さんよう注意しながらな。向こうは、一応ちゃんと話を片膝ついて、聞いてきたからな。さすがは大手やな。苦情には慣れてる感じやったわ。ちゃんと店長の研修の中にあるのやろうな、苦情対応。

当時、受付けたスタッフも、もうおらんし、自分も来たばかりです。2011年のスタッフは、誰一人残ってません言うとったわ。その頃の俺の電話料金も分からんて。

なんて言うかな? 『死人に口無し』みたいな作戦やな思うて、少し腹立ったけどな。副店長が上手いこと対応するからな。堪えたわ。


まあ、喧嘩しても勝たんしな。それで、ショップで払えんかって話どうなったんや?


  ああ、やっぱりダメやったわ。ショップが出来るのは、カードセンターに俺がやったように電話して、繋がったら『繋がりましたで、お客さん話してくれなはれ』と電話、代わるだけらしいわ。なんでやろうな? 『超えたらリボ』に設定したのは、ここのショップやのにな。


カード会社が間に入ってるからやろな。

『代金、俺らが立て替えとくから利子や元金の取立ては、俺らに任してくれ。力ずくでも取ったる。但し、利子だけな。元金返されたら利子取られんようになるしな、あははは』って、昔のサラ金の取り立て屋みたいなこと言うとるんやろな。


そうなんか? 

気づかんやったわ。 そんな古いやり方やったんか。

そう言えば、今は、大手の銀行でもサラ金みたいな高金利で金、貸しとるもんな。サラ金とどこが違うねん? と思うもんな。

なんちゅうかな、日本、第二次産業から第三次産業にシフトして、三次産業に従事する奴らが増えたんやろな。しかも奴らの方が給料が高いときてる。なんも生産を生み出さない、言い方悪いけど、衣・食・住の為にはあまり必要ないようなな、そいつらに給料払う為に俺ら安月給の製造業をやってる人間から

まるで詐欺みたいなカラクリでお金、搾り上げるんやな。これは日本の産業の構造上の問題やな。


おい、えらいでかい話になっとるな。

お前がちゃんと確認しとらんやっただけとちゃうんか?


いいや、俺は悪うない。社会が悪い。

そうでも言わんとこの会社が責められるやろ。他の会社も同じようなことしてるかもしれんしな。


なんでお前、113万円も取られたのにその『どこ』って言えへん会社がばってるねん?


圧力怖いからな。駆け出しの漫才師も作家も屁みたいに飛ばされるやろからな。

カード会社の社長出て来い、言うても出て来んやろしな、電話も繋がらんのやからな。この漫才でお前やみんなに聞いてもらうしかない。

もしも、俺とお前が東京湾浮かんどったら、みなはん、察してや。


おいおい、俺まで道連れにせんでくれ。


大丈夫やて、お前も俺もマークされるほど売れてへんって。


怖いわぁ。


そんなこんなでな、軽く文句だけ言うてな。ショップ後にしたんやな。まあ、どうにもならん思うとったけど、事務所のお姉さんも『いっぺん、ショップ行って相談して来い』言うとったしな。顔はたった。


なんや、顔たてに行ってただけやったんかいな?


そやな、だからあとは、支払い方法を間違えんように教えてもらわなあかんな。緊張するで、また電話せなあかん。証券会社からのお金が入るのは、一週間後の月曜日や。それまでになんとか電話繋いで教えてもらわなあかんな。


また、電話かいな。難儀やなぁ。


かけたがな、翌日の朝からな、自動音声と

4回話して、4-6-1-6と入れてな、そこまでたどり着いたら16桁のクレジット番号入力や、間違えんように緊張してな。成功したら今度は暗証番号や、それで『ただいま電話がたいへん混み合ってます。時間をおいてお掛け直しください』と切られる。数えたら時間を空けて夜まで11回電話して全部だめやったわ。前回繋がった時のように18時から20時までやったら担当帰ったってもうてるけど後日電話してもらうって手にも期待しとったけど、この時間帯も全くだめやったわ。



だめやったんか。酷いな。不本意ながらも波風立てんよう、113万円も払おうとしてるのにな。日々、高利率の利子が付いてきてるのにな。どうなってるんやねん?


そんでな、翌日は、11月3日の文化の日やがな。祝日は、問合せ出来んとは書いてないからな、繋がるかもしれへんし、休みやろうと思うて電話せん人もおるやろうから競争率が減ってチャンスかもしれんと、構えたがな。受付開始時間の10時ジャスト、1秒も遅れんとリダイヤル押したがな。

先ず、はやっぱり自動音声やな、4、6、1、6やがな。そして、16桁のカード番号な、ここで押し間違えたら1秒も遅れんと電話したことが水の泡やがな。だからって、ゆっくり押しとったら他の奴らにその間に越されてしまう。緊張したがな。


そこで追い越されたりするんかいな?


 受付の席が5個あってな、電話がそれぞれ1台ずつ置いてあるんやな、その奥にそれぞれ自分の電話を持ったお姉さんが5人控えて、電話が鳴るのを待っとるんや。受付の席は5個しかあらへん。先にたどり着いた奴しか使えへん。先着5名やな。そこにたどり着く為にみんな必死や、4つのゲート潜ってな、16桁の番号間違えんように押してな、暗証番号を本部の係の人の耳もとで囁いてな、まるで、運動会の障害物競走や。緊張するやろ? イメージ出来たか?


なんや運動会やったんか?

ああ、なんとなくイメージ出来たわ。


繋がったがな、5着で受付の席着いたがな。恐る恐る受話器を取ると呼んでるがな、生身の人間をな。


遂にかいな、生身のお姉さんと会えるんやな。


会えへんで、電話で話せるだけや。

スマホ、スピーカーにしてメモを取りながら話したがな。「リボの残高全額払いたいんやけど、どないしたらいいっすか? ショップとかでは、払えまへんか?」ってな。


ショップでは払えん事知ってだけど念のため訊いたんやな?


そや、113万とか間違うて、他のところへ払い込んでしもうたらえらいこっちゃからな。そしたらな、


『ショップでは払えません。カードを使って払い込む方法か、口座へ指定された日に振り込む方法、もしくは、指定の口座から12月の引落とし日に引き落とすって方法が有ります』って言うとったわ。うる覚えやけどな。早口やし、メモ、追いつかんし、緊張しとるしな。


向こうは、お前が年寄りやし、耳遠うて、よう分かってへんって顔、見えとらんしな。どんどん喋ってきよるな。


まあ、年は向こうにデータあるけどな。

そんでな、12月に俺の口座から引き落とされるという手が1番確実なんやけどな、あと1ヶ月先や、ざっと年利15%で計算するとな、1ヶ月で1万4000円や。


1万4000円も? さすが『どこ』て言えへん悪徳カード会社やな。


そやろ、113万円も取られた上にここに来てまあ更に1万4000円も取られるやなんて嫌やんか。一刻も早く完済したいやんか。


そうやな、早い方がええな。


証券会社からの金がな、11月7日の月曜日に入るって分かっとったからな、「11月8日に払います」言うたがな。


おっ、間髪入れずって感じやな。男らしいわ。カッコいいで。


やめてや。回転悪い頭で考えてそうなったんや。そんでな、振り込み先口座番号聞いてな、丁寧に書こう思たけどな、ボンボン言ってきおるからな、メモぐちゃぐちゃや。間違ごうたらえらいこっちゃ。

『どこて言えへんカードを使ってATMで振り込んだら手数料かかりませんよ』

「でも、ATM一回で扱える金額50万円まででんな?」

『分けて振り込めばいいです』

てな会話してな。


ATM、50万しか入らへんもんな。50万、50万、13万と3回せなあかんな。そう考えたら、お前の113万って、とてつもない金額やな。



そやろ。だからその方法もう聞かへんでな、

「ネット銀行から振り込んでも大丈夫ですか?」って訊いたわ。


お前ネット銀行持っとるんかいな?


サッカークジのtoto買うからな。

そしたら『大丈夫ですよ』と言うてもろてな。送金履歴も残るし、ネット銀行に決めたわ。

そんで、送り先口座名義な。ここでは『どこ』て言えへんけどな。ネット銀行やったら送り先口座番号入れたら出てくる言うとったわ。

これでもネット銀行の方が安心やな。口座番号入れ間違えてないか確認出来るもんな。


そう、これで送り先と送り方は、決まった。これを日にち限定11月8日の3時までにやらなあかん。また緊張やがな。この日にしくじったらまた電話かけるところからまたやり直しやがな。決戦は11月8日や、会社休んででもやり遂げなあかん。


お前のボーナスよりこの利子の方が高いもんな。



つづく

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