【新装版】悪役令嬢が黒猫に獣化したら、嫌われるはずの王子が寄ってきた⁉︎ 〜オオカミ王子は"お布団"好き黒猫を離したくない。

にのまえ

プロローグ

 フカフカなベッドで目が覚めた、昨日と変わらない……ブルーの天蓋にため息がでる。


 やはり、これは夢じゃない。


 私は獣人系乙女ゲームの悪役令嬢、艶やかな黒髪と琥珀色の瞳、黒猫族ミタリア・アンブレラ(10)だ。


 5日前。王城から婚約者候補に選ばれたと屋敷に届いた封書。その封書を触ったとき、ビリビリ体に電気が走り意識を失った。


 ――3日間、高熱で寝込み記憶を思い出したのだ。


 ここは遊んでいた乙女ゲームの世界で――愛してやまない推しがいると。それと同時にいままでの……わがまま放題な自分も思い出していた――癇癪、我儘、物を壊すとか、やりたい放題。


 両親もこんな私に手を焼き、放置する様になっていた。


(もしかすると記憶を思い出す前の私は――前世の影響が出過ぎて、愛情に飢えていた。……愛しての言葉が言えず、空回りしていたのかも)


 姿見の前で……黒耳と尻尾の自分を見つめた。


 

 

 前世の私は両親を早くに事故で亡くして、高校卒業後は激務といわれる企業に勤めていた。慣れない業務、メール、書類、期限ギリギリの仕事ばかりで、まともに睡眠とったのはいつのことだろう。


 毎日、毎日、納期が近い仕事がデスクに山積みで――時刻は0時過ぎ終電が終わっていた。私を含めた、他の社員は一言も話さずパソコンのキーを打つ……カチカチ、カチカチ眠い目をこすり、眠気覚ましのドリンク、一心不乱に書類を直し入力していた。


(後はこの書類データーを、メモリーカードに保存すれば……)


「終わり、ご苦労様でした」

「お疲れさま、こっちも終わりました……」


 みんな一斉に帰っていく。私は近くの二十四時間営業のスーパー銭湯でひとっ風呂浴びて、明日の休日出勤まで漫喫で仮眠しよう。

 

 ――そして、退社した帰りに事故? それとも過労? で死んじゃったのかな。


 そして悪役令嬢のミタリアに転生した。

 

 今、私が転生したミタリアは乙女ゲームの通りに進めば――ヒーローのリチャード殿下ともうすぐ婚約して、きびしい王妃教育を受け、王都にあるサラーロン学園に入学する。

 

 学園で可愛い白兎ヒロインに、婚約者のリチャード殿下を奪われ、嫉妬でヒロインをいじめて学園最後に婚約破棄される。乙女ゲームの物語上――婚約破棄までは仕方がないとして……問題はその後だ。

 

 私が知っている悪役令嬢の末路は国外追放、牢屋。そこから逃げても、毒か馬車に轢かれて死ぬ……。

 

 もう、ひとりぼっちじゃなくて。

 地獄のような、職場から脱出できて。

 こんなに可愛い獣人に生まれ変われたんだ……若いまま、死んでしまうのは嫌だ。


 前世では出来なかった――たくさん両親に甘えて、心ゆくまでふかふかお布団を楽しむんだ。

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