29「酷い復讐方法じゃね?」





「俺は復讐をやめることはしない! まずは、すべてのきっかけを作った青山銀子から復讐する!」

「いやいや、弟と婚約者が元凶っすよ! 絶対、陰であんたのこと笑ってましたよ!」

「じゃから、燃え盛っている炎にガソリンを入れるのはどうなんじゃろうか!? 天使的にはNGなんじゃが、人間的にはありなんか?」


 余計なことをまだ言う銀子の口を、さすがにどうかと思ったのか小梅が手で塞いだ。


「無論、青山銀子へ復讐を終えたら、俺を裏切った弟と婚約者にも復讐だ!」

「ま、あんたがそれで気が済むなら、俺は止めないけどさ。――俺の前で、銀子さんに指一本触れられると思うなよ?」

「な、夏樹! 銀子がとぅくんってなってるんじゃが! 心拍数上がっておるし、はぁはぁ興奮しておるんじゃが俺様どうすればいいんじゃ!?」

「無視してあげてください!」


 真面目な顔をして征四郎と向き合った夏樹の背後から、小梅の叫びが届き、気が抜けてしまう。


「なんか、すみません。俺たち、基本的にギャグ担当なんです」

「……わかっている。そうやって、俺を挑発しようと企んでいるのだろう。その自然体、見事だ」

「……深読みしすぎぃ」


 勘違いをしている征四郎は十束剣を地面に突き立てると、懐に手を伸ばす。


「――っ」


 飛び道具が出てくるのではないかと身構える夏樹たち。

 しかし、征四郎が懐から取り出したものは、一冊の冊子だった。


「なぁにそれ?」

「少年、教えておいてやろう。殺すことが必ず復讐になるわけではないのだよ」

「いや、殺す気で剣を振り回していたじゃん! っていうか、なにそれ、同人誌? なんか美少年と美少年が抱き合っているんですけど?」


 はて、と夏樹、千手、蓮、小梅が首を傾げる。

 祐介は「あー」って感じになんとも言えない声を出し、銀子はなにやら慌てた様子で小梅の腕を振り解くと、顔を真っ青にして前に出た。


「そ、それは、まさか!」

「ふっ、覚えがあるようだな」





「――高校時代に照子ちゃんと一緒に描いた同人誌じゃないっすか!」





 夏樹たちの目が点になったのは言うまでもない。

 この状況で、なぜ征四郎が銀子と天照大神の描いた同人誌を取り出したのか、まるで理解できなかった。


「少し読んだが、理解できず、なんかしゅごかった。わかるか、青山銀子? 俺がこれからなにをするのか?」

「わ、私の思い出の品を! 伝説と呼ばれた作品を、破いたり燃やすとかするつもりでしょう!」

「笑止! そのようなことで、俺の復讐が終わるはずがない。よく聞け、このエグい内容の同人誌を、ネットにアップする」

「――違法アップロード!?」

「しかも、貴様の顔と経歴、現在の職業をセットでだ! ――社会的に殺してやる!」

「ぎゃぁああああああああああああああああああああああ!」







「え? 神剣みたいの持っているのに、復讐方法それなの? え? マジ?」

「まあ、公務員がエグい同人誌描いてましたなんて晒されたら、ネットのおもちゃだわな」

「えぐいのう! 人間怖いのう!」


 夏樹が首を傾げ、千手が納得し、小梅が人間を怖がるのだった。









 〜〜あとがき〜〜

 ちなみに、どうやって征四郎さんが同人誌を手に入れたかと言うと。


 征四郎さん「あ、こんにちは。突然、お尋ねしてしまい申し訳ございません。実は私、銀子さんの元担任で」

 銀子ママ「あらあらまあまあ、銀子がお世話になりました。あいにく銀子は家にいないのですが」

 征四郎さん「そうですか……困ったな。銀子さんにお貸ししているものがあったんです。大事なものだったんですが」

 銀子ママ「どうしようかしら? じゃあ、おあがりになってくださいな」

 征四郎さん「申し訳ございません」


 お部屋がさごそ。


 征四郎さん「ふははははは! 青山銀子、貴様の大事にしているものを取ったどーー!」

 銀子ママ「あの、先生。よければお茶でも」

 征四郎さん「あ、すみません。いただきます」


 征四郎さんは、お茶飲んでケーキ食べて帰りました。



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