27「擁護ができないんじゃね?」②





「面倒臭いおっさんっすね。現実の厳しさを教えてやるとか言って、喧嘩売ってきたくせに私にボッコボコにされて魔剣奪われた人に、とやかく言う権利はないっすよー」

「……銀子……おどれはえぐいのう。そこまでやったのに忘れとったんか?」

「え? あれ? ひどいっすか? これ? 自業自得じゃないっすか?」


 銀子の発言に、静かに征四郎は剣を振るった。

 怒りを通り越し、殺すことだけを考えた一撃だった。

 剣速はあまりにも早く、銀子はもちろん、小梅でさえ反応できなかった。

 唯一、反応できていた蓮も、銀子と征四郎と距離があるため、止めることも、盾になることもできない。

 迫り来る剣を見て、やべっ、と声さえ出せない銀子の首に刀身が迫る。

 だが、


「どうして、我が家の銀子さんの首を刎ねようとしているのか理解できないんですけど」


 銀子を斬ろうとしていた十束剣は、彼女の背後から伸びた夏樹の左手によって掴まれていた。


「な、夏樹くん!?」

「お前帰ってきとったんか!?」

「由良夏樹、ただいま地球に帰還しました!」

「……なんすか、そのノリ」

「頭でも打ったんか?」


 二回目の宇宙でテンションが高くなっている夏樹ではあるが、とりあえずすべきことをすることにした。


「き、貴様、十束剣を素手で掴むだと!? ありえん、ありえんだろう!」

「よくわかんないけど、とりあえずぶっ飛べ」


 銀子の背後から拳を振るうと、征四郎の顔面に直撃し、数メートルほど吹っ飛ぶ。

 十束剣を握ったまま地面を転がっていく征四郎を見送り、


「誰あれ?」


 と、今さらながらに説明を求めた。


「えーっとっすね」

「銀子が奪った魔剣花子の元の所有者じゃ」

「あー」


 腕を引っ込め、銀子と小梅を庇うように前に立つ。


「蓮と祐介くんもこんばんは! なんかいろいろありがとう!」

「あ、うん。それはいいんだけど」

「僕もだけど……説明がほしいかな!」


 蓮も祐介も、征四郎の行動理由をよく知らず戦っていたようだ。

 銀子と小梅を守ってくれていたことに感謝しかない。


「……あの男は神奈征四郎か。つーか、なんてもん持っていやがる」


 サングラスをかけた七森千手も遅れて現れる。どうやら、彼は襲撃者――神奈征四郎を知っているらしい。


「なーんで、七森千手がいるっすか!」

「よう、青山銀子。相変わらずキャラ作りしたような喋り方だな」

「余計なお世話っす!」

「にしても、神奈征四郎が、今になってこんな馬鹿なことするとは思わなかったな。てっきり、もう諦めて隠居でもしているかと思ってたわ」

「……なんか知ってるっすか?」


 千手は、襲撃者の素性だけではなく、銀子を襲う理由も知っているようだ。


「ま、業界は狭いからな。むしろ、お前さんの耳に奴のことが届いていない方にびっくりだわ」

「――七森千手、よせ。俺が自分で言おう。いや、言うべきだ」


 鼻血を流し、十束剣を杖にして立ち上がった征四郎が、千手の言葉を遮り、血走った目を銀子に向けた。

 そして、彼は、なぜ復讐に至ったのか、告げた。


「俺は全てを失った! 生徒だった青山銀子に家宝の魔剣を奪われ、責任を取る形で次期当主から外され、相思相愛だと思っていた幼なじみの婚約者から、お前なんて跡取り以外に何の価値があるんだよ、と言われ、婚約破棄された! 俺にはもう復讐しかない!」


 痛い沈黙が広がった。

 しばらくして、咳払いした夏樹が、銀子を振り向き真顔で言った。


「銀子さん……とりあえず謝罪はしておいた方がいいかも」


 征四郎と銀子以外の全員が、うんうん、と頷いたのだった。








 〜〜あとがき〜〜

 ・愛の魔剣劇場・

 魔剣太郎「……なるほど、彼が君の元所有者か」

 魔剣花子「ちょ、元カレとかそう言うのじゃないんだからね。変な誤解しないでよね」

 魔剣太郎「わかっている。君はそう言う子ではないとわかっている」

 魔剣花子「そ、それならいいけど!」

 十束剣「ちーっす、なんか可愛い子がいるじゃん。よかったら、お茶しない?」

 魔剣太郎「――っ」

 魔剣花子「え? なんなの? ちょっと、神剣のくせに気安く声をかけないでよ!」

 十束剣「いいじゃん、いいんじゃん。今どき、神剣とか魔剣とか流行んないって!」


 ……また幼なじみだー


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