26「擁護ができないんじゃね?」①
悲痛な叫びを上げた、銀子と小梅は、その場に膝をつき涙を流した。
「なんてことをするんすか!」
「ビールさんがなにをしたって言うんじゃ! ビールさんは、ただ俺様たちに美味しく飲まれたかっただけじゃのに!」
「謝れ! 麦を作っている農家の人に! メーカーの人に! 運んでくれる運送関係の人に! 売ってくれるお店の人に! そして私に謝れっす!」
昔の漫画みたいに滂沱の涙を流すふたりを見て、疑問を浮かべた蓮が裕介に訪ねる。
「えっと、ビールってそんなに高いお酒なの?」
「いや、まあ、高いっちゃ高いけど、あんな家族殺されたみたいなリアクション取るほどとは思わないかな? 苦いし、あまり美味しくないし」
「……よくわからないな。だけど、とりあえず、あの人はもう終わりだ」
「え?」
「あのふたりは、由良夏樹くんっていう魔族だろうと容赦無く殺せる強い子がいてね。その子の家族なんだ」
「――え? 由良くんの知り合いなの?」
「え? 君も?」
蓮と祐介はお互いに夏樹の知り合いということで友好を深め出した。
そんなふたりを無視して、血が滴るほど十束剣を握りしめるのは、神奈征四郎だった。
「相変わらず、ふざけた態度をとっているな。俺は、教えたはずだ。戦うときくらい真面目にしろ、と。それが、お前の敗因となるとも」
「――誰っすか?」
「……なるほど。お前にとって、俺はその程度の存在か」
征四郎が銀子と面識がある素振りをするが、銀子は首を傾げるだけ。
小梅がそっと耳打ちする。
「銀子、やばいんじゃ。あれじゃ、あれ、ストーカーとか言うんじゃろう」
「――っ、まさか!」
「あの熱い眼差し、剣を持ち出して殺してでも手に入れようとする感じが、ストーカーしか考えられんじゃろう」
「……だと思ったっすよ。そういえば、以前から視線を感じていた気が」
「ふざけるなぁああああああああああああああああああああああああああ!」
ストーカー扱いされた征四郎が怒りを爆発させると、連動するように十束剣から神気が爆発した。
神気は攻撃的であり、霊力を持たない常人であればなす術なく吹き飛ばされ、怪我を負っただろう。気の弱い人間なら、神気に当てられただけで死んでしまう可能性だってある。
「そんな力を!」
「なんて人だ!」
しかし、蓮が銀子と小梅の間に立ち、障壁を貼ることで守る。
祐介は動きこそしないが、周囲を覆っている結界を強固なものとし、河原以外の被害を無くした。だが、その代償は大きく、魔力を使い果たして動けなくなり、その場に膝をついてしまう。
「ほう、見事だ。若いながら、なかなかやるようだ。青山銀子、俺を思い出せないのであれば、名乗ろう。俺は、神奈征四郎だ」
「…………」
無言で、唸る銀子に征四郎の顔が引き攣った。
「お前が僅かにしか在籍していなかった学校で、講師をしていた!」
「…………」
やはり思い出せない、銀子に征四郎がプルプル震え出した。
「――お前に、一族が代々受け継ぐ魔剣を奪われた男だぁああああああああああああああああああああああああ!」
「あー! はいはい! 思い出したっす! あー、懐かしいっすね! 魔剣花子をくれた、親切な人じゃないっすか!」
「一族の魔剣にふざけた名前をつけるなぁああああああああああああああああああああああああああああああ!」
〜〜あとがき〜〜
征四郎さんは怒っていい。
その頃、夏樹くんは。
夏樹くん「地球よ、日本よ、向島市よ! 俺は帰ってきた!」
千手さん「なんでこんなにテンション高いんだよ、こいつは。もう二十時過ぎだぞ」
ジャックさん「ふふ。夏樹は前回もそうだった。多めに見てあげてほしい」
千手さん「――主がそうおっしゃるのなら」
ジャックさん「だから、私は神ではないと」
夏樹くん「ねえねえ、ジャック、千手さん、酸素美味しいよ! あ、お花さんが咲いてる! ――ん? あれ?」
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