19「ケジメの時間じゃね?」④






 七森千手は、ジャック・ランドック・ジャスパー・ウィリアムソン・チェインバー・花巻とナンシー・ピーティー・ロットロット・ナイジェルマリー・赤星の度量の深さと、暖かさ、そして優しさに触れて涙を流した。


 千手は、霊能力者の家系に魔眼を持って生まれたが、優れた兄弟たちには一歩劣った。そのせいで、お世辞にも良い幼少期を送ることはできなかった。

 十六で家を飛び出て、もぐりの霊能力者として生計を立てていた。苦労は多く、神を恨んだこともあった。同時に、神とはなにかと考えるようになった。そして、神とは宇宙人ではないかという考えに至った。

 結局のところ、いるかいないかわからない神よりも、まだ宇宙人のほうが存在する可能性があると思っていたのかもしれない。

 実際に、宇宙人を見て、神とは違うと思ったが、まだ上位な存在がいるかもしれないとも考えた。だからと言って、宇宙人の命を奪いたかったわけではない。だが、仕事だと言い聞かせ、宇宙人に危険が訪れれば上位存在が来る可能性もあると考えた。

 結局、現れたのは異世界帰りの勇者という規格外な存在だったが。


「俺は間違っていた。神はいないと思っていた。だから、宇宙人が神だと妄想し、愚かなことをしてしまった。だけど、神はいた。ここに!」

「――あれ?」


 夏樹は首を傾げた。

 千手の様子がおかしいというか、聞き間違いでなければ、神を見つけたといった。

 しかしゴッドはここにはいないし、天照大神もこの場にいない。

 ならば、誰を神と見たのか。


(うん。まあ、懐の深さは神だけどさ!)


「――主よ。あなたたちに心からの忠誠を!」

「待ってほしい。君はなにか誤解をしている。私もナンシーも宇宙人であって神ではない」

「いいえ、主よ。あなたたちの中に神を見ました。誰がなんと言おうと、私の神はあなたたちだ!」


 滂沱の涙を流しながら、平伏する千手にジャックとナンシーはとても困った顔をしていた。

 いきなり神扱いされれば誰だって困るだろう。

 しかし、夏樹も今まで会って来た神々よりもジャックとナンシーのほうが神っぽく見えるので、否定がしづらい。


(月読先生も神様っていうか、先生の印象が強いし。天照大神様はなぁ、なんかなぁ)


「夏樹よ、この展開は予想していなかった。どうすればいいだろうか?」

「宇宙ドライブして、訳わかんなくさせちゃえば?」

「――ふむ。それもありかもしれない」

「え?」


 まさか本当に採用されるとは思わず、目を白黒させている夏樹と、涙を流して拝み始めた千手の頭上にアダムスキー型のUFOが現れた。


「嗚呼、神の馬が!」

「七森の目にアダムスキー型がどんな風に映っているのかめちゃくちゃ気になるんですけど!?」


 しゅぅん、と音を立てて光が夏樹と千手、そしてジャックを包むと、次の瞬間、三人はUFOの中にいた。

 グレイの姿に戻り操縦桿を握ったジャックが、良い顔をする。


「では、友好を深めるためのドライブだ!」










 〜〜あとがき〜〜

 なんか警棒パンパンしてガムをくっちゃくっちゃしている体格のいい警官「またあなたですか? 困るんですよねぇ。あーあ、次は免停ですよ。お偉いさんの息子さんだからって、こっちは見逃せないんですよ。それじゃなくても最近、飲酒運転や、ながら運転で事故が多いのに、まあ、スピードを少し出しているだけのあなたのほうがマシっちゃマシですけど、違反は違反ですからね。そこはきっちりさせてもらいますから」

 ジャック「はい、ごめんなさい」

 なんか警棒パンパンしてガムをくっちゅくっちゃしている体格のいい警官「はい、免許だして。はい、じゃあ、罰金も期日中に払ってくださいね――っ、なんだ? はい、こちらボブ・モラレス・ウィン・ダーナー・スイトミー・牧原。なんだって? 商船に偽装した海賊船が検問を突破してこっちにくるだって? 馬鹿野郎! 地球に向かったらどうするんだ!」

 夏樹「あ、事件の予感」

 千手「俺にはわかる! この後、海外の映画みたいにこの警官と主と一緒に海賊船捕まえて、その背後にいる組織を壊滅させるんだろう!?」

 夏樹「ねーよ!」




 ――千手の想像した展開になった。もちろん、夏樹が勇者無双して、千手もなんだかんだ言って無双した。





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