15「興味津々じゃね?」②





「僕は異世界に召喚されたことは諦めています。異世界人に酷い扱いを受けました。正直、人間不信です。今だって、ちょっと怖いです。両親や妹でさえ怖く感じてしまうことが嫌ですし、情けなくなります。でもね、それ以上に、異世界に言ってやりたいことがあるんです。――なぜ僕は魔王サイドに召喚されなかったのか、と!」

「お、おう」


 話を振っておいて、かっ、と目を見開いて話し始める祐介に千手もちょっと押され気味だった。


「由良くんも七森さんも僕の事情はご存知のようですから、この際言ってしまいますが、僕は――モンスターが好きなんです。人外、妖怪、最高です。女の子型なら言うことありません。ラミアとか最高ですね。アラクネも全然いけます。ハーピーなんてめちゃくちゃ好きです。セイレーンや人魚系なんてもうお嫁さんにしたいですよ。ケンタウロスとか後ろから、ね。うへへ。僕は人外っ子が好きで好きで、いつか異世界召喚されたらいいなーなんて考えたこともあります。でもね、まさか、その人外っ子を倒す側になるなんて誰が思いますか!?」

「あ、はい」

「佐渡くんめっちゃ早口ー」


 はぁはぁ、しながら語り始める祐介は止まらない。


「僕はね、魔王側に移ろうとしたんです。四天王とかいう方が接触してきたんですよ。先代勇者、由良くんがあまりにも強かったので、他世界からきたのなら人間につく理由もないだろう、ならばこちらに――行くに決まっているじゃないですか! それに、魔族側の勝利が時間の問題なんですから、人間なんて知ったことじゃないんですよ。文明だって、魔王側は異世界もののようにいい感じのファンタジーなのに、人間側は中世のまま! 異世界ものにそんなリアルを求めてないんですよ! 魔族側は僕を手厚く受け入れてくれると言ってくれました。人間側は僕を種馬扱いですからね。そりゃ、いきますいきます。でもね、自称側近とかいう奴が上にチクりましてね。僕は、拷問を受けて、監視が増えて、望まない女と子作りさせられて……ちくしょう! 僕の純血を! 魔族側なら僕好みの子がいっぱいいたのに! 彼女たちのためなら、命尽きるまで戦う覚悟があったのに! 異世界に骨を埋めたってよかったに!」

「あ、あのね、佐渡くん。息継ぎしよう、息継ぎ」

「そ、そうだな、水でも飲んで落ち着け」

「そんな僕にサキュバスが興味があるだって!? あるとも! あるともさ!」


 呼吸困難になるんじゃないかと心配するほど、息継ぎすることなく祐介は語った。


(そりゃ、異世界生活が最悪なわけだ。モンスターが好きなのに、人間側で無理やり戦わされて……子作りまで。うわぁ。不憫だけどさ、なんか佐渡くんこえーよ!)


 同情はするし、異世界人なんて糞食らえと思うけど、夏樹の抱く感情と祐介が抱く感情は、なんか違った。


「えっと、ね。それでサキュバスさんなんだけど」

「うんうん」

「知り合いのリリスさんがね、傷ついた男の子には女の子で癒すのが一番だよって」

「……つまり」


 ごくり、と生唾を飲み込んだ祐介の目は血走っていた。

 おそらく、展開が予想できたのだろう。

 異世界で無双した勇者である夏樹もビビるほどだった。

 代わりに千手が、祐介に告げた。


「――サキュバスを紹介してくれるってさ!」

「――神様ありがとう!」


 ――いえいえ。どういたしまして。


「おい! 由良! 今、なんか聞こえたぞ! まさかとは思うけどゴッドじゃねえだろうな!? 無駄にいい声なのに、悪事を企んでいるような声だったぞ!」

「……なんのことかなー。あと、感謝するのはゴッドじゃなくてリリスさんでしょうに」

「そうだったね! リリス様、ありがとうございます!」


 リリスに祈り始めた祐介と、ゴッドの声が聞こえてしまい混乱する千手。

 そんなふたりを見て、夏樹はため息をついた。


「――早くおうちに帰りたい。小梅ちゃんと銀子さん、ジャックとナンシーと遊びたい!」






 〜〜あとがき〜〜

 一応、合流予定です。

 あと、佐渡くんめっちゃ喋る。

 千手さんゴッドの声を受信してしまう。

 マモンさん、SNSデビューする。


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