36「宇宙人ってカッコよくね?」①





「こんにちは。先日、少しお会いしたが、ちゃんと挨拶をさせてほしい。私の名前はジャック・ランドック・ジャスパー・ウィリアムソン・チェインバー・花巻だ。夏樹の親友なら私の親友だ。ぜひ仲良くしてほしい」

「こんにちは。私はナンシー・ピーティー・ロットロット・ナイジェルマリー・赤星です。ジャックの婚約者です。よろしくお願いしますね」

「あ、どうも三原一登です。というか、めちゃくちゃイケメンと美女! あと名前長いですね!」


 ジャックとナンシーが帰宅し、一登に自己紹介をした。

 人の姿になっているジャックは水も滴るいい男であり、ナンシーは誰もが振り返る美女だ。一登が見惚れてしまうのも無理はない。

 なによりも名前の長さの印象が大きく、すぐに覚えられるほどだ。


「あ、一登。ジャックとナンシーさんは宇宙人だから」

「――は? え? 本当に宇宙人っているの? まじで? 本当に?」

「ジャック、もしよかったら姿を見せてあげてくれないかな?」

「もちろんだとも。友人には真の姿を見てもらいたい」


 ジャックが笑顔で頷くと、彼の姿がぐにゃりと歪み――あっという間に銀色の身体を持つ宇宙人グレイの姿となった。


「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! かっけぇえええええええええええええええええ!」


 ジャックたちの姿は映画などで見たことのある形はそのままに、より生きている生命体であることがわかる。

 夏樹は人気のない闇の中で邂逅したので驚きが勝ったが、こうして誰かの紹介で会っていたらきっと一登と同じ反応をしていただろう。


(男の子だな、一登!)


 お茶を飲んでいた銀子と小梅は、一登の興奮に若干引いている。

 残念ながら、彼女たちはグレイの容貌をカッコいいと認識できないようだ。


「……一登くんも変わった子っすね」

「夏樹のマブダチじゃからな」

「グレイ状態のジャックさんの目って、宇宙のように深く暗くて見透かされているみたいでこえーっすよ」

「わかるんじゃ。こいつら性格もええし、俺らの隠しているちょっとやましいことが覗かれているようでのう」


 女性ふたりの感想はさておき、夏樹も改めて明るい場所でジャックを見て感動に震える。

 まるで映画の中から飛び出してきたグレイだが、夏樹にはわかる。ジャックが人の姿でイケメンのように、グレイの姿でもグレイ業界ではイケメンであるのだと。

 なによりも性格が良いのだ。

 婚約者を拐われ、怒りを爆発させて良いはずが、紳士的な対応をした。

 これだけできた人は人間でもそうそういないだろう。


「あ、あの! 写真撮ってもいいですか!?」

「あ、ずるいぞ、一登! 俺も俺も!」

「ははは。構わないさ、だが、公にはしないでほしい。あくまでもプライベート用ということでお願いしたい」

「もちろんだとも! ね、夏樹くん!」

「ああ、もちろんさ! な、一登!」


 夏樹と一登が頷きあい、写真撮影が始まった。

 やはりグレイと写真を撮るなら絶対にやりたいのが、ジャックを真ん中にトレンチコートを装備した夏樹と一登が左右に立ち、手を繋ぐ。

 王道中の王道だ。

 続いて、映画のシーンの再現や、様々なことをした。


「ちょ、まって、夏樹くんはジャックさんをチャリの籠に入れて空を飛んだの!?」

「飛んだとも! 飛んでしまったとも!」

「いいなーいいなー!」

「ふははははは、魔法使いの特権だよ!」


 はしゃぐ夏樹と一登に、付き合いの良いジャック。

 ナンシーもグレイの姿となり撮影に付き合ってくれた。


「本当に男子って」

「ねー」


 銀子と小梅は苦笑しているが、集合写真を撮ろうとすると慌てて立ち上がった。


「ちょ、私たち抜きは寂しいっす!」

「主役の俺様を真ん中にせず、どうやって写真を撮るというのじゃ!」


 仲間外れは嫌だったのか、無理矢理入ってきた。

 タイマー機能を使って何枚か写真を撮り、夏樹と一登は大満足だった。


「ありがとうございます、ジャックさん! 今度、なにかお礼を」

「気にすることはない、一登。友が喜んでくれることが一番のお礼なのだよ」

「かっけぇ……こんな兄貴が欲しかった」

「それは同感」


 ジャックならば自慢の兄になること間違い無いだろう。


「あー、最高だった! なんだかんだで結構お邪魔しちゃってごめんね。今日はそろそろ帰るよ」

「晩御飯食べていけばいいじゃん、泊まっていきなよ」

「そうしたいけど、クソ兄貴が暴れて親も困っているからさ。俺だけ逃げるのもちょっとね。それに、クソ兄貴の現状が自業自得っていうのも良くわかったから、俺はざまぁとしか思えないから気にならないよ」


 アルフォンスが襲撃された件があるので、このまま一登を帰して良いのかと思ったが、小梅が言うにはミカエルから渡されたお守りなら、よほどのことがないと一登になにかをすることができないらしい。

 心配は心配だが、これからずっと一登を由良家に住まわせる理由をお互いの親に説明できないので、今日はとりあえず帰宅することとなった。


「新しい友よ。よければ、私が送ろう。代車だが、良い船だ」

「――なん」

「――だと」








 〜〜あとがき〜〜

 一登くんあんな兄がいるのでジャックさんをすんなり受け入れました。

 ちなみに、優斗くんは朝から動画をたくさん観て自分を奮い立たそうとしています。女性にも連絡はしているのですが、断られまくりです。

 そろそろ異世界帰還から七日目に突入です。

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