第1章 大学生デビュー

         

「ね、今度はドライブに行かないか?」

 サークルの秀人先輩が、いきなり声をかけてきた。


 珠紀の大学は女子大なので、他大学に遠征する人が

一定量存在する。

彼女は幼なじみの玲に誘われて、近くの大学のテニスサークルに、

通うことにした。

テニスサークルといえば、どちらかといえば、コンパ目的だとか、

彼氏を作るための、遊び人ばかり集まるグループ、というイメージだ。

まぁ、それが一般常識みたいになっているのだが…

珠紀たちは、割と真面目に、練習にも通っている。

 もっとも玲は、スポーツマンには目がないのだ。

どうやら、男らしい彼氏が作りたいらしいけれど…

珠紀はというと、単に玲に引きずられて、ここに来た…というのと、

よその大学の空気を、吸ってみたかっただけなのだ。


 まだ、入会希望も提出してはいない状態なのだが、玲に引っ張られて、

見学しに来た珠紀たちに、冒頭のように先輩が声をかけて来た。

「ね、どうする?」

尻込みをする珠紀に、

「いいじゃん、いいじゃん」

待ってました、とばかりに、玲は目を輝かせる。

「ぜひ!」

飛び付く勢いで、大きくうなづく。

「えぇ~!」

ちょっと、勝手に決めないでよお~

珠紀は抗議をするように、声を上げる。

 軽すぎない?

 初対面だよ?

(いきなり、誘ってくるなんて)

軽くにらみつける珠紀に、

「心配し過ぎだよ」

玲はこそっと、ささやいた。

まだモジモジしている珠紀に、

「いいじゃん、いいじゃん」

玲はにやにやする。


 どうしよう?

 断っちゃう?

まだ迷っているけれど、何だかそわそわする。

 いいじゃん、行こうよ

 でも…

突っつき合い、目で合図して、近付いて来る先輩を見ている。

珠紀は初めての経験に、緊張し過ぎて、心臓がピョンと

飛び跳ねるのを、悟られないようにと…

押さえるのに、必死だった。

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