異世界の勇者、現代にターンバックする プロローグ

@ymegiri

第1話

  

異世界の勇者、現代にターンバックする







 プロローグ


 ……揺れる、沈む、流れ、また揺れ、沈むーー。

 意識の混濁、意欲の散落、拡散、放射。

 ……そしてその後、飽和したその全存在がゆっくりと収束を始め、漂う感覚が次第に、しかも確実に、そして急速に収集、集合、縫合し、魂が集結をする。

『嗚呼、心地良かったのに……』

 魂が、存在が、混沌から調和へと変換、変容、創造するーーその全存在の古存在から新存在への再現・再生の最中に、かつてアルファランと呼ばれる世界で『セヴンス・スタァズ』と呼ばれていた存在は、微かに、密かに心想をそうかたどっていた。

 やがて、セヴンス・スタァズが意識、心身を形を取り戻した時、時空のいずこから以前知覚した事のある意思がセヴンス・スタァズを包み込んだ。

『おお、勇者セヴンス・スタァズよ、死んでしまうとは情けないーー』

 何か、どこかで聞いた事のあるセリフが、緩やかにセヴンス・スタァズを襲った………いや、迎えた。

 セヴンス・スタァズ、再臨したためか全身が半ば光に包まれているが、その瞳は意志を感じさせる輝きを帯びている。それも思念の残響のためか。

 セヴンス・スタァズ、おだやかに、意思を響かせた。

「その声は、アルファランの神、シルフィランドか」

 『シルフィランド』と呼ばれた意思が、次第にその姿を型どり始めた。

『久しぶりだの、セヴンス・スタァズよ。アルファランでの活躍は何よりであった』

 仮の姿であるアルファランの神シルフィランドは、セヴンス・スタァズ同様全身が曖昧に光に包まれてかたどられていたが、その瞳は神らしく慈愛に満ちていた。

『セヴンス・スタァズ、お主が前世から転生する時以来かの』 

 神シルフィランドが厳かにその声を響かせた。

 前世ーーそう、セヴンス・スタァズは前世地球の世界でありきたりな事故で死亡した際に、アルファランの神シルフィランドによってアルファランの世界に転生した転生者であった。

『まあ、「情けない」はいわゆる冗談じゃが、こうもあっけなく病で死んでしまうとは、思いもよらなんだ』

 そう、セヴンス・スタァズは病(やまい)、それも性急な病によってアルファランで亡くなったのであった。地球で言えば心筋梗塞とか、そのたぐいであろうか。

『しかしまあ、お主が死ぬ前に大魔王ロンダンを折伏してくれて良かった。でなければ儂も新たな勇者を早急に別の世界から転生させなくてはならなくなったからの』



 話は一旦逸れる。

 勇者と呼ばれる逸材はそうそうその世界の中で産まれては来ない。

 かと言って神が直接世界に介入する訳にもいかない。

 そもそも全知全能の神が世界に介入出来るのであれば、世界など存在する必要がないのだ。世界など神柱で十分だ。『光あれーー』など必要がないのだ。

 神ひとりで完璧な世界。未来永劫完結した世界。世界は神でひとつ、神はひとつで世界そのもの。世界は完璧に調和し、平和の概念も存在すらも必要なく、自他の境目もなく、全ては等しく久しく微動だにしない世界。全てはひとつ、ひとつは全て、世界は神そのもの、神は、世界は完璧で微動だにしないーー。

 そんなにも変わらない世界に、自身だけ、なにも変わらない、存在するのに『完璧ゆえに完結』した故に何も動かない変わらない、比較が出来ないので、ひとつしかないので自身が存在するかも判らなくなりそうな完璧な世界ーー。

 神故に未来永劫『ひとつ』を保ち続けたが、さすがに神はその……完璧な『ひとつ』に飽きたのだ。『光あれーー』で『ひとつ』を崩し、『調和』を壊し、不完璧で不調和な『世界』を始めたのだ。

 神が改めて世界に介入し、その『全知全能』によって何の味も素っ気もなく『不調和』を調和にし、『不完璧』を完璧にし、世界を『ひとつ』に戻せば、また元の退屈以外何も感じない『完結』に戻ってしまうのだ。それだけは絶対に避けたい。『ひとつ』に戻してしまえば、無味乾燥な『未来永劫』に戻ってしまい、それでは本末転倒なのだ。

 そえゆえ神は世界に直接介入しない。するがままに任せているのだ。

 しかし、『不調和』で『不完璧』な世界は、それ故問題が山積みになる。問題は『混沌』を生む。

 不介入でなるに任せるがままの世界は荒れ放題となりかねない。

 それ故世界には間接的に『神の教え』を説き、世界そのものによって秩序を取り戻すように促す。

 別の世界の神は『三位一体』などの方便で世界に直接介入するなどの禁じ手も使ったりしているが、神シルフィランドは、『ひとつ』を恐れ、その手段はまだ使っていない。

 代わりに神シルフィランドは、別の世界でも使われている『転生』という手段を使っている。

 別の世界で死亡した人間は、死と共に一旦その世界とのしがらみから魂が離れる。その後に魂は天国・地獄・輪廻・昇天などに振り分けられ、新たな世界に魂のしがらみが生まれる。昇天とは天国に似ているが、実際は世界からのしがらみが絶たれ、開放されて消滅・無に戻る事だ。解脱とも言われる。 

 そんな別世界から死によってしがらみから離れた者に、別世界との新たなるしがらみを提示し、別世界で生まれ変わらせるように促すのが『転生』という新たなる道(しがらみ)への誘いだ。

 言って見れば、『転生』とは、別世界への『スカウト』の様なものだ。


 『転生』へとスカウトする際、元の世界からの別の世界へ異動するに当たって、二つの特典がある。


 一つ目は、新たなる世界の神との邂逅により、神に準ずる才能・能力を有する事が出来る事だ。

 『不調和』で『不完璧』な無秩序で充満して来た世界を救世に導く為にスカウトした逸材だ。それくらいの素質を有した存在でなければ、新たなる世界に『転生』する意味が無いのだ。

 それに新たなる世界で神から受け取った『ギフト』(才能)を発現出来なければそれも無意味となる。逸材とは、神からの『ギフト』を発現させる事が出来る素質の事だ。

 『転生』させる候補は、まず神からの『ギフト』を発現させる素質を持つ者であり、その逸材者は滅多にいない。それ故逸材者は貴重であり、その逸材者はかなり重要であり、その逸材者の情報は、異世界の神同士で発達した『異世界ネットワーク』で重宝されている。逆に言えば、神が介在しない各異世界ではかなりの無秩序が蔓延していると言える。もし異世界同士の神の『異世界ネットワーク』を一般の人間が見たとしても、それは光の『瞬き』にしか見えないであろう。神々の世界では、『光のネットワーク』が主流である。新たなるネットワークが、各現世で解明、発明されれば、神々の世界でもその発明を高度な手段で取り入れる事だろう。

 元々各現世の発明は『光あれーー』の後に生まれた『世界』の中から取り出したものである。元々神々の力を勉強して取り出した、とも言える。

 さらに転生させるには、転生する者自体の『承諾』が必要だ。

 『承諾』はかなり重要だ。

 逸材者をむりやり強要、強制して転生させれば、それは神の現世への介入に等しく、その先には『ひとつ』の驚異・恐怖、『元の木阿弥』が『退屈窮まりない世界』に待ち受けている。

 そのため『転生』は、あくまで転生者の自由意志が尊重される。強制など究極的には神自身の首を締めかねず、もっての外なのだ。だから『転生』の儀式には反則気味ながらもとても意味があり、決して侵す事の出来ない手順なのだ。

まさに、『全知全能』を脇に置いた神々の『ひとつ』化阻止の為の最大級かつ最小限の抵抗と言える。

 

 二つ目は、元の世界からの記憶を引き継ぐ事が出来る事だ。

 何も元の記憶がなく別世界に転生してしまった場合、新たに産まれた世界で転生者が『転生』した事実の記憶を失ってしまってはそれはそれで大変な事になる。

 なんの記憶もなく『ギフト』を発現してしまっては、転生者が混乱するばかりでなく、救世への意識が芽生えず、その発現した能力に振り回された末、人畜無害どころか心が歪んで意識が悪に染まってしまっては逆効果になってしまう。

 そのため、転生者が『ギフト』を有した事に混迷をきたさないためにも、前世の記憶を有する事は重要である。

 それに、前世の記憶を有する、という事は、神々にとってはかなり至難の業でもある。

 何が至難の業かと言えば、神々にとって、転生者に前世の記憶を有させると言う事は、取るに足らない業だからである。

 なぜ至難の業かと言えば。

 考えてみるといい。

 神々は、本来全知全能の存在なのである。

 その全知全能の神が、世界の問題を即座に昇華させて『ひとつ』化させかねない究極の『秩序の権化』『平和なる暴君』たる神が、たかが一人のちっぽけな転生者にちっぽけ極まりない前世の記憶を有させる事が、どれだけ困難な事か。  

 加減を誤れば、何気なく世界を七日で破壊させる力を有させ兼ねない。

 一旦壊れてしまった世界は一旦『ひとつ』に戻すしかない。

 世界を元に戻させてしまえば、平和が望ましいというのに、新たに神の介入となり新たなる『無秩序』を生み出し、強制的な神の『秩序』の導入と急速に破戒していく『無秩序』の繰り返しとなり、結局『ひとつ』にした方が早かった、となる。

 そうして無味乾燥な『ひとつ』に飽き飽きして『光あれーー』を発動させ、面白くない無秩序が蔓延しだした世界に『秩序』を介入させ、また『秩序』と『無秩序』を繰り返し、また無味乾燥な『ひとつ』を発動させ、また我慢しきれなくなり『光あれーー』発動……。

 一柱一柱の神々が、その何百億年のルーティーンを幾度繰り返して来た事か。何度誤る事か。

 それだけ神が、『転生者』に取るに足らない前世の記憶を有させるという、加減を効かせるという事が、どれだけ重要かつ至難な事か、お判りであろうか。

 それと比べれば、素質を持つ転生者に『ギフト』を与える、という人にとって神の御業としか思えない所業が、堪え性のない全知全能である神にとってはとるに足らな過ぎる『前世の記憶の保持』と比べれば、加減が楽極まりないのである。神にとって『前世の記憶の保持』がどれだけ神経をすり減らす所業が。

 『大海から針を探す』という例えがあるが、その比ではない。神にとって、大海を干上がらせた方が楽極まりないのだ、むしろ大海のある星そのものを消滅させた方が楽なのだ。宇宙そのものを消し飛ばした方が楽だ。楽だがその先には『ひとつ』の無味乾燥な繰り返しが待っている。


 話は戻る。

 セヴンス・スタァズが存在している時空。そこは神の居間、神の『謁見の間』とでも表現するべきか。

 死から魂が復元され、まだ身体は神同様、光に包まれた幽鬼の様な虚ろな霊体のままであるが、会話するには十分な状態と言えよう。  

「神シルフィランドよ、私は……死んだ筈ではなかったのか」 

『そうじゃ』

 神シルフィランドが即答した。

 セヴンス・スタァズが病で

亡くなったのは前述の通りである。

 セヴンス・スタァズ、まだ虚ろな首元を傾げると、

「なら、なぜまた……この間にいるのだ」

 セヴンス・スタァズは前回の転生の際、神シルフィランドから直接聞いていた。

 この神の『謁見の間』は神々によって『転生』の儀式の為に特別準備された間であると。

『その通りじゃ。よく覚えていたの。この「謁見の間」、転生専用で異世界の神々によって特別設えられた間じゃ』

 つまり、普通に亡くなった者は、それぞれの世界の死後の世界『閻間』で前世の業によってその世界の冥府の裁判官が亡者に裁きを下し、来世が『天国』か『地獄』か『輪廻』か『昇天』かを決めるという。地球では『閻魔大王』という象徴的存在が有名だ。

 しばらく首を傾げ続けたセヴンス・スタァズ、やっとぽつんと一言漏らした。

「なら、なぜ私が……」

『ーーまた『謁見の間に』と言うのかの』

 神シルフィランドが先回りして言葉を遮った。

『それはじゃ、お主はアルファランで勇者として、アルファランの英雄として様々な偉業を為してくれた。

その偉業は計り知れん。

大魔王の折伏など、その偉業の一つに過ぎん。

それ故、新たな死に臨んで、お主には新たに転生の栄誉を授けようと思うのじゃ。新たな世界に産み出された際、前回同様、特別な存在として生まれ変わるのじゃ。こんな栄誉な事はあるまい。お主は生まれ変わるる新たなる世界で新たなる勇者・救世主としてーー』

「……昇天したい」

 ぼそりと、セヴンス・スタァズがつぶやいた。

 雄弁に持論、演説を始めていた神シルフィランド、そのセヴンス・スタァズのつぶやきに、

『ーーなんじゃと』

と、その弁舌をもがれたように一旦口を閉ざした。

 セヴンス・スタァズ、言葉をゆっくりと続けた。

「……流石に、勇者としての日々は、身に堪えた。大魔王との神経をすり減らした駆け引き、邪竜との命を磨り潰す様な攻防、邪悪な魔導師との魂を極限まで刻み続けるような綱渡り……私は心身共にボロボロに疲弊しきった。

病も、直接的な原因はこの無理に無理を重ねた末の衰弱ではないかと思う。

……もう、休みたい、未来永劫に休息を臨みたい」

 さっきの、魂が再生される前の、あの心地の良さは、筆舌に尽くしがたい。あの心地の良さが未来永劫続くなら、消滅すら苦にならない。

消滅が昇天と言うなら、むしろ消滅したい。

 ーーそれが、今のセヴンス・スタァズの心情である。

 そのセヴンス・スタァズの心情を神故に即座に悟り、神シルフィランドは絶句した。

(いやはや困った。勇者の日々でセヴンス・スタァズがそこまで摩滅していたとは……)

 神シルフィランドが困惑したのは理由がある。

 セヴンス・スタァズは、転生出来る素質を持ち、勇者として『ギフト』に熟練し、ひとつの世界を救世に導いた逸材である。 

 その逸材も、普通に死に、『閻間』を通れば他の一般人と同じ道を辿り、転生者としての才能はリセットされてしまい、ただの凡人に戻ってしまう。

 しかし、新たに転生するとなれば話は別である。  

 一旦異世界で死んだ転生者は転生して来た同じ世界では転生出来ないが(異世界だからトレードのように転生させる事が出来る話は覚えているだろうか)別の世界(その世界での別の世界、つまり異世界)であれば再転生出来る。

 それ故、他の世界からトレードの打診を受けトレードされる前にその転生者を確保してしまえば、今度は即戦力かつ『エキスパート転生者』として別の異世界に『輸出』する事が出来るのだ。

 そうすれば、輸出した異世界に恩を売ることが出来、『異世界ネットワーク』でも優位に立つ事が出来る。

『……』

 それだけに『異世界ネットワーク』での地位向上を皮算用していた神シルフィランドは、勇者セヴンス・スタァズの魂の衰弱に焦りを感じてしまったのだ。


『まあ、勇者としてのお主の働きは、すごい、すごかったぞ。神である儂でさえも舌を巻いた。そりゃあもう、偉業どころの騒ぎではない。そう、いうなれば『神の奇跡』に匹敵する業と言えよう。いやあ、すごい、すごかったぞい、セブンスのーー』

「……」

 神シルフィランドのしどろもどろの必死な巻舌おべんちゃらも、セヴンス・スタァズの無言の非難に凍りつきそうになる。

『ーーそ、そうじゃ、これなんかはどうじゃ、わ、儂からの転生大特典! お主の元の世界、『地球』に再転生すると言うのはーー』

 淀みきってたセヴンス・スタァズの瞳に、僅かに光が戻った。

『なあ、セヴンスよ、勇者を極めた者として凱旋するという訳じゃ! ただの一般人として生まれて死んだお主が出世して生まれ故郷に錦の旗を掲げて大凱旋、と言うようなもんじゃーー』

 セヴンス・スタァズのまなこから急速に光が喪われた。

『うそ、嘘じゃ、冗談じゃ、はは、セブンスちゃんも真面目じゃのう。

 しかしのう、地球というのはなかなか良いもんじゃないのかのう。

 アルファランには同じ世界じゃから転生する事はかなわないが、地球ならばこのアルファランからして見れば冗談抜きで異世界じゃから転生可能じゃ。それに別の異世界であれば一見さんだからいろいろ気苦労も多かろうが、元々生まれ育った地球であれば気候や文化にも慣れているじゃろうから古巣に戻る気分で転生し直す事が出来るじゃろうて。言わば、疲れ切った心身への湯治のようなもんであろう』

 『湯治』と言う言葉にセヴンス・スタァズの瞳にかなり生気が戻って来たようだ。

 神シルフィランド、すかさず、

『ほう! 「地球への湯治」、なかなか気に入ったようであるな。

 ならば、転生先は「地球」でよろしかろう! 

 転生者にとって、記憶を有したまま生まれ変われるのは特典のひとつであるが、記憶に残る地球の各地の湯治場を巡るのもまた一興であろう。

 しからば、新たなる可能性を秘めた「ギフト」を吟味してーー』

「ギフトはいらない」 

『……』

 セヴンス・スタァズのつぶやきに、再び神シルフィランドは弁舌を奪われた。

「地球に戻るのは構わないが、生まれ変わるなら、普通の一般人として生まれ変わりたい。だから、ギフトはもういらない」

「……」

 しばらく思案を巡らした神シルフィランドだったが、やっと言葉を響かせた。

『「新しいギフト」は、もう、いらないと言うのか』

「そうだ」

『本当にいらない、と言うのか』

「いらない」

『本当に、それで構わない、と言うのか』

「そうだ」

『いらないのか』

「いらない」

『……』

「……」

 しばらく睨み合っていた両者だが、ため息をつくと、神シルフィランドが口を開いた。

『判った、判ったわい!

転生の際、 

「新たにギフトは付与しない」

これでいいか!』 

「それでいい」

『ーーまったく、お主も頑固じゃのう』

 またため息をつくと神シルフィランド、掌をセヴンス・スタァズにかざした。

 神シルフィランドとセヴンス・スタァズとの間に転生の契約が合意に達し、セヴンス・スタァズを転生させるための儀式が佳境に入ったのだ。

『ーーセヴンス・スタァズよ、新たなる異世界に転生するにあたって、神シルフィランドから祝福を授ける。新たなる地にて赤子の始まりから健やかに育ちゆく事を祝おうぞ!』

 その神シルフィランドの祝詞と共に、セヴンス・スタァズの身体を光が深く覆い、セヴンス・スタァズの転生が始まった。

 セヴンス・スタァズは光芒に包まれ、激しく光彩を放ち、やがて光が薄れ出しーー

 光と共にセヴンス・スタァズの姿が消えた。

 セヴンス・スタァズの転生の儀式が終わったのだ。

 転生で消え去ったセヴンス・スタァズの、魂が佇んでいた空間を見つめながら、神シルフィランドが改めてため息をついた。

(やれやれ、亡くなって衰弱しきっていたというのに、とんでもなく頑固者じゃったぞい、セヴンス・スタァズよ。流石は元勇者というべきかのう)

 そして神シルフィランドは虚空の彼方に想いをはせた。

『これで、少しは地球の神エホバに貸しが出来るかのうーー』



 

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