第16話 私が学園長だ

「失礼します、は言わなくていい。キミは十分に失礼なやつだ」


 機先を制するという表現がふさわしい。

 俺が口を開くよりも先に、学園長はそんなことを言った。


 学園長は若い女性だった。

 教育者よりも実業家の方がよく似合っているかもしれない。


「座りたまえ、私も座って話をさせてもらう」


 来賓用のソファーを示されて、俺は今度こそ「失礼します」と言って腰かけた。


「さて、夜神青虎くん。キミは入学早々、面倒を起こしてくれたみたいだね」


「面倒だったでしょうか」


「人間の首をかたっぱしからはねて、後始末が面倒だったとは思わないかな?」


「能力を使った生徒同士の研鑽は、公に認められているはずですが」


「青虎くん、物事には 限 度 というものがある」


 俺もそう思う。やりすぎたと反省している。

 人を試すような物言いは好きになれないが、学園長は良識ある人物のようだ。

 喧嘩で人の首を斬った俺に、どんな処分ペナルティがくだされるのか。


「わかっているね、青虎くん」


「はい……やはり謹慎処分――」


「元気でよろしい! 私はキミが気に入った!」


 訂正、この人に良識はなかった。

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