第22話 男爵主催の晩餐会
「みんな、揃ったね! ではこれから皆さんを美の女神に変身させます! よろしくね、ルル、メル」
今夜は政府主催の晩餐会、イブは参加するメンバーを集めた。何故か…………みんなをパーティ仕様に仕上げる為である。
ノールダムでアルカを待たずにアジトを去ったのはちゃんと理由があった。メンバーに服やアクセサリーを買うためである。メイクの道具等も一通り揃えた。対抗戦のセレモニーの時にと揃えたが、1日早く着ることになっが、メイクだけはよくわからないのでルルとメルに相談した。
「イブ、このヒラヒラ付いたやつ、誰が着るの?」
「もちろんあなたよ! ミコト!」
「えー! 似合わないよぉ」
「イブ、これってもしかしたら私?」
「そうね、クマコは爆乳だから胸を強調した黒いドレスかなって(笑)」
「私はー?」
やはりみんな女のコである。服やアクセサリーを前にテンション高めになっていて、表情が明るい。
「ねえ、イブはドレスとか着ないの?」
「そうだねぇ、ドレスは着ない。私の服装は今夜のお楽しみってことで!」
「イブ、全身ペイントとかどう? 胸も平たくて書きやすそうだし(笑)」
「リッカ、そんな事言ってると、あなたの顔に一生消えないタトゥー入れるよ、魔法で(笑)」
「えー、どんなの入れるの? そのペンで書いてみて」
イブは眉を書くペンでリッカのほっぺたに落書きをする〜喧嘩上等〜 もちろん漢字であるから誰も意味はわからない、いやハデスなら分かるか…………。
「えー! カッコよくない? 本気で入れてほしい。でどういう意味?」
「私の故郷の言葉なんだけど、スケベ女って意味よ(笑)」
「あー、そうなんだ…………。私にピッタリじゃん! それ入れてほしい!」
リッカは馬鹿だ。恐らく「スケベ」の意味が分からないか誤解しているのだろう。イブはしつこくお願いされた。
「分かったわ。じゃあ対抗戦の日に入れてあげる。その代わり1日くらいで消えるやつね」
リッカは大喜びしている。
そしてドレスアップは無事終了した。ミコトは薄いピンクのカワイイドレスで丈は短かめ、クマコは黒のシックなロングドレスでスリットと胸元でセクシーさを強調した。リッカは淡い水色の無難なドレスだが、髪の毛をアップにしてモリモリにした。シルビアは……ドレスではなくグレーの燕尾服にした、髪もショートカットで男装っぽく仕上げた。
よし! では準備完了! 一度解散して晩餐会で再びお会いしましょう!
△△△△△△△△△△△△△△
「プラック様、そろそろお時間です」
「分かった。行こう」
プラックにとって晩餐会は退屈ものである。研究所で薬を作っていたほうが余程楽しい。だが、今回の晩餐会は楽しみがある〜カイル様かもしれないイブという女学生と会える事、そしてテゾロという殺人鬼も興味深い。
専用の通路を通り会場へ向かう。プラックは一応男爵の地位を持っている。なので主催者であり主賓として紹介される。
「それでは皆様、階段の上にご注目ください! プラック男爵様のご登場です」
嵐のような拍手である。今日の晩餐会は立食形式、対抗戦の運営委員会と代表選手、両校の教官に政府関係者。しかし一番多いのはサンド市長を始めとした政治屋の連中である。
「プラックと申します。今宵は存分に楽しんでください」
短い挨拶を済ませると、プラックは早速イブを探した……が意外にもすぐに見つかったのである。
プラックは一通り挨拶を済ませると、イブに近寄っていった。イブもプラックが近づいているのに気付いている。
「君がイブくんかね?」
これは紛れもなくカイル様である。猛烈に押し寄せる笑いをどうにかプラックは堪えた。イブと名乗った少女はバツが悪そうである。
「はい、プラック様♡」
「これはこれは覚えて頂き嬉しく思います。その勲章素敵ですね(笑)」
「さすがプラック様、これは亡き祖父のもので」
「再生魔法を使ったとか……そうた、サロンで少しお話をしませんか。おいリヨン、サロンに移動する」
プラックはイブをサロンへとエスコートした。
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「お久しぶりです。カイル様、プッ」
プラックは笑いを堪えながら挨拶している。
「お前が来ると聞いて観念したよ。だからワザと分かるように紋章を付けた〜しかしみんな勇者の紋章って知らないもんだな」
「勇者に会えるなど一握りの幸運な者だけですからね。しかし、なんですか? その……可愛らしい姿……」
プラックは腹を抱えて笑い出した。
「プラックよ笑うな。1番正体がバレない姿に変身魔法を使ってみたのだが……もう戻れん」
「そんなに気に入りましたか? 確かにカワイイですし(笑)」
「違うわ! 戻るだけの魔力をもう貯められないだけだ。変身魔法なぞ使ったらミイラになってしまう」
「カイル様、変身魔法使ったらどっちの容姿でミイラになるのでしょうかね(笑)」
「お前、笑いすぎ」
プラックに今までの経緯を伝えた。
「で今回は見逃してほしい。ここは出ていくから……」
「まだ旅をしたいのですか?」
「いや違う。私が死ねない理由、それは王国の守護者が居なくなるからだろ。だから守護者を育てる。守護者たる資格のある者を見つけたし」
「そういう事であれば……ミトル様にはナイショにしましょう。そうですね、ちゃんと連絡さえ定期的に頂ければ構いません。それと、この薬をお使いください」
「なんだこれ?」
「カイル様が飲んだグミ薬の最終形態です」
「なるほど、また私で臨床試験したいのか〜分かった」
交渉はまとまった。
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