第43話

「わぁ!かわいい〜」


スーツで小柄な男の子が、ゲージにしがみついて犬を見ている。入学したばかりのようだ。


「会いたかったよ〜守って言うんだよ?わぁ〜みんなかわいい」


なんか話してる。無邪気でかわいい。

私のことは見えてない。少し離れたところで、世話をしてたから。


「俺ね、学校にちゃんと通えるか不安なんだ。でもね、こうして話せて、落ち着けた」


その子は立ち去ろうとしたが、ようやく私に気がついた。


「あ、勝手に入ってすみません」


「いえ。新入生ですか?」


「はい。こちらを担当されているのでしょうか?」


「ええまぁ。当番制ですよ。嫌でも学生はやらされます」


「そうなんですね!学生さんなんですか?」


「はい」


「お邪魔してすみません。失礼します」


丁寧に頭を下げて立ち去った。その顔には笑顔が溢れていた。その後、足助守という生徒は、相当優秀な生徒だということが学内で有名になった。顔もよかったからかなりモテて。最初会ったときの印象とは違う、頼れるしっかりした真面目な生徒という噂だった。あの、かわいい感じは?不安そうな顔は?幻?再び会ったときも、丁寧な対応をされるという。他人みたいなね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る