火星の怪盗レッドフォックス

暗黒星雲

遺失物捜査チーム出動編

第1話 怪盗レッドフォックス

 火星連邦首都オリンポス。

 人口二千万人を擁する火星最大の都市だ。そこで情報専門の窃盗団が暗躍していた。


 彼らはレッドフォックスと名乗り、数々の機密情報を盗んでいた。


 ある時、臓器売買の黒幕が有名政治家である証拠をネット上で拡散した。また、火星連邦軍の一組織が禁止されている人型有機コンピューターの実験を行っていた事実を暴露した。政治家の贈収賄や不倫関係などの暴露も得意だった。


 レッドフォックスの活動によって政府高官は何人も辞任し、また選挙結果が覆り、大物政治家が何人も引退に追い込まれた。


 このような情報犯罪を連ねるレッドフォックスは民衆から怪盗義賊として熱狂的な支持を受けていた。


 数日前、オリンポス近郊にある核貯蔵施設から大量のプルトニウムが強奪される事件が発生した。これは、本来スタンドアローンであるはずの施設管理AIがハッキングされた事で、怪盗レッドフォックスの犯行ではないかと疑われ、また、レッドフォックスと思われる犯行声明もオリンポス市警察へと送りつけられた。


 火星連邦警察本部は直ちにレッドフォックスを指名手配し、また、有効な情報提供者には賞金を出すと公表した。


 そんな折、火星連邦警察オリンポス支部へ密告情報が寄せられた。レッドフォックスが盗んだプルトニウムがオリンポス市街にあるセメント工場跡に隠してあるというものだった。


「これは怪しいわね」

「ああ。怪しい。そもそも、レッドフォックスがプルトニウムを強奪するなど考えららん」

「そう。今まで彼らが盗んだものは軍や政治家のスキャンダラスな情報だけ」

「テロ行為に手を染めていない」

「だからこのタレコミは怪しいの」

「しかし、捜査員を派遣する必要はあるだろう」

「最適な人材をすでに」

「手回しがいいな。それはレッドグリーン?」

「ええ。彼等なら必ず何か見つけてくれるでしょう」

「そうだな」


 火星連邦警察のオリンポス本部長のブライアンまゆずみと刑事部長の暁希美あかつきのぞみの会話である。二人共白髪が目立つ年齢であるが、叩き上げの捜査官でもあり犯罪捜査に関する見識は優れている。ただし、何故かは不明だが両名とも見合いの斡旋が趣味である。故に若い世代からは煙たがられているのだが、それに自覚がない困った上司なのであった。 

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