第11話 サンドイッチとフライングディスク
ルナは起きたが魔物の子供達はまだ寝ていたので、少し離れてからご飯を食べる事にして、芝生の上に部屋で使っている小さなテーブルを出し、そしてルナ用の籐カゴ弁当箱を出す。
勿論中身はサンドイッチだ。
DPでサンドイッチの作り方が載っている料理用の本を買って、陰でこっそり練習しているのだがちゃんと作ろうとすると意外に難しいのな……。
食パン二枚にバターを塗りハムやチーズをスライスして乗せる、そしてマヨを塗っていくのだが、この時に切断する部分を意識して食材を乗せたりソースを塗ったりすると、断面が奇麗で美味しそうになる……らしい。
そしてトマトやキュウリや菜っ葉を乗せて最後にパンを被せて、少し押し込んだら、馴染ませるのに濡れ布巾で包んで少し置いておくと書いてあった。
素人が本を読んだだけなのだが、前回のお弁当よりは上手く出来たと思う。
勿論サンドイッチは数種類作った、その方が色んな断面が見えて奇麗だしな!
ハムチーズトマトレタスサンド、タマゴサンド、ツナマヨサンド、イチゴジャムとイチゴのスライスを挟んだダブルイチゴサンドなんてのも作ってみた。
それらが入ったルナ用の籐カゴ弁当箱をテーブル……ちゃぶ台と言った方がしっくりくるか、ルナ用にかなり低めだしな、の上に置いてあげる。
「ふぉぉ! マスタおべんと!」
ルナはお弁当に興奮しているのか目がキラキラしている。
「そうだなしかも今回は俺の弁当もあるんだぜ? 交換しような」
そうして俺の前に出した弁当は二段の重箱だ、一辺が十五センチくらいだからそんなに大きい奴じゃないが、ルナに見えるように傾けて蓋を開けて見せる。
一段目はオニギリが各種詰まっていて、オニギリ自体はルナも食べた事があるので理解出来るだろう、中身はオカカにシャケにツナマヨと昆布の佃煮の四種類、全てルナが食べ易いように小さめに作ってある。
「おにぎり……マスタすっぱいある?」
ルナが少し警戒してしまったか……梅干しのおにぎりを食べた時はびっくりしてたもんなぁ……。
「今回は梅干しを入れてないから安心しろ」
「しょうりはかくじつ!」
ルナは嬉しそうだ。
そして二段目も見せていき、タコさんカニさんウインナーや卵焼き、屋台で買ってきた唐揚げ、さやえんどうを茹でた物やアスパラガスを焼いた物。
……うんまぁ……想像していたような奇麗な見た目には出来なかったが……素人が作ったと思えば……。
「マスタ! おいしそう!」
ルナが目をキラキラさせてそう褒めてくれた。
そうだろうそうだろう、少し焦げてたりなんて愛情の前では霞むものさ!
「じゃぁ食べようかルナ」
「んぃ? リア姉は?」
ルナは、当たり前のようにテーブルを囲んで座っているリアに気づいてしまった……。
それまで黙っていたリアがルナを抱きしめながら。
「ルナちゃんは優しいわねぇ、それに比べてどこかのゼンって奴は場所を提供している相手にお弁当を作って来なかったんだって? そんなひどい奴の所よりうちの子にならない?」
だからルナを勧誘するなっての、仕方ないので一応準備していたアルマイトの弁当箱をリアの前に置いてやる。
スプーンとフォークも一緒にな。
「これでいいだろ? じゃぁ頂きますだルナ」
「頂きマスタ」
ルナは元気よくそう言ってサンドイッチを食べ始める。
最初はタマゴサンドか、ルナはそれが一番好きなのかなー? 覚えておかないとな。
「ねぇ」
俺も食うか、まずはオカカだな。
「ちょっと」
おっと飲み物を忘れる所だった、麦茶をルナ専用の猫さんコップに入れてあげねば。
「聞きなさいよ!」
リアが俺の服を引っ張る。
「なんだよ? ルナ用のお茶を淹れるのに忙しいんだが? スプーンよりお箸の方がよかったか?」
「違うわよ! 何この真っ黒なお弁当は、これ食べられるの?」
アルマイトのお弁当の蓋を開けて中を俺に見せつけるリア。
「んー? 美味しそうなのり弁じゃんか、安心しろ、ちゃんとのりは二重になっているし、お醤油の銘柄にも拘っているぞ」
俺はグッドマークをリアに見せる。
「このっ! ……あ、貴方の後ろにラハが来てるわよ」
リアにそう言われ俺は後ろを振り返る……が……ラハさんは来ていなかった。
俺は顔を戻しながら。
「いねーじゃんか……あ」
俺の前にのり弁があった、そして俺が食べようとしていた重箱がリアの前にあった。
「何してんだよ! それは俺がルナと交換するためにだな」
俺が手を伸ばすも、リアのアホツル毛にブロックされる、なにそれすごい便利なツル髪の毛だな! って違うわ! このっこのっ!
ことごとく俺の奪取攻撃が失敗する中、リアとルナはお弁当を仲良く食べ始めていて。
「リア姉交換!」
「ありがとうルナちゃん、じゃぁ交換しながら食べさせ合いっこしましょうか?」
「おけまる!」
「じゃぁはいルナちゃん、あーん」
「もぐっもぐもぐ、うみのあじ、リア姉もあーん」
「あーんはぐ、これはイチゴね? ルナちゃんが食べさせてくれるから最高に美味しいわ」
おいこらー、その役は俺の役であってだな、ってこのアホツル毛ってば細いのにすげぇ力があるんですけど!? ちょ、巻き付くな……口を葉っぱで覆うな!
「むーむーむー」
ふっざけるなリアーこらー。
……。
……。
――
「マスタごちさま」
「御馳走様でしたルナちゃん、次はデザートかしらねぇ、私のダンジョンで取れる果物でも出しましょうか? ゼン、これ切って頂戴」
そのリアの言葉と共にドサっと葉っぱやアホツル毛から解放される俺。
ぬぐぐぐぐ、あれだけの事をしておいて果物を切れだと?
ルナがワクワクして待っていなかったら戦争だったからな?
今すぐ切るけどよ! 待ってろなルナ。
……所で果物ってどうやって切るの? オレンジっぽいのは八分割でいいかな? リンゴは確かこんな感じで……キゥイって半分に切ってスプーンだっけか……?
……。
しばらくしてテーブルの上に出現した果物達はある意味芸術作品だった。
リアは俺を可哀想な物を見る目つきで。
「不器用ね貴方……」
「うっさいわい……」
今度果物を切る方法の本とかメニューで探そうっと……。
「おいしい、マスタもたべる」
ルナは形の悪い果物でも美味しそうに食べている。
ルナはほんまええ子やなぁ……俺も一緒になって食べた。
あー確かにダンジョン産の果物は美味しいな、もしかしてメニューで買った日本産の物と大差なくね? てことは変質した食材はそれほど美味さが上がってる訳じゃねーんじゃねーかなぁ……。
とそんな事をリアに言ってみたら。
「今出したのはこのダンジョンでも味的に上の方な部類の物よ、貴方達普段から異世界品を食べすぎて麻痺しているんじゃないかしら?」
ありゃま、てことは俺が最低限の値段で買う異世界食材がダンジョン産の高級品に並ぶってことかも? ……つまり美味しい物がお買い得値段で食べられて幸せだね!
ルナが美味しい物食べられるなら良い事だな、解決。
「よっしルナ、食後の運動でもするか」
そう言っておれはフライングディスクを取り出した。
「マスタおさら?」
ルナはフライングディスクと運動が結びつかないらしい、まぁやってみせるか。
「リアちょっと手伝って、これはこんな風にな……」
少し説明するとリアはすぐ理解してくれた。
リアと距離を置き準備をする、少し離れた所にはルナがいる。
「じゃいくぞーほいっと!」
俺はリアに向けてフライングディスクを投げる、うん真っすぐリアの所に飛んで行った。
「おおおおおマスタすごい!」
ルナがピョンピョン跳ねて俺を褒めてくる。
ふっ、フライングディスクマスターと呼んでくれ。
「じゃ次は私の番ね、いくわよー」
リアが軽い感じで声をかけてくる。
「リア姉がんば!」
だがそこにルナの応援が入る、すると。
「ルナちゃん!! まかせて! はぁぁぁぁ! せぃ!」
リアの体が少し光ったと思ったら。
ドゴォッ!
鈍い音をたててフライングディスクが俺のお腹にぶち当たって来た……リア……おま……何かスキル使っただろ……。
俺はそのまま地面に倒れていった。
「マスタ!? しんじゃだめ!」
倒れている俺にルナが駆け寄ってくる。
いやさすがに死にはしない……だが、プラスチック製なのに鈍器で攻撃されたがごとくだった……がくっ。
「ますたぁ!」
ルナの声が遠くに聞こえる中、俺の意識は薄れていった。
……。
……。
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