俺が産んだ娘が魔王らしい

シロ卜クロ@カクヨムコン10準備中

プロローグ〜世界は混沌に包まれるらしい〜

EP0.01 神は疲れたらしい

異界門ゲートが乱立して数百年後の世界。


国連加盟200を越えていた国々は淘汰され、僅か30ヶ国となり。80億を越えていた《人口》は一時は10億程度まで減少してしまっていた。

人類は異世界から入って来た異種族との戦いを通して異世界の物質【Xx】イクシスを手に入れる事で魔力の内包、魔法の行使、魔素の扱いを可能とする事に成功。


生き残る事が出来た30ヶ国の殆どの国々は異世界の文明、種族に侵蝕され隷属国家と成り果てた。

そんな中、アメリカ連合国家に関してはいち早く【Xx】イクシスの発見、加工、流用に成功する事で異界門ゲート出現以前の文明を保ちつつ、未曾有の災害に適応した理想国家を実現した。


中華人民共和国に関しては異種族を根絶やしにする事で『0異物政策』を打ち出し、徹底的に異種族を排除する事で国を存続させ、中華人類公国と改めた。

中心繁栄居住区ガイストでは、文明を保つ事が出来たが、それ以外の区域では文明と呼ぶには程遠い生活が強いられていたが、それ故に災害に適応した人類は世界でも類を見ない程に逞しくを遂げていた。


日本国は幸運に恵まれていた。

恵まれ過ぎていた。

日本国に最初に出現した異界門ゲートは妖精族の世界——アルフヘイムへと繋がっていた。

悪戯好きではあったが、命に害を及ぼす程では無く、それでいて強大な魔力と偉大な知識を併せ持つ妖精族は日本国民の守護神となった。

アニメ、漫画、ゲーム、B級グルメ——それらの日本文化が妖精族の種族気質に適合した事が非常に幸運だったのだ。


後に日本国に現れた異界門ゲートが繋げた鬼人族には食人衝動があり、世界に現れた様々な種族の中でも特に好戦的で圧倒的に強かったのだが、日本国で鬼人族が暴れる事を妖精族が阻止した。

その後、旧世界の情報と引き換えに日本国と和平協定を結んだ鬼人族は世界へと散って行った。より良質な肉を求めて。

妖精族の庇護下に置かれた日本国は以前の文明を残しつつ、妖精族の意向で更にオタク文化を広げ、その方向に全ての技術を集約し、それと共に更なる発展を遂げていた。


様々な種族が覇権を争う世界——


そんな中でも異質の強さを誇っていたのが龍族だった。

は強過ぎた。

その気になれば世界を消失させてしまえる程に。

しかし、龍族は自然を愛し、秩序を重んじた。

仲間の繋がりが強く、縄張り意識が高い。

他種族を虫程度にしか考えていない為に移動や縄張り争いに巻き込まれ、多くの種族が死に絶えてしまったが、後にアメリカ連合国家と盟約を結ぶ事で、人類は空と海を明け渡し、龍族が起こす災害の被害を最小限に留めた。


異界門ゲートが乱立して数百年の間、世界はある意味では均衡を保っていたのだが、それを快く思っていない存在が一つ。


この世界を形造っただ——


苦労して産み出した種族達が、同じく苦労して創造したあらゆる世界で、自ら破滅に向かう為に神は疲れ果てていた。


新たな世界を創造する度に種族の力を弱め、様々な試みを行って来たのだが、神は最後に名を与えず、動物だけが住まう世界——人類の世界を創造した。

しかし、それでも人類は自らの世界を汚し、脆弱な他生物を絶滅危惧に追い込み、自らを傷つけ合い、そして自殺というもっとも愚かな行為を犯してしまった。


『好きにするが良い——その結果がどうなろうとも』


そんな言葉と共に全ての世界を繋げた。

どこにどの異界門ゲートを出現させたかなどどうでも良くて。


そんな神も世界を完全に見放す事は出来ず。


否——或いは諦めの境地に達していた可能性も否めないが、それは神のみぞ知る所であり。


そんな神が人類に託した物が【神の箱】だった。

【神の箱】には自らの創造の力、権限を付与して、用い方は全ての人類の脳裏に刻んだ。


『やはり、人類では決断出来ぬか——』


その箱を人類は数百年用いる事が出来ず。


或いは持たされた人類が、アメリカや中華であれば早急に用いてた可能性もあるのだが、平和ボケした日本国ではを必要とさえしていなかった。


世界を根底から書き換える力は人類の手に余る物——それが、当時の日本国の上層部の総意だった。

そして、その存在を日本国では代を継ぐ事に記憶から意図的に薄れさせていた。


——神は数百年の沈黙の後に行動に移す。


人類の中で一際目立っていた存在に世界の三択を強いたのだ。


たまたま目に付いた——と、そんな理由で。


『選べ、消滅か絶滅か共存かを——』


与えられた期間は短く。


選択をしなければ神が世界の全てを消してしまい、絶滅を選べば人類を等しく絶滅させた後に次に脆弱な種族に改めて箱を託すという。


共存とは、他種族の力を借りて箱を開き理想の世界を描くという物だった。


「そんな事に素直に協力する種族など居る訳が無い——種族都合で描かれた世界など、どんな世界になっても人類にとっては地獄では無いか!」


——オタク文化を基準に繁栄を極めた日本国ではあったが、その弊害として食糧難を抱え、貧富の差は広がっていた。

他種族が往来する世界で人攫いや奴隷売買は当たり前、妖精族の加護と法律は大多数の日本国民の為にあり、勝手に産まれた命は勝手に生きて勝手に死んだ。


主人公【クロワ】も勝手に産まれた命の一つだった。

五歳で獣が跋扈する森に捨てられ、幸運にも生き延びたクロワは十歳でな路地裏での生活を始めた。

世話をしてくれた年寄り達は流行り病で亡くなり、自分自身も余命僅か計りかと考え、気力を無くして横たわる——


僅かに渇いた漆喰を思わせる、赤黒い瞳は乾き、蝿が卵を産み付けようと往来しても視線が動く事は無く。瞳と同じ色の——汚れに塗れた赤黒い髪は固まり逆立っている。

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