第100話 第一駐屯地(15)

 話戻って、第一の門外フィールド。

 ジャックはモンガからもらった革袋をポケットにしまっていた。

「ところで、モンガ。お前の母ちゃんは元気か?」

「相変わらず、男狂いでございまして……ただ、最近は、金蔵かねくら座久夜さくやが育てたTOPアイドルのアイナに対抗するために、男性アイドルグループを作っているようでして……」

「確かおでん組だったか……」

「はい……」

「というか、お前、アレ、何とかしろよ!」

「何をですか?」

「あのな! 俺のところに、お前の母ちゃんから入団オーディションの招待状が毎日のように届くんだよ! もうすでに芸名まで決まっているとか! 確か……」

「ジャック10テン!」

「そうそう! ジャック10テン! って、なんでモンガ、お前が知ってるんだよ!」

「今朝がた、ベッツの件でお袋に会いまして……その時に……」

「だから! モンガ、お前、何とかしろよ! あれ!」

「……何とかと言いましても……ジャック様から何とか言ってくださいよ……」

「アホか! お前の母ちゃんに近寄りでもしたら、犬みたいに尻尾を振って、その足をベロベロ舐めにゃならんだろうが!」

「ジャック様も好きですね……おふくろ……もう、60過ぎですよ……」

「勘違いするなよ! お前の母ちゃんの持っているスキルのせいだからな……あの力は、男を強制的に服従させられるんだから……おおぉ、怖!」

「ジャック様でも、怖いものがあるんですね」

「自分が怖いんだよ! 60近くのババアに目をハートマークにして飛びつく自分が!」

「ははは」

 確かに……もう、笑うしかないモンガであった。


「マジで母ちゃんをなんとかしとけよ! これで俺はノルマ達成なんだからな!」

 ジャックは嬉しそうに手にする神民魔人の亡骸をこれみようがしにモンガに見せつけた。

「ということは……」

「そう、晴れて内地に配置転換だ!」

「おめでとうございます」

 という、モンガの目はなぜか笑っていなかった。

 せっかく今までさんざん銀貨を送り続けてきたのに、そのジャックが内地に帰ってしまえば意味がない。

 そう、今後、横流し品が手に入らなくなるのだ……

 うーん、これは困った! 困った! 音駒ねこま高校!

 ナイッサー‼

 ナイッサー‼

 それはナイッさー‼

 それは排球ハイキュー(バレー)のナイスサーブどころか、バカたれのいらないサーブである。

 一体誰だよ! こんなサーブをしたのは?

 ――えっ? おれ?

 なぜだか、タカトは自分が呼ばれたような気がした。

「だからな、モンガ! 俺が内地に帰るまでに、母ちゃんに諦めさせておけよ」


 だが、ものは考えようだ……

 そう、ジャックがこの世からいなくなるというわけではないのだ。

 おそらく、配置先は門そばの宿舎勤めといったところか。

 ならば、第一の門のオフィシャルサポーターに名を連ね、公式プログラムやガイドブックなどの出版をしてみるというのはどうだろう?

 いけんじゃね!

 これいけるんじゃね!

 大金貨69枚(6900万円)もあれば大丈夫なんじゃない?

 あわよくば、宮殿という名の伏魔殿に巣くうお偉いさん方たちとも美味しいパイプができるかも♪

 あっ! すでに宰相のアルダイン様とのパイプ持ってたよ俺!

 なに? じゃあ、神民兵って公務員じゃないのかって?

 いやいやおそらくみなし公務員ってやつですよ。

 これって俗にいう賄賂じゃないか!

 何をいまさらおっしゃいます!

 こういうものは見つからなければOKなの! だいたい見つかる奴がバ……

 バカたれぇぇぇぇ! お前、この小説をどこで書いていると思ってんだ!

 カクヨムだぞ、カクヨムwww


 ということで、モンガ君、さっそく行動開始!

「これをお嬢さまにどうぞ」

 カバンの中から小さいお人形を取り出した。

 というか、コイツのカバンの中、いろんなものが入っているよなwww

 そりゃぁ当然!

 ジャックが、おでん組への加入を承諾した時のためにステージ衣装だって入っている。

 ジャックが、人を切りたいと言った時にのために、奴隷だって何人も連れてきているのだ。

 備えあれば憂いなし!

 相手の事を先んじて調べておく。

 これ、取引の基本!

 商売ガタキの金蔵家がよく申しておりました。


 当然、これに気をよくしたジャック隊長。

「お前は気が利くよなぁwww」

 ニヤッと笑うモンガ君。

 これでオフィシャルスポンサーゲットだぜ♥


 皮肉、いや、皮袋をポケットの中に押し込んだジャックは、嬉しそうに人形を受け取った。

「よし! ちょうどいい、カマキガルの骸を持って行け。ちったぁ金になるだろう」

 そう、モンガがゲットしたのはオフィシャルスポンサーのではなく、カマキガルの別済み)。

 モンガは心の中でツッコんだ!

 ――なんでやねん!


「なんでやねん! だいたいそれは俺たちがもらっていいはずじゃなかったのかよ?」

 当然、それを聞いたタカトも怒鳴り声をあげた。


「あん~?」

 とっさに目の色が変わったジャック。

「なんだお前~! 神民様に向かってその口の利き方は~! この魔物を狩ったのは誰だ~? 言ってみろ~。コラ~!」

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