4-8 ガイド
『ああ、気を付けるのじゃ、それは実が弾けると手がかぶれるからの。じゃが、それこそが解毒に必要なもの、くれぐれも乱暴に扱うのじゃないぞ』
セインは頷いて、油を引いた紙に包んで丁寧にカゴに立てた。
『ここの湧き水は、うむ……外のと大差ないの。もう少し奥に行ってから汲んだ方がよいのじゃ』
ツクの案内に従って、セインたちは鉱山の地下二階まで潜ってきた。彼女の助言、指摘は鑑定により得た情報をもとにしているので、的確、かつ正確で、セインたちは順調に素材を集めていった。
正直なところ、初めに考えていたざっくばらんな採集計画のままだったら、まともなものは何一つ採集できなかっただろう。
もっとも新人の初採集の成果なら、本当にその程度のものなのだが。
「サキ、あまり離れるんじゃないぞ」
採集に夢中になっていたうちに、かなり奥の方まで進んでしまったサキに注意を促した。その声に気が付いたのか、尾を振るワンコのように手を振っている。
サキは、丈の短いワンピースの上に、防具屋で手に入れた皮の装備という姿だ。腰のあたりまでカバーされたコルセットのようなベルトで、そこには小さなバッグを取りつけ、短剣を帯びることができる。いつも裸足だったので、柔らかい素材のショートブーツも揃えた。
彼女は物覚えがよく、ツクに一度聞いたことは忘れなかった。似たような植物でも、優れた嗅覚によって間違えることもない。しかも、天井辺りに自生している貴重な植物も、僅かな足場があればひょいひょい登ってしまうので、下手な道具を使って大事な収穫物を傷つける心配もなかった。
正直なところ、セインよりかなり採集の才能があるようだ。
ちなみに従魔たちの活躍はというと、コウキは薄暗いこの場所を明るく照らしてくれるし、ハクは肌寒いこの季節には嬉しい首巻き状態になっている。
――うん、助かってる……。
驚いたことに、あんなに丸い姿だったハクは、まるで液体のようにびょーんと伸びてセインの首に巻きついた。初めは驚いたが、自由に身体を伸び縮みさせることができるようで、頭に乗れば帽子のような姿にもなれる。
もちろん彼らの能力がそれだけでないと思うが、今のところは何も困ってないので、それだけでもいっそ十分な気がしてきたセインであった。
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