4-5 双子2
いまさら言うまでもなく、セインは変化の儀を終えてない半人前だ。
出来損ないのレッテルを貼られたはずの弟が、成人前にハンターになることが許せなかっただろう。
彼らはすでに十八を過ぎ、本来なら土地を貰って家を出てもいい歳である。表向き、下の者への札づくりの教師として必要だから、という名目で屋敷に閉じ込められくすぶっていた。
なぜなら、かつてセインのようにハンターとして修業に出て、何事か問題を起こし、侯爵にこっぴどく叱られたからである。
だが、それもすでに五年ほど前のことなので、さすがに今回の申し出を却下するわけにはいかなかったのだろう。
――父上がこめかみを押さえている姿が想像できるな。
発端はセインの鉱山都市行きだったようで、なんだか申し訳ない気分になった。
ビゼーとビソンの双子の記憶は、セインにもあった。
本邸内の母親の部屋に住んでいた頃、それを妬んだ彼らに何度か泣かされたことがあったのだ。
むろん、今のセインなら仕返しの一つでもしそうなものだが、その頃はばあやに泣きつくのがやっとだった。別館に移ってからは、歳がかなり離れていたし、なにより接点もなくなったので、あまり会うこともなくなった。時折、訓練場でイゼルに小突かれているのを、冷たい目で見られていたのは知っていた。
多分もう、構う価値もないと思っていたのだろう。
「……価値もないゴミから、目障りで邪魔な存在に戻ったわけか」
思わず苦笑して、口の中で小さく呟いた。
「ん? ……何か言ったかい」
「いいえ、なんでもありません。依頼が穢れ払いなら、兄上たちだけでなんとかなりそうですね」
「そうだな……能力的には、心配してない。まあ、大丈夫だろう。せっかく来てくれたのに、申し訳なかったね。そちらも依頼を受けているようだけど、くれぐれも怪我などしないように気を付けるんだよ」
なにかと弟たちに振り回される常識人の兄が、少し気の毒に思ったセインだったが、その中によもや自分が入っていようとはこれっぽっちも思っていなかった。
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