4-3 掲示板

 ギルドマスターとの話が終わって、セインは再び受付のマリーに話しかけた。連絡を受けていたのか、彼女はさっそく手続きに入った。


「従魔の登録ですね……えと、種族は」

「魔法生物のようなものなので、使い魔のようなものと思ってもらえばいいよ。ただ、登録はした方がいいとギルマスが言うので、一応……」

 

 妖精族やエルフ族が、稀に魔法生物を連れているので、これは割とすんなり受け入れられた。

 虎柄がくっきり見える真っ白なモフモフ。丸まっていると、頭も手足も何も見えないただの毛玉を、受付のカウンターに乗せた。


「そうですね、では名前で登録します」


 マリーは触りたそうにしていたが、グッと我慢して登録用紙を出した。セインは、従魔として白虎を追加登録した。

 名前は、今朝にみんなで決めた。ギルドに来るのがお昼近くなったのはそのせいである。

 ハク――、ありきたりだがわかりやすいのが一番だ。

 ちなみに、ゆらがそうだったように、白虎の復活とともに封印された式も二人ほど解放されたようだ。ようだ、というのはいまだに声も姿も現さないからだ。

 ゆらが言うのだから、封印が解けたのは間違いがない。

 そのおかげで妖力や霊力の量が明らかに増えた。今なら、仮にゆらに憑依されても、前回のような醜態はそうそう晒さないで済みそうだ。

 

「あ、そうだ。今日、ビギナークラスが受けられるクエストあるかな?」

「掲示板に残ってるのは、鉱山解放区の採集と……うーん、あとは」


 お昼を過ぎたこの時間では、うまい依頼は残ってなさそうだった。セインは、掲示板の前に進んで、マリーの言う採集依頼の紙を引き抜いた。


「開拓途中の鉱山、その解放階層にある治癒薬の材料各種、できるだけたくさん……ざっくりしてるな」

「ああ、その依頼者はいつもそんな感じなんですよ。だから、受ける人あんまりいなくて。鉱山都市で小さな薬剤店をやっている方で、店の評判はいいんですが……」


 ギルドやハンターの間では、やっかいな依頼者というわけだ。とはいえ、ハンターの中でも薬剤店は利用者が多いらしく、薬剤師としての腕は間違いないらしい。


「依頼を受ける側は、数量や材料を明記されてたほうがやりやすいからな。でも、逆に考えれば何をどれだけ持って行ってもかまわない、とも取れるけど」


 設定された依頼料が銅板五枚と、あとは歩合制とあるので、やっぱりハンター受けは悪いだろう。下手をすれば一日作業なのに、銅板五枚では割に合わないからだ。


「ま、いいか。期限は一週間ほどあるし、どのみち他にも採集依頼あるだろうしな」


 もう一度掲示板を見上げて、同じような依頼を見つけてそれを引き抜いた。


「あ……そういえば、デオル兄上が呼んでいるのだったな」


 ギルドマスターの部屋を出るとき、ギルバートが兄のデオルからの伝言を伝えてくれた。それほど急ぎというわけではなさそうだったが、帰りにちょっと寄ってみようとセインは考えた。

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