3

「ははっ。じゃあ、これからって事で、早速のレディファーストを堪能してくれ」

 菊子は、やれやれ仕方ないな、とため息を漏らした。

「うーん、うーん」

 ピザを見ながら声を上げ続ける菊子。

 どれにするか中々決まらない。


 何だかんだって初めの一口が肝心なんだから。


「うーん……」

 散々迷った挙句、どうしても決められなかった菊子は目を瞑ってピザを指さして決めた。

 菊子の指の先には、きのこのピザが示された。

「これで決まり?」とは雨の台詞。

「はい」

「じゃあ、いただきます」

 雨が手を合わせる。

 菊子も雨と同じくピザに手を合わせ、「いただきます」と声を弾ませた。

 二人で熱々のきのこのピザに食いつく。

「美味しいですね」

「ああ、美味しい」

 二人が食すピザはチーズがふんだんに使われており、ピザとそれぞれの口の間にはチーズの橋渡しが出来ていた。

 あっという間にきのこのピザを平らげた二人。

「次は何を食べる?」

 雨に訊かれて、菊子は、今度は迷わずサラミのピザにした。

 サラミのピザも美味であった。

 サラミのピザを口いっぱいに頬張っている菊子に雨が、「そう言えば、日向とは上手く出来そうか」と訊ねた。

「げほっ!」

 日向、と訊いて、菊子はピザを喉に詰まらせた。

「何やってるんだ。大丈夫か?」

 心配そうに菊子を見ながら雨が言う。

 菊子はペリエでピザを流し込むと「大丈夫です」と答えた。

 大丈夫じゃないっての! と心の隅で自身に突っ込みを入れる菊子。

 美味いものを食べている時に不味い話しはお断りというものだ。

 ペリエと一緒に話しも流れてくれたらいいのに、と菊子は心底思ったのだった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る