第66話 血と汗と


 休日の早朝ぼくが朝食(母乳)を飲んでいると、ご機嫌ごきげんなリリアン姫が「おはようございます!アルヴィンさん! 2人の将来しょうらい祝福しゅくふくするような爽やかさわやか素晴らしいすばらしい雨ですね!」と言って、ぼくをソフィアお母様から受け取り下におろしぼくに視線をあわせてぼくの両手をそれぞれの手でつなぎ、ぼくの周りまわりをクルクルとまわる。

「リリアン姫さまには、雨は関係ないんですね……」

「アルヴィンさんは、雨きらいなんですか?」

「雷が鳴るなるぐらいの大雨とか台風とかはワクワクして好きですけど……」

「ですよね! 雷カッコイイですよね! そんなアルヴィンさんにプレゼントを持ってきました!」と言ってみかん箱ぐらいの大きさのプレゼント包装ほうそうのされた箱をリリアン姫に渡されるが、やたら軽い。

「開けてもいいですか?」

「もちろん! もうアルヴィンさんのモノです!」

 プレゼント包装ほうそう丁寧ていねい剝がしてはがして、リビングの机に置いておく。

 プレゼントの箱を開けると中には、使い古しでところどころ血のついた包帯ほうたいがたたまれずグシャグシャこんもりと箱いっぱいに入っていた。

 ぼくは何も言わずさっきの包装紙ほうそうしを広げてリビングの机におき包帯ほうたいを順番に取り出していったのだが、他には包帯ほうたいからはがれたと思われるカサブタのかけらぐらいしかない。

緩衝材かんしょうざいに使い古しの包帯ほうたいを使うのもどうかと思いますけど、プレゼントを入れ忘れてますよ? 姫様?」

「いえ! 血のついた包帯ほうたいがプレゼントです!」

「何でですか! こんなの何に使うんですか!」

「え? ちょっとまってくださいね?」と言ってリリアン姫は、血のついた包帯ほうたいを頭に巻き首に巻きドレスの胴体どうたいや手足に巻き「私はもう助かりませんたすかりません! 私が敵を引き付けている間に、逃げてください! ダメです! アルヴィンさんがいても2人とも無駄死にむだじにするだけです! 愛していますよアルヴィンさん! 運が良ければ……なんでもありません! 来世で会いましょう! ……どうですか?! かっこよくないですか?!」

「まあ、かっこいいかもしれないですけど……。血のついた包帯ほうたいだと感染症かんせんしょうの危険があるので、ぼくは使いませんよ?」

「何でですか! 私は病気にかかっていないので、感染症かんせんしょうの心配はありません!」

自然宿主しぜんしゅくしゅと言って宿主やどぬしに対しては無害でも、まわりに有害な感染症かんせんしょうをおこすこともあるんです!」

「そうですか……。今日は血のついた包帯ほうたいでいっぱい遊べると思ったのですが……ダメですか……」

「それよりこの血のついた包帯ほうたい全部リリアン姫様のなんですね、どうやって作ったんですか?」

熱波ねっぱの特訓場で、剣術のけいこを続けたらたくさんできたんですよ? 私の持っている生きた魔剣が、持ち主の剣術のけいこで出来たつぶれた血豆ちまめの血が大好きなのでついでに作りました!」

「え? その魔剣って、敵の血とかも好きなんですか?」

「いいえ? ゴブリンを切った後剣についた血は吸収されてキレイになりますが、ゴブリンの死体に剣を刺してもゴブリンがミイラにはなりませんよ?」

「そこは健全な魔剣なんですね、でも今日はゲームじゃない方がいいですか?」

「いえ、血豆ちまめは治癒魔法で治しました。私の妖魔剣血吸いへべれけちすいへべれけは、新しく出来たつぶれた血豆ちまめの血が好きなグルメなんです。妖魔剣血吸いへべれけちすいへべれけ召喚!」とリリアン姫が言うと、黒鞘くろさやに入った黒い両手持ちのつかをあわせて全長80センチ魔力の層18層をまとった魔剣が姫様の左側に現れ姫様が右手でつかを持つとメイドさんの1人がさやを後ろにひっぱって抜剣ばっけんする。

 そして両手持ちにした見た目普通のロングソードをリリアン姫は中段にかまえると、リリアン姫の普段8層の魔力の層は17層になっていた。

「それって、魔剣にあやつられたりしないんですか? 魔剣が持ち主を、魔力の層で強化してるんですよね?」

「持ち主をあやつる魔剣もありますが、この魔剣は努力どりょくしたり機転を利かせきてんをきかせたりする持ち主が好きなのであやつったりしませんよ? 力を貸してくれるだけです! でも稽古けいこは、この妖魔剣血吸いへべれけちすいへべれけを使って限界までしなければいけないですし身体への負担もすごいです! 毎回爆睡ばくすいなんですよ?」

「でも誰が、妖魔剣血吸いへべれけちすいへべれけなんて名前を付けたんですかね? 血をへべれけになるまで大量に吸うやばい妖魔剣みたいな印象がありますけどこの魔剣、魔剣と言うのが申し訳なくなるような性格の良い生きた剣じゃないですか!」

「ダメですか? 私の付けた名前……」とリリアン姫が妖魔剣血吸いへべれけちすいへべれけに問いかけると、リリアン姫をおおっていた魔力の層が8層に戻る。


 リリアン姫と妖魔剣血吸いへべれけちすいへべれけとぼくの相談の結果、妖魔剣血吸いへべれけちすいへべれけの新しい名前は聖魔剣報われるべきむくわれるべきものへの勝利しょうりへと変わりさやつかの色は白色を基調きちょうとするデザインに変更することがきまった。


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